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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『地下施設・A‐ブロック』 クリスマス 十二時一分


 俺は、うろうろと広い部屋の中を歩き回っていた。愛里に子供ができたと聞いてからも気が焦るばかりで、会いに行く方法は未だに見つかっていない。しかし、愛里とわずかな時間だが連絡がとれるのは、まだましだと考えるべきだろう。
 今日、地上ではハルマゲドンの発端になる事件が起ころうとしている。俺は自分の部屋の端末で、地上の様子をカメラ越しに見ていた。たぶん他の部屋の人々も同じことをしているに違いない。
 十二時を過ぎたが、何もエターナルに変化は無い。モニターに映し出されるカメラを次々に切り替えても、人が歩いていないというだけで風景はそのままだ。
 一時間前に電力切り替えでもあったのだろうか、一瞬だけ照明が消えた。その後は地下施設に変化は全く無かった。内線で斉藤に連絡すると、彼も今見ているということで一緒に見ようという事になった。
「どうも、東条さんも見ていたんですね。これ持ってきました。一人っきりで部屋にいると息苦しくて」
 部屋に入ってきたはいいが、いきなり元気がない。その手には缶ビールをぶら下げている。
「うん。今日はハルマゲドンの発端になる日かもしれないからな。でも弾頭の種類も不明だし、全く変化ないかもしれないね」
「そうですね。どちらにしても、エターナルとここは安心ですね」
 俺の顔を見て安心したのか、ビールをぐいっとあおった。
「この施設は大丈夫でも、もし核弾頭だったら沖縄は大変な事になるからな。何も起こらないのが一番だよ」
「もし核兵器だとしたら、放射線でしたっけ。それはエターナルまで来るんですか?」
「巻き上げられたチリが、放射能を含んだ雲になって雨が降るだろうな。直接風に乗って放射性物質が運ばれてくる可能性もあるね」
 ヒロシマの資料を思い出しながら答えた。
「そうなんですか。エターナルには例の装置があるし、大丈夫でしょう。……しかし本当に何も変化がないですね」と斉藤が手を伸ばしてカメラを切り替えた。
 その瞬間! カメラで見ていた画面が、ぱあっと白い閃光で包まれた。
 次々にカメラを切り替えてみても同じ光だ。
「東条さん!? これってまさか!」
 斉藤が言い終わらないうちに、カタカタと部屋が揺れだした。テーブルに置いてあった缶ビールが、細かく震えながら移動して行き床に落ちる。
「おかしいぞ。沖縄にもし核爆弾が落ちたとしても、この光と振動は大きすぎる。エターナルに何かあったのかもしれない」
 太田さんと颯太の事が頭をよぎった。しかし、モニターで見る限り、街はどこも破壊されてはいない。だがこの閃光は異常だ。もしかしてL・D・Fの真上で爆発したのか?
 俺は斉藤と顔を見合わせ、モニターのカメラをまた忙しく切り替え始めた。