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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 7

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「喧嘩はしていませんけど、いつまでも城に戻してもらえないので、少し今後のことを考えなければいけないかなとは思っています。お金もそんなに持ちだしていませんしね。一応、前の隠れ家に隠しておいた分がまだありますけど、長期化するようならお金の事も考えないといけないでしょうね。」
「そうか。アリスはエリザベスに似て、苦労性だな。」
「苦労をかけている子の父親が言うことではないでしょう。」
「ははは、違いない。」
「笑い事ではありませんよ。」
 そう言ってプイッと顔をそむけるアリスの手をとって、バルタザールは懐から取り出した布袋を渡した。
 ずしりと重い、その布袋の重さに慌てて、アリスは頬杖をついていた左手を添える。
「何ですか、これ。」
「砂金じゃ。ワシも急に城を出ることになって、それだけしか持ち出せなかったのじゃが。当面の資金にはなるじゃろう。」
 アリスが渡された布袋の口を開けて中身を確認すると、確かに砂金が詰まっていた。
「これを私に渡してどうするんです?まさかヘッドハンティングでもするつもりですか?」
 そう言って袋の口を閉めると、アリスは袋をバルタザールのほうへと押しやった。
「逆じゃ。ワシをアリスの配下に入れてくれ。その砂金はそのための持参金とでも思ってくれればいい。」
「はぁ、それなら別に・・・って、はぁっ!?何を言っているんですか?」
「言葉の通りだ。ワシはしばらく姿を潜めたい。アリスがアレクの元を離れているのであれば一緒に行動させてもらえれば都合がいい。」
「・・・・・・理由を教えてもらってよろしいですか?」
「うむ。アリスには前にワシの中の悪魔の話をしたと思うが。」
「ええ。覚えています。」
「あれが、ワシの中から独立しおってな。ワシはエリザベスやランドールと一緒に命からがらリシエールを逃げ出してきたというわけだ。」
「では養母さんもこの街に?」
 アリスの期待をこめた眼差しを受けて、バルタザールは力なく首を振った。
「・・・途中ではぐれてしまった。あの二人のことだから、大事はないと思うが・・・すまない。」
「いえ、陛・・・テオの言うとおり、養母さんはちょっとやそっとじゃ死なない人ですから。わかりました、一緒に行動しましょう。ただ、どうせなら養母さんも探し出したいですから、あちこちを歩き回ることになります。その点はよろしいですか?」
 アリスの言葉に、バルタザールは力強くうなずく。
「ああ。ワシもエリザベスをこのまま放っておく気はない。アリスが一緒に探してくれるというのであれば、願ったり叶ったりだ。」
「わかりました。では、明日からはこの街を離れて、養母さんが行きそうなところを探してみましょう。・・・ついでにランドールおじさんも。」
「まあ、奴はちゃっかりセロトニアに戻っていそうだから、後で問題あるまい。やはり、エリザベスが早まったことをするのが一番心配だからな。普段は引き際をわきまえているが、一度頭に血がのぼると、とんだ猪になりおるからな。」
「まあ、猪は猪でも一騎当千、歴戦の将軍ですから、大丈夫だと信じましょう。・・・さて、ではそろそろアレクの晴れ姿を見に行きますか。」
 店の外から聞こえてきた、式典開始を告げる鐘を聞いて、アリスが席を立つ。
「うむ。そうじゃな。」
 酒場の中を見回せば、店内に居た客達も、店員達も大通りへと出て行く所だ。
「息子の晴れ姿、見逃すわけにはいくまい。」
バルタザールはそう言って席を立つと、アリスと連れ立って店の外に向かった。



「ええと・・・。それで、こちらの方は・・・。」
 城門の前で一行に合流したシエルは、今後行動を共にすることになったという男性について、アリスとオデットに尋ねる。
「ですから、テオです。」
「テオさんです。」
「テオじゃ。よろしくのう。」
「いや・・・いやいやいや。え?本気なのか?どこまでが本気で、どこからが冗談だ?」
「1から10まで本気ですよ。私が冗談なんていったことありましたか?」
「それはたくさんあるだろう・・・。」
 実際、シエルとアリスが行動を共にするようになってから、シエルはアリスが意外と冗談が大好きで、悪ふざけも大好きだと言う事を身にしみて理解した。
「だいたいこの人・・・っ!」
「え?なんですって?」
 アリスのボディブローがシエルの腹に炸裂し、シエルは言葉を詰まらせる。
「バル・・・っ!!」
「ねえ、シエル。気絶させられて連れて行かれるのと、自分で歩いて行くの。どっちがいいか選ばせてあげます。」
「・・・やっぱりこの街に残る。っていう選択肢は?」
「ないですね。ああ、残してもいいですけど、その場合は。・・・ね?」
 そう言ってにっこりと笑うアリスを見て、シエルは背筋が凍るのを感じた。
「・・・歩いて、一緒に行きます。」
「よろしい。・・・事情は隠れ家に戻った後にお話しますから。今は黙ってついてきてください。」
「はあ・・・乗りかかった船のつもりが、いつの間にか船底に縛り付けられていたとは・・・。」
「だから、私が置いていくって言った時におとなしく置いていかれればよかったんですよ。」
 アリスに殴られた腹をさすりながら愚痴をこぼすシエルにオデットが追い打ちをかける。
「ほら、二人共、はやく戻りますよ。日暮れまでには家に帰りたいんですから。」
「はーい。」
「はいはい。」
 アリスに呼ばれた二人は、そう返事をしてアリスの後をついて歩き出した。



 婚礼の式典の後に行われた城内の親しい仲間達だけで挙げたクロエとの結婚式の後、アレクシスがエドの部屋へやって来たのは、夜も大分更けてからのことだった。
 アレクシスがノックをして入ると、部屋の中ではエドがベッドの上で窓から空を見上げながら、手のひらを月明かりにかざしていた。
「どうしたんだい、式典の時からあまり元気がなかったように見えたんだけど。」
「ん・・・色々考えちゃってね。これまでのこととか、これからのこととか。」
「それは、やっぱり僕が間が抜けていて、プロポーズをきちんとしなかったことに不満があるとか、そういうことかい?まさか、いきなり離縁するとか言わないよね?」
「・・・ああ・・まあ、それもあると言えばあるかな。結局ギリギリになって、クロエと一緒にプロポーズされたっていうのはちょっと不満。」
 エドはすねたような表情でそう言って頬をふくらませた。
「すまない。クロエにも言われたよ。ああいう時は、正室であるエドを優先するべきだって。これからは気をつける。」
「先とか後とかじゃなくて、ちゃんと一人ずつ言われたかったなって思う。多分クロエが言いたかったのもそういうことだと思うよ。私たちは幸せを半分こするためにアレクの妻になったわけじゃないんだから。そういう意味ではアレクはレオの二倍以上頑張らなきゃだめなんだからね。」
「・・・そうだな。すまなかった。これからは君たちをきちんと幸せにできるように頑張るよ。」