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僕達の関係

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 後輩の月代さんも、翌年には同じ大学へ進んで、再び隆のマネージャーになるつもりらしい。

 めーちゃんは卒業後、家計を支える為に進学はせずに、
地元のレストランへ就職することになった。
 料理の得意なめーちゃんは、きっと立派なシェフになると思う。

 遥さんは写真の専門学校へ進学することになった。
 プロの写真家になるべく、すでに今から、写真の勉強に余念が無い。

 そして僕は、なんとか美術大学への進学が決まった。
 画家になることは簡単じゃないかも知れないけど、
それでも、頑張ってみたいと思っている。


 ――卒業式の帰り、僕達は桜の木の公園へ寄り道をした。

「終わっちゃったね」
めーちゃんが、花びらの舞う桜の木を見ながら呟いた。

「桐野、何言ってるんだ。これから始まるんだよ。
俺はやるぜ。大学で全国1位になってやる」

「あんた、3年前もここで同じこと言ってなかった?」

「ん? そう言われりゃそうか。ふはは」

「隆……それも昔、言ってた。
でも皆、とにかく無事に進路が決まって良かったね」

「さとくんも、大学合格おめでとう」

「悟、お前も大学で、コンクールの1位目指せよな。
一緒に表彰台に立とうぜ」

「秋本、絵画のコンクールに表彰台は無いわよ。
でも、ま、さとくんなら絶対大丈夫よね」

「ありがとう、隆、めーちゃん。僕も、二人に負けないように頑張るよ」
僕は二人にお礼を言った。すると、

「ちょっとぉ、私を置いて、勝手に盛り上がらないでよ。
いいなぁ。皆はこの公園に思い出があって」
と、遥さんが頬を膨らませながら言った。

「遥も一緒よ。今日、思い出が出来たじゃない。
未来の売れっ子フォトグラファーに、今からサイン貰ってもいいかしら?」

「勿論っ!! 私、いつかめーちゃんが自分のお店持った時、
写真寄贈してあげるねっ」

「楽しみにしてますよ。遥センセっ」

 僕達は、3年前入学した時と同じように、この桜の木の下で笑い合った。

 色々なことがあった高校生活、きっとあの時より少しだけ成長出来た気がする。

 ふと見上げると、春の穏やかな日差しが、僕達4人を優しく照らし、
桜の花びらが風に運ばれて、ヒラヒラと舞っている。

 それは、まるで僕達を見守るかのように、
 そして、新しい未来へと導くかのように、どこまでも高く舞い上がり続けた――。

                      *

 ――今、僕は一人でキャンバスに筆を置いている。

 窓から差し込む日差しと時折吹く風が、心地よく僕の顔を撫でている。
 すると、

「もうすぐ、完成かな? いい絵だね。
――で……そろそろ、この人達が誰なのか教えてくれないかい?」
と、扉を開けて入ってきた冴木登(さえきのぼる)くんが、声を掛けてきた。

 大学時代に知り合った彼と共同でアトリエを借り、
僕は今、そこで創作活動を行っている。

「うん……これはね、僕の高校時代からの大切な人達なんだ。
一生変わらない、とても大切な……」

 そこに描かれているのは、隆、めーちゃん、遥さん、そして僕の姿だった。
 春の日差しの中、桜の木の下を楽しそうに歩いている。

「そうだったのか。……でも、なんだか、羨ましい……。
ねえ――僕もいつか、その中に加えて欲しいな。――悟くん」
と、絵を見ながら、彼が僕の手を握ると、

「うん、勿論。……登くん」
と、僕も彼の手を握り返しながら答えた。


 ――ある日、遥さんから皆に手紙が届いた。写真展の招待状だった。


 学校を卒業後、時代を先取るような独創的且つ斬新な写真を撮り続けた遥さんは、
世界的な権威のあるコンテストで受賞したことを皮切りに、一躍時の人となり、
綺麗なルックスと、その不思議ちゃん的言動や立ち居振る舞いも手伝って、
今や誰もが知る有名人になっていた。

「皆! 来てくれたんだね!」

「遥さん、久し振り。」

「よお、水谷。元気そうだな。
そういや、お前と会うのっていつ振りだったっけな?」

「私は遥とも、さとくんや秋本とも、結構定期的に会ってるけど、
言われてみると、遥は二人と会うのって随分久し振りなんだよね」

「そうなのよぉ。めーちゃんのお店には、イベントや個展の打ち上げで
結構通ってるし、頻繁に会ってるけど、二人とは、中々会えないじゃない?
だから寂しかったわぁ〜」

「まぁ、今やお前は有名人だしな。ほら、こいつも、お前の大ファンでさ」
と、隆が言うと、

「み、みみみ、水谷さん!! ど、どうも、お久し振りです!!」
その後ろから、ピョンっと小さくジャンプするように、月代さんが現れた。

「お前な……緊張しすぎだろ……」
と、隆が呆れたように言うと、

「だ、だだ、だって、み、水谷さんですよ?! わ、私、いつもテレビで見てます!!
写真だけじゃなくて、ファッションも、と、とても素敵で!!
私、水谷さんのブランド『HaRuKa-☆』のお洋服も、いっぱい持ってるんです!!
だ、だから、実は今日も私――」
と、月代さんが自分の着ている洋服を指差しながら言いかけると、

「あっ!! ホントだー、私のブランド着てくれてる!!
嬉しい!! ありがとう、ツッキー!!」
突然、遥さんが月代さんに勝手な綽名を付けて、そのまま抱き付いた。

「っふ?! ふわっ?! ふわわっ?!」
急に抱きつかれた月代さんは、変な声を上げて、
遥さんが離れると同時にクニャクニャと隆に持たれかかってしまった。

                      *

「だめだこりゃ」
そんな月代さんを見ながら、隆がうんざりした顔でその体を支え、
そして、ふと気が付いたように、

「なあ。ところで、悟。お隣の方はどちら様だ?」
と、僕に尋ねた。そこで、

「あ、そうだった。ごめん、紹介が遅れちゃって。こちらは、冴木登くん。
大学時代の同級生で、今は共同でアトリエを借りて一緒に創作活動をしているんだ」
と、僕が彼を紹介すると、

「始めまして、冴木と言います。皆さんのことは、悟くんから色々聞いています。
僕らも、いつかは二人で水谷さんのような個展を開きたいと思っているんですよ。
その時は、必ず招待させて頂きますので、是非来て下さい」
と、彼がニッコリ笑いながら丁寧に挨拶をして、同時に僕の手を握った瞬間、

「――?!」
それを見た皆が一瞬息を呑んだ。そして、

「あ、あの……さとくん。もしかして……その人……」
恐る恐ると言った感じに、めーちゃんが尋ねてきた。

 皆の目の前で、手を握られてしまった以上、最早誤魔化すことも出来ずに、

「う、うん。実は付き合ってるんだ、彼と……」
と、僕は告白した。そして、

「ラブラブなんですよ。僕ら」
と、僕の言葉に登くんが嬉しそうに続けた。すると、

「――ま、まじか。で、でも……良かったな、悟。
冴木さん、悟をこれからも宜しくお願いします」
と、隆がぎこちなく頭を下げた。

「はい」
と、登くんが笑顔で答えると、
僕はなんだか恥ずかしくなって顔を赤くしてしまった。すると、

「……あのさ、その流れでって訳じゃ無いが、俺も皆に報告があるんだよ。
作品名:僕達の関係 作家名:maro