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かざぐるま
かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『エターナル・作戦本部』 クリスマス 十二時一分


「早期警戒衛星からの映像を入手しました。発射炎が見えます」
 颯太は(ついに来たか)とゴクリと喉を鳴らした。作戦本部には太田と那智博士、颯太らがそれぞれ担当するモニターを見つめている。
「颯太、『あきづき』に無線で確認してみろ」
 太田は、三十分前に起動したL・D・Fのモニターを睨みながら指示を出す。
「確認しました。予定通りミサイル発射したらしいとのことです。これから撃墜体制に入るそうです」
「時間通りか。到着予想時刻は?」
「太田さん!! ミサイルは四基です! 韓国と、このコースは……関東、関西、沖縄方面です!」
 予想もしてなかったミサイルの増加に、颯太は一瞬パニックになった様子だ。
「日本に三発か。沖縄に展開しているこちらのイージス艦から、関西に着弾予定のミサイルには届くのか?」
「沖縄攻撃のみを想定していましたので、座標入力が間に合わない場合はそのまま沖縄上空に撃つはずです。そうなると関西方面はノーマークになりますね」
「ああ。それは艦長の判断に任せるしかないな。ところで博士、原子力発電所には異常ないですか?」
「うむ。電力供給ラインは今のところ問題ない。L・D・F起動から三十分以上経ったが順調じゃ。一時には停電が復旧する予定になっておる」
 博士の言葉にみんな元気づけられた。
「よし! 韓国へのミサイルは撃墜に成功した模様です! 現在海上から打ち上げられた迎撃ミサイル七発が、目標に向かっています。エターナルのイージス艦からは二発が発射されました」
「韓国は助かったな。しかしPAC‐3の配備の状況を見ると、宇宙空間で撃墜できない場合、関西方面は非常に危険だ」
 そして、レーダー上で七つの光点と三つの光点が交錯した。
「太田さん! 沖縄方面は撃墜成功した模様です。しかしあと二発が……止まりません!」颯太は太田を振り向いて叫んだ。
「起動から目標を計算しろ。分かったら至急日本政府に警告を出せ」
「計算できました。目標は東京湾上空と、……エターナル上空です!」
 驚愕の事実を聞いても、颯太の指は止まらない。
「エターナルを狙うとはどういうことだ。L・D・Fにぶつけてくる気か?」
 太田は覚悟を決めた様子だ。
「エターナルまでの到達時間は、あと三十五秒。東京湾までは七十秒です」
「ここは大丈夫じゃよ、颯太。L・D・Fは耐えられる」
「しかし、エターナルの周りの県はどうなるんですか?」
「爆心地がエターナル上空だとすると、かなりの被害が出るじゃろうな。だがヒロシマほどではない」
 ここでPAC‐3が一斉発射されたという報告が入る。だが、PAC‐3配備の射程距離外を通ってくるエターナルへの弾頭を、破壊する手段はもうない。
「頼むよ……。せめて東京の方は撃墜してくれ」
 颯太は指を止め、手を合わせついに祈った。ついに東京上空二十キロメートルで光点が交わる。颯太には、一瞬撃墜できたかのように見えた。
 しかし期待をあざ笑うかのように、分裂した弾頭一発が東京湾に向かって超高速で落下していく。
 その前に東京より早く、エターナルへの着弾がせまる。
「エターナルの上空到達まであと5……4……3……2……1……発光を確認しました! 分裂弾全てがほぼ直撃です!」
 颯太は今頭の上で起こってる事が信じられないような顔で太田を見た。モニターにバリアへのプレッシャーが八十%を超えたと警告が出ている。
「……耐えろよ」
 太田は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。スタッフは皆、指を組んで天井を見上げる。
 直後閃光がエターナル全体を包んだ。ドームの曲線をなぞる様に爆圧が海に抜けて行く。ドームの周りの海は、悲鳴を上げるような音を出しながら瞬時に蒸発し、高温の水蒸気の煙がもくもくと空に上がって行った。
 その後怒涛の振動が海から陸に伝って襲ってきた。建物が激しく振動し、部屋中のモニターが苦し気にノイズを表示し続ける。
「博士! 破損個所はありませんか?」
 感情を押し殺した声を上げ、太田は博士を振り向いた。
「大丈夫じゃ。待て……島の外郭にある装置が、ウラン235とウラン238を検出したぞ。これは、核爆弾じゃの。やってくれたわい」
「颯太、東京に連絡だ。弾頭は核爆弾の可能性が高い」
 颯太が連絡をとろうとした刹那、東京湾上空で分裂して迎撃をすり抜けた弾頭一発が炸裂した。これ以降エターナルは、東京及び日本国全域と連絡が途絶えてしまうことになる。
 その後、アメリカ合衆国が報復のICBMを発射する。それを受けて中国、ロシアがこれに反応し2010年4月に締結した『第四次戦略兵器削減条約』の影で作りあげた自慢のミサイルを発射準備状態にした。イギリスとフランスも、このような状況になってはもう傍観者でいられないに違いない。
 北朝鮮の核攻撃により、ついに世界の核バランスは“いつボタンが押されてもおかしくない”非常に不安定な状態に突入した。