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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『松山市内』 同時刻 


 アイリーンは既にエターナル入りしていた仲間と、道後温泉の近くにあるホテルのロビーで合流した。海外テレビ局のクルーになりすまして潜入するため、腕利きの仲間を集めた。傭兵時代の仲間だったボビーとチャンである。
 ボビーは陽気な黒人ラッパー風で、熊のような大男だ。チャンは中国人とアメリカ人のハーフだが英語しか話せなかった。二人とも、服の上からでも筋肉が盛り上がっているのがわかる。
 この三人はアフガン、イスラエルなどの紛争地帯でチームとして活躍していた。主に敵地に隠密に侵入し、過激派の幹部などを直接狙うという〈エリート暗殺チーム〉である。
 今回ボビーはカメラを担当し、チャンはアイリーンの補佐をする。三人分の偽造IDも既に用意してあり、テーブルに並んでいる。
「今回の仕事は、潜り込めさえすれば簡単よ。あのソマリアの激戦に比べたら、バーガーを食べながらでもできるわ」
 アイリーンはこの二人と過ごした砂漠の奇襲作戦を思い出していた。ここにいるボビーとチャンに危ういところで何度命を救われたことか。死線を共にした仲間同士の友情は、本当に血の繋がった兄弟以上だ。
「ところでソマリアの作戦のあとアイリーンはどうしてたんだ? どこかでくたばっちまったって聞いたぜ」
 ボビーが珈琲カップを置きながら彼女を見つめる。
「うふふ。あれからアフガンに飛んで、武器輸入業者の相棒をしてたわ。ほら、これソ連の劣化ウランちゃんよ」
 黒いポーチを笑顔でボビーに向かって投げた。
「Oh! shit!」
 大げさに驚いた振りをして、ボビーはチャンに慌ててパスした。もちろん中身が違うことはとっくに分かっている。
「……アイリーン。君は相変わらずだな。まあ、そこが君のいいところなんだけど」
 チャンはウインクをひとつすると、彼女にポーチを投げ返した。
「あら、ゆっくりしてる場合じゃなかったわね。もうすぐ六時になる。各自準備をして私の用意したバンに乗って」
「イエス、サー!」
 一応アイリーンは彼らの上司という触れ込みである。今日はそれらしく振舞わなければならない。十分後、テレビ局のカッティングシートを張った白いバンが、ホテルを出発し記者会見場に向かって出発した。