小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

僕達の関係

INDEX|8ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 

でもそれってぇ、今はですっ! 要するに宮間クンはぁ、きっと病気なんですぅ!
思春期特有の気の迷いなんですっ! だ・か・らぁ――それを私が治療してあげますぅ!!」

「ち、治療……?」

「宮間クンってぇ、いつも幼馴染の桐野サンと登校してるじゃないですかぁ、
まずは、それをやめてぇ、私と毎日登校してくださいですぅ!
それから、授業中以外はぁ、ずうーーっと私と一緒に居てもらいますぅ!」

「……え? ず、ずっと……?」

「あ、嫌なら、いいですよぉ〜? そうしたらぁ、この写真を校内にぃ……」

「わ、分かったよ……い、居るよ。居るから……」

「わぁーい! やっぱり宮間クンって、すっごく優しいネっ!
私、宮間クンのこと、超だぁーい好きっ! って、あっ! 言っちゃった! キャーキャー!!
あっ、そうだ! 私の名前は、水谷遥――2年C組の、水谷遥だよっ! よろしくネッ!」

「よ、よろしく……水谷さん……」

「もうっ、やだぁ! 水谷さんだなんてっ! そんな呼び方はダメーっ!
私のことはぁ〜、は・る・かって呼んでくださいっ!」

「……は、遥……さん」

「わぁっ! 宮間クンに、名前で呼ばれちゃったっ!! キャーキャー!!」

「…………」

 こうして僕は、形の上で、遥さんの彼氏(言いなり)となることになってしまった……。

                      *

 次の日から、僕は遥さんと一緒に登校することになった。
 合流するのは、てっきり”学校”の最寄り駅かと思っていたら、
 彼女はどうやって調べたのか、僕の”家”の最寄り駅で待ちぶせをしていた。
 そして、昨日屋上で会った時と同じように、いきなり僕の手を握ると、
そのままひきずるようにして、強引に電車に乗せた。

「宮間クンと一緒に通学なんて、夢みたーい!!」
遥さんは悪びれること無く、腕を絡めながら、キャッキャっとはしゃいでいる。
そんな僕達を、迷惑そうに見ている乗客の視線が、とても痛い……。

「あ、あの――もう少し、離れたほうが……」
 状況に耐えられず、腕をほどきながら僕が言うと、遥さんは、
「ダァーメッ!! 宮間クンとは、これからこうやって毎日ラブラブに登校するんだからねっ!」
と言って、猫のように増々激しく絡み付いてきた。

 電車が一駅進む度、次第に同乗する学生も増えてきて、
居心地の悪さはどんどん膨れ上がっていく。

 もし、こんなところを、同じ学校の誰かに見られたら……
そう思った時、停車駅でドアが開いて、複数の女生徒が乗り込んできた。そして、

「――あ、あれ? ねえねえ……あれって宮間くんじゃない?」
「あーホントだ……でも、横にいる子は何? も、もしかして、彼女??」

 僕達の姿を見つけると、ヒソヒソと話し始めた。

「私知ってる。あれって、写真部の娘だよ……可愛いけど、でもちょっと変わっていて、
なんだか絡みづらいのよ――いつも一人で行動してるし、友達もいないみたいで」

「ふーん……でも、どうしてそんな娘が、宮間くんとあんなにベッタリくっついてるの??」

「それは、分かんないけど――でも宮間くんって、
意外とああいう娘がタイプだったりするんじゃないかな?」

「ええーやだー! どうして、私じゃないの??」

「まぁ――それは、顔とか?」

「ちょっ、ヒドイ! なにそれー!」

「あはは! ごめん、ごめん。そういう意味じゃなくってさ。性格は別にして、
あの娘ってやっぱり、凄く可愛いじゃない? 幼馴染の桐野さんも美人だし、
宮間くんって実は結構、面食いなのかもって思ったから」

「え……っていうか、それって――やっぱり、同じ意味じゃん!!」

「ばれた?」

「もー! むかつく!!」

「あはは! ウソウソ、冗談よ!!」

 最初は小さな声で話していたのが、
最終的に、彼女達の話し声は遠慮のない大声になってしまっていた。

 だけど、そんな彼女たちの会話から一つ分かったことがある。
 それは、この遥さんが、写真部に所属しているということ。
 どおりで見せられた写真は、凄く良く撮れていた。
 変な条件さえ出されなければ、綺麗に写っている隆の写真を貰いたいくらいに……。

「ねぇねぇ、宮間クン! 今日のお昼ご飯、何食べるぅ? やっぱり一緒に、思い出の焼きそばパンにしますぅ??」

「お、思い出……」

 当の遥さんは、さっきの女子達の会話が、聞こえていたのかいないのか、
そんなことは全く気にならない素振りで、楽しそうに話しかけてくる……。

 けど、僕は写真のこととは別に、もう一つ気になることがあった。
それは、彼女達の会話からして、遥さんは、いつも一人で行動していて、友達がいないらしいということなのだ。

 まぁ、こんな状況で、同情も何もないのかもしれないけれど……。

 僕がそんなことを考えている内に、いつの間にか電車は、学校の最寄り駅に到着していた。

                      *

 ここまで来てしまうと、周りはもう同じ学校の生徒ばかりだ。
 案の定、あっという間に僕達は注目の的になってしまった。

 駅から学校までの通学路。僕らを見る生徒達のヒソヒソ話と、好機の視線に晒されながら、
でも、それらを全く気にもせず、ベッタリとくっつきながら歩く遥さんと一緒に、
僕はいつもより何倍も長く感じる道のりを、ひたすらに耐えながら歩いた。
 そして僕達が、そのまま学校の校門の前まで差し掛かった時に、それは起こった。
 
 「ね、宮間クン。こっち向いてっ」

 僕が声に反応するよりも早く、遥さんの顔が目の前に迫ってきて、その唇が僕の口元にサッと触れたのだ。

「――っ?!」

「うふふーっ、しちゃった!」

 そして、彼女がそう言った次の瞬間、周り中で歓声が沸き起こった。

「キャー! 今の見た??」
「うお、朝からやってくれるね!」
「あれって、ニ年の宮間くんでしょ?? 凄くない??」
「私狙ってたのに、いつの間に彼女が出来ちゃったの?! そ、それも朝からキス?!」

 ザワザワと周囲が騒がしくなっていき、僕は慌てふためいた。
「ち、ちょっと、遥さん……! な、なんで、こんな……」

「言ったじゃないですかぁ、治療ですよぉ〜。ち・りょ・う!」

「ち、治療って……で、でも、だからって、こんな所で……こ、こんなこと……」
と、言いかけて、しかし次の瞬間、僕の言葉が止まった。

「――さ、さとくん……? な、何……して……るの……?」

 気がつくとめーちゃんが、驚きとも悲しみとも取れないような、複雑な表情で僕達を見ていた。

「め、めーちゃ……」

「あっ! 桐野サンじゃないですかぁ〜! おはようございますぅ!」

 僕の声を遮るようにして、遥さんがめーちゃんに向かって挨拶をした。

「あ、あなた……一体……?」

「私ですかぁ? 私は宮間クンの彼女ですぅ!」

「彼女って、な、何言ってるのよ……そ、そんな訳ないじゃない!」

「どうしてですかぁ〜? 宮間クンって、超カッコイイしぃ、彼女がいたって全然不思議じゃないですよぉ〜?」

「そ、そういうことじゃなくて……! さとくんは……」
作品名:僕達の関係 作家名:maro