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かざぐるま
かざぐるま
novelistID. 45528
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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「先輩に言っても分からないですよ。じゃ、今本当に大事なところなんで、邪魔しないで下さい」
 端末に向き直ると、怒りのオーラを背中から出しながら、とうとう俺を完全に拒絶してしまう。
 もう今日はこれ以上話しても無駄だと判断して、その背中から目を切りこの部屋を後にした。
(なぜ、颯太が愛里を?) 
 部屋に戻るとどうしてもさっきの話が気になり、愛里と連絡をとる方法は何かないかと画策したが何も浮かばない。
 その夜は、また眠れなかった。


 あれから二日経っても、愛里との連絡方法は全く思いつかなかった。俺は端末から手を離し、ぼーっと椅子にもたれかかっていた。そのとき突然後ろから声がかかる。
「東条さん、お疲れ様! 珈琲をどうぞ」
 振り返ると、カップを手にニコニコしながら美奈が立っていた。
「美奈ちゃんか。ちょうど休憩しようと思っていたとこだよ。ありがとう」
「あの、ひとつ聞いてもいいですか? 颯太さんのことなんですけど……」
 ちょっと困ったような顔で話し出した。
「最近食事もまともにとってないようで心配なんです。なんか痩せちゃって顔色も悪いし」
 もちろん美奈はマーカーの事を知っているはずだ。地上で資格者を何百人と迎えに行っているのだから、全ての人に手首にこれが嵌っていたらさすがに気づくだろう。
「たぶんコレのせいだろうな。次の日から部屋を変えてくれって頼まれただろ」
 美奈に見えるように袖を引っ張り、金色に光るマーカーを見せた。
「はい……。分かってます。選別だけはどうにもならないですよね」
 悲しそうに目を伏せる。選別という言葉を使うのが少し意外に感じたが、その時は特に気にしてもいなかった。
「俺も颯太の事が気になって、部屋に行ってみたんだがそっけなく追い返されたよ」
「やっぱりそうですか。それはかなり重症ですね。私も案内が終わったら様子を見に行ってみます」
 肩を落とす様子を見ていると、本当に心から心配しているようだ。一か月以上も顔を合わせていると、やはり情が湧いてくるのだろう。特に美奈は颯太の事になると、感情を露わにする事が多いように感じられた。施設への案内スタッフは特に選ばれた人間であり、感情をあまり出さないと思っていたが彼女は少し違うようだ。
 ダメでもともとだと思いながら、美奈に頼んでみることにした。
「ちょっと聞いてくれ。ここに入ってから恋人ともうずっと連絡がとれないんだ。外部との連絡禁止なのは分かるけど、このままでは俺もヘンになってしまう」
 ここでたたみかけなければと、早口で続ける。
「作業効率も落ちているし集中力も続かない。せめて手紙だけでもいいから、吉永絵里って人に届けてもらえないだろうか。彼女はMICの社長の娘だから、この施設の状況を多少は知っているはずだ。秘密が漏れることもない。頼む!」
 少し迷っている様子で、美奈は大きな目を宙に注いでいる。
「分かりました。完全なルール違反ですが、相手が相手ですしやってみます。今晩手紙をお部屋に取りに伺います」
「本当にありがとう。恩にきるよ」
 椅子から立ち上がり、心から感謝して頭を下げた。
――手紙には颯太のこと。資格者になったことの他に、大事なことをひとつ書いた。
[俺だけ生き残ってもしょうがない。死ぬときは愛里と一緒にいたい。俺はこの施設を脱出するつもりだ。バカだと笑ってくれてもいい。だが……必ず逢いに行く]
 心の中に思った事を素直に文章にして、その夜、美奈に渡した。