小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かざぐるま
かざぐるま
novelistID. 45528
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

INDEX|70ページ/96ページ|

次のページ前のページ
 

『地下施設・D‐ブロック』 元旦


 愛里がここに移動してから約一週間が過ぎた。このD‐ブロックの中は三つのエリアに分かれている。愛里のいる出産プログラムエリア、交配プログラムエリア、採取選別プログラムエリアだ。
『出産プログラムエリア』は主に出産に伴う全般を管理している。最新設備と医師による安全な出産をサポートするエリアだ。母親は数年間ここで一緒に生活することを許される。ただし“条件を満たした子供”だけを育てる事が出来る。
 次に『交配プログラムエリア』は、ブレインシステムAIによって選ばれた男女が、該当女性の排卵日のみ交配を行う。どちらかが拒否した場合は、強制的に人工授精の措置が行われる。それも拒否した場合は警告後『消去』が強制執行される。
 最後に『採取選別プログラムエリア』だが、これは生まれてきた新生児からT遺伝子を採取する。
 そして将来、可能性の無い新生児と両親に関しては“適切な処置”を行う。
 愛里はこの施設に入って来た時に、既に妊娠していた。よって彼女には交配プログラムは必要ないとAIは判断した。
 東条のT遺伝子がお腹の赤ちゃんを通して検出されたので、彼女はぎりぎり『消去』を逃れたのだった。もし東条との子供がお腹の中に居なかったら、サラと同じ運命をたどったであろうことは想像に難くない。しかし、もちろん当の愛里はそんなことは知らなかった。
 このブロックには愛里の入った日から三組のカップルが入所してきたが、例外なく男性だけ元の場所に戻されていった。女性は経過をみるため、交配プログラムエリアに一定期間残される。結局、妊娠がうまく行ったとしても、男性は自分の子供の顔を見る事はできないのだろう。
 恐ろしい事に、将来的に“可能性が全くない”とAIに判断された者は、ある条件のもとで赤ちゃんは無常にも消去されてしまうのだ。その条件とは、“施設運営に役立つ特殊な能力があるか無いか”である。能力がぱっとしない個体が運よく生き残ったとしても、生涯ずっと施設に仕える『使用人』に成り下がってしまうのだ。ある意味、将来を見据えた口減らしと考えてもいい。全員が条件を満たす可能性は低い上、食料は限られているのだから……。
 交配プログラムを拒否して人工受精を選んだ者はまだいないが、これから拒否するものも出てくる可能性がある。そしてブレインシステムAIの判断によっては、成績の良い男性が何度も交配に呼び出されるだろう。
『ADAM』である東条海人が呼び出されるのは、もはや時間の問題であった。