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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『日本国・東京都立川市』 十二月二十三日  


【日本における人口あたりの核シェルター普及率は、NPO法人日本核シェルター協会調べによると0・02%という現状である。(全人口に対し、何%の人を収容できるシェルターが存在するかを基準として)これはスイス・イスラエル100%、アメリカ82%、イギリス67%などと比べても極端に低い。 ウィキペディアより抜粋】
 これを見てわかるように、日本では個人でシェルターを持つ人は〈ほんの一部〉ということがわかる。
 ハルマゲドンの緊張感が高まる中、過激派報道に刺激された市民が『国営昭和記念公園』に向かっていた。ここは、江戸時代から長野方面に退避するための国家の緊急避難ルート上にある。“臨時国家指揮中枢施設がある”と昔から噂され、地元住民だけでなくネットなどに感化された人々が、続々とこの地に集結していた。
 敷地内にある立川駐屯地の自衛隊部隊が収拾にあたっているが、人々はあふれかえり、「せめて公園内に入れてくれ!」と殺到していた。ここはもともと大規模な震災や火災が発生した場合に、避難場所としての機能を果たすよう設計されている。しかし、今回のように数万人規模の避難民を受け入れる想定は誰もして無かった。
「危ないので、押さないで下さい! ケガ人も出ています。公園内にはもう収容できるスペースはありません。そこ! 押さないで!」
 自衛隊員が拡声器からどなる。
「うるせえ! こっちはおまえらに税金払ってんだよ! おまえらが出てけ!」
「そうよ。入りきれなかった人はどうするのよ! 死ねっていうの?」
 公園に入りきれなかった人々はすぐ近くの立川駅にまで溢れだし、公園を取り囲むように何重にも輪になって膨れ上がっていく。
 日本各地の怪しい噂のある施設には、同じように人々が続々と集まり出していた。
 政府はこの事態を鑑み『有事の際は家に入ってできるだけ窓のない一室を選び、目張りなどで密封して簡易的なシェルターに改造する方法(屋内退避)』を推奨した。
 地下鉄に避難する方法もあるが、もし一時的に爆圧や熱線に耐えても、放射線の混ざった空気を遮ることは到底不可能であろう。
 どちらを選んだとしても、最終的には悲しい結末が一般人には待っているのだ。完全にその場しのぎだと言っても過言ではない。政府のこうした曖昧な対策は更に日本国民の不安を加速させ、やがて各地で一般市民までもが暴徒化していった。
 連鎖していく治安の悪化により、ついに夜間外出禁止令が発令された。しかしパニックにならない人々もいた。万全なる備えと、信頼できるシェルターなど確保している人々や組織などである。彼らの中には不安よりも、むしろ期待を持ってそれが起こるのを待っている人もいるに違いない。
“世界は一度リセットしなければならない”という思想を持つ人々も決して少なくなかったのである。
――自分たちこそ、選ばれた人類だと。