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覇王伝__蒼剣の舞い2

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 ___遺産を、探せ。
 その男が、彼を密かに自室に呼んだのは数日前の事だった。
 同じ金色の髪と眸、違うのは主従関係という事。
 歳も変わらぬ彼の主はゆったりと金縁と天鵞絨の椅子に腰掛け、優雅にグラスを傾け、白い被り物から覗く美貌に彼も思わず魅入った。
 だが、彼にはこの男との出会いが全てだった。
 影としていき、影のままで終わる。彼を覇王とする為に、それが一族の悲願。
 日影___どんな輝かしい功をあげようと、誰にも理解らない。それが、“影”として選んだ彼の道なのだ。
 その点では、他の側近といわれる者たちとは違う。
 功を立て、名を残し、出世する。
 一族には無縁の世界。
 日の光を浴びるのは、たった一人。
 ___聖連さま。
 ___ただし、他三国に気付かれぬようにな。この国にも、何処ぞのスパイがいるやも知れぬ。愚兄でも、こういう時は頭が回って困る。
 白王・聖連は、そう云って異母兄である黒王を嘲笑う。
 故に、白碧の精鋭を動かせない。
 秘密裏に行動し処理をする、白い影はその為の組織。
 遺産___遙か三百年前に埋もれ、そして一族の悲願を果たすもの。
 「日影さま、例の子供を逃がしました」
 「放っておけ。どうせ、エリアXから探りに忍び込んだのだろう。蒼王はどうしている?」
 「未だ意識は…」
 「四獣聖は現れぬか?」
 「はい」
 「近くにいるのは間違いないだろう。先ほどあれが微かに光ったからな」
 日影の背後に、彼の云う『あれ』はあった。
 柄に龍の細工を施した、一振りの剣。龍王剣である。
 だが、あれから龍王剣は光らない。
 「蒼王の見張りは如何致しましょう」
 「どうせ逃げることは出来ない。自力では、な。四獣聖を誘い出す為だ。見張りは外に集中させろ。その時に蒼王を殺せとの命だ。蒼剣は、必ず現れると、な」
 「畏まりました」
 ___それにしても。
 日影は、妙な胸騒ぎを覚えていた。
 遺産を探すには蒼剣が必要だと白王から聞かされてはいるが、その蒼剣の気配は聖連の鏡にも、日影の水晶にも映ることはなかった。
 四獣聖は、蒼剣を持ってきていない___この読みは確かだ。
 そんな遺跡内を、二人の侵入者は駆けていた。
 セイと拓海である。
 危うく白い影と鉢合わせそうになりかけながら、地下への階段を下りていく。