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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『レジスタンス本部・会議室』 十月一日 午後


〈太田勝利・三十歳〉
 表向きはフリーのジャーナリストだが、彼は『日本独立連盟』の幹部だった。活動内容は日本国内に独立国家を作るという、革新的ともいえる団体である。
 海人たちが地下施設に潜った頃、太田もまた四国にいた。今や『日本独立連盟』以下『日独連』の同志は、3000人以上にも膨れ上がっていた。メンバーにはサラリーマンを始め、大学生、元自衛隊員などが在籍している。変わったところでは有名な芸能人やノーベル賞を受賞した科学者なども在籍していた。
「みなさん。ご存知の通り、メンバーは数年前から極秘に四国入りを始めています」
 太田が議長となり、四国にある老舗の旅館で会議が始まった。
 室内には〈トップ5〉と呼ばれている五人が集まっている。彼らは組織の中枢をなす創立メンバーだ。大型のプロジェクターに映された四国の地図を指し、太田は続ける。
「メンバーは地元の人たちと大きなトラブルも起こさずに、IT産業、水産業、土木業を始め、四国のあらゆる企業に密かに潜り込んでおります。ただ、残りのメンバー2000人を『独立の日』までに四国入りさせねばなりません」
「その『独立の日』は十二月一日に迫っているが、武器調達は間に合うのかね?」
 白髪交じりの年配の男性が発言した。この男は自衛隊の元幹部という経歴の持ち主だ。
「はい。独立国家である以上、私たちは武装せねばなりません。もちろん日本国に独立宣言するこの日までには、全ての準備が整う予定です。順調にいけば、今月末には高知の港に分解された武器が届く予定です。例の、極地戦術核対応L・D・F(Laser・Defense・Field)システムも、島の外郭要所に密かに設置済みです」
「ふむ。L・D・Fシステムは、わしが開発した中で最高の防御兵器だからの。これを世界に売り出したら、一体どれほどの値がつくのか想像もつかんわい」
 日本が誇る天才科学者、那智博士が自慢気にひげをつまむ。その見た目はアインシュタイン博士にそっくりだ。
「博士が日独連のメンバーに加わっていただき、本当に感謝しております」
 若い女性が、博士の方を見ながら綺麗なソプラノの声で発言した。お洒落なメガネをかけ、美しいサラサラの黒髪がまっすぐ肩のあたりまで伸びている。笑うとまだあどけなさの残る顔にえくぼができ、何か人を惹きつける魅力が彼女にはあった。
『セクシー美女の女医さんから、セクシーを取った感じ』とメンバーによく言われているが、彼女には意味がよく分からないようだ。
「例のMICの情報はどうなってる?」
 太田はその女性に親しげに微笑んだ。

 東条海人の恋人――吉永愛里がそこにいた。