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覇王伝__蒼剣の舞い2

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 四国統一をなした後、覇王・蒼龍王が狼靖にいった言葉だ。
 『この地には、遺産が眠っているからな』
 それが、狼靖が初めて聞いた遺産という言葉を聞いた最初で、今から15年前の事だ。
 そして、覇王の言葉通り四国は揺れ、覇王家内で対立が起きるのだ。
 誰が、覇王を継ぐか____。
 長男・黒狼は力を以て四国を制しようと動き、更には蒼剣が同時に覇王家から消えた事で、黒狼の野望は一気に燃え上がった。
 それなのに、である。
 15年経って、何故今頃白王は動いたのか。
 それまで目立つ動きを一切しなかったのにだ。
 蒼剣ではなく、何故先ず“遺産”を探す事にしたのか。
 「あの…、赤の谷になら僕、誰にも見つからず行ける道があるんですけど」
 「それって何処!?」
 拓海の勢いに、ハオンはにっこりと嗤った。

 「…って___」
 唖然とする一同の中、ハオンがここですと云う場所は井戸だった。
 「昔、遺産が赤の谷にあると聞いた人間が作った地下通路ですよ。白碧が来る前に作ったもので、谷の裏側に出るので彼らには未だ知られてません」
 「つまり、遺産奪取には失敗したんだね」
 「はい。その人間の予定では通路は遺産の隠し場所に出る筈だったようです。ところが、出た場所は建物の外。しかも見張り付きで」
 「ちょっと、それって思いっきりヤバイんじゃん。見張りの真ん前に出ちゃ、誰にも見つからずなんて無理でしょ」
 焔の茶々に、ハオンは「いいえ」と続けた。
 「その見張りは、もういません。白碧が来てからは」
 「君___もしかして…」
 「僕の父です。遺産の管理人として僕の家系は受け継がれているんです。その父は、白碧に捕まり___…、もういいでしょう。僕の事なんて」
 ハオンは、にっこりと嗤う。
 だが、拓海をはじめ四獣聖の面々にはその後、ハオンの父がどうなったか察しがついた。遺産を手に入れるために、知っているであろう男を捕らえ問いつめ、殺したと。
 「で、現在はとうなってるんだ?」
 「その後、その通路は修正されました。建物の裏に出るように。彼らもまさか、秘密の通路があって、裏からやってくるなんて思わないでしょ」
 ハオンの云うとおり、彼らにはこれほど都合の良い通り道はない。
 彼らの目的は、清雅救出なのだ。
 「行きましょう」
 ハオンの先導で、真っ先に井戸を降りたのは拓海だった。