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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『北朝鮮・作戦司令室』 十二月二十四日 同時刻


「いよいよ作戦は明日になった。各発射装置に異常ないか、もう一度調べろ」
 朝鮮人民軍の将官である李大将が指示を出す。
「はっ! 各発射装置ただちに調べます」
 雷に打たれたように下士官二名が敬礼すると、部下を連れて部屋を出て行く。
 核弾頭ミサイルは沖縄の嘉手納基地と、韓国の鳥山空軍基地に同時着弾する予定だった。しかし、北朝鮮は直前で作戦を変更した。より確実に目標に到達させるために『韓国に一発、日本に三発』を同時発射することにしたのだ。
 金政恩国家主席のこの決定に、最高司令官の心は震えた。国の持つ今最高の攻撃力を世界に示すことになったからだ。
 一発目はそのまま嘉手納基地に。二発目は東京永田町に。そして三発目の座標は……。
【緯度33°51′19″N、経度132°46′49″E】
 これは――『エターナル本部』の座標であった。当然、北朝鮮側にもエターナル独立の情報は入って来ていた。当然L・D・Fの情報もだ。
 L・D・Fの技術がどうせ手に入れられないならば、破壊してしまおうと考えたのだろうか。それとも最強の矛を最強の盾に、あえてぶつけてみようとしているのか。
 北朝鮮のこの強気な態度は、この国を後押ししている国が存在するという事をアメリカ国防情報局(Defense Intelligence Agency)が掴んでいた。
 その国とは『旧ソ連』である。
 2030年には、北朝鮮は韓国が主導する『統一韓国』になると多くの国は予測していた。しかし旧ソ連はこれを快く思わなかった。北朝鮮との関係は一時疎遠であったが、ここで両者は歩みよる必要が生じる。『北朝鮮主導の国』を望む旧ソ連は、北朝鮮との国交を密かに回復していた。
 だが今回、北朝鮮のとった行動は今までの『威嚇行動』を超えてしまっている。これは旧ソ連も予想しなかったことだ。焦りを感じた旧ソ連は、様々な分野から圧力をかけたが北朝鮮はついに国交を自ら閉ざしてしまう。
「報復核攻撃が来ることが予想される。全ての高官と役人、その家族はシェルターに入るように! 人民? 革命に犠牲はつきものだ。特に知らせなくてもよい」
 李大将は部下の質問にそっけなくこう答えると、発射準備が整ったことを報告するために、靴音を高くたてながら作戦司令室を後にした。
「人民は犠牲になるのか。可哀想だな」
「しっ! 聞こえたら刑務所行きだぞ。口に気を付けろ」
 部屋に残された下士官たちは自分の家族の顔を思い浮かべているか、黙り込んでしまった。
 彼らの会話をあざ笑うかのように、部屋の中のMIC社製のミサイル発射管制システムは、故障することもなく正確にカウントダウンしていた。