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僕達の関係

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「ま、待ってくれ。ち、違うんだ。悪気は無かったんだよ。
ほ、ほら、これは単なる悪戯さ。み……宮間くんだって無事なんだよ。
だ、だから……来ないでくれ……」
紀純は、その迫力に気圧されたかのように、ビクビクと縮こまりながら弁解を始めた。
それを見て、

「何が、単なる悪戯だ!! ふざけるなよ!!」
その態度に激昂した秋本が紀純の元へと走り出し、
さらに私も後に続いて駆け出した、その時だった。

 一瞬、微かにだが、私の目に映る紀純の口元が、僅かに緩んだように見えた。

「――っ?! あ、秋本……!!」

 私達と紀純との距離が残り2メートル程まで近づこうとした、その瞬間、
ピンと何かが弾ける音がしたかと思うと、両者の間に爆炎が舞い上がった。
 周囲に凄まじい轟音が鳴り響き、それと同時に真横に積んであった鉄骨が次々と倒れ始める。

 鉄骨が幾重にも倒れることで、炎が鎮火されると、それに伴い視界が鮮明になっていき、
その下から、焼け焦げた衣服のような物が、ぶすぶすと煙を上げているのが見えた。すると、

「――っ?! あ、秋本くん?! めーちゃん?! い、いやあああああ!! 」
遅れて袋小路に到着した遥が、その惨状を目の当たりにして、悲鳴を上げた。

「昔、親が仕事の関係先から手に入れた、映画用の爆破装置が倉庫で眠っててね。
それを、ちょいと改造した物なんだが、中々の威力だろ?
だから言ったんだよ。来ないでくれとね」
紀純が冷たい目で告げる。

「……よ、よくも……よくも、めーちゃんと、秋本くんを……
ゆ、許さない……」

「水谷遥か。巻き添えを食らわないとは、運が良かったな。
で、許さないってのは、どう、許さないんだ?
君は嘘をつく事と、写真を撮る事以外には、全く取り得が無いじゃないか。
そんな君に何が出来るんだ?」

「――っ?! ふ……ふざけないでよ!!」
明らかに嘲りの混じった紀純の言葉に、遥は逆上して走り出した。

                      *

「来るか。いいだろう」

 そう言うと紀純は、真正面から向かって来た遥に向かって、
横倒しになっている鉄骨を乗り越えながら、自らも歩き始めた。

 両者の距離が近づくと、
そこで遥は、めちゃくちゃに腕を振り回し、殴り掛かろうとしてきた。
だが、紀純はそれを物ともせず、カウンターで足払いを仕掛けた。すると、
それに遥は全く対処することが出来ず、あっさりと転倒してしまった。

「ごめん、ごめん。足元が見えていないみたいだったから、つい」
と、倒れた遥を見下しながら、その襟首を掴まえて猫のように持ち上げ、
そしてニヤっと笑いながら、その顔を覗き込んだ。すると、

「ごめん、ごめん。足元が見えていないみたいだったから、つい」
と、紀純と全く同じ台詞を繰り返して、遥が、ニヤっと笑った。

 てっきり、倒れて痛がっているかと思っていた遥の不敵な態度に、
紀純が虚を突かれた瞬間、突然後ろから足元をすくわれたかと思うと、
その視界がクルっと90度回転し、
一瞬後に、今度は紀純の方が地面に突っ伏してしまっていた。

「……ぐっ?! ぐぐ……な、なんだ……?!」
紀純が頭上を見上げると、

「水谷、ご苦労」

「遥、お疲れ様」

と、言う声と共に、先程、爆炎に巻き込まれ、鉄骨の下敷きになったはずの、
桐野と秋本が現れた。

「……ど、どういうことだ……?!」

「紀純くん。自分で言ってたじゃない。
私には嘘をつく事と、写真を撮る事以外には、全く取り得が無いって。
だからぁ、ご希望通り……嘘、ついてあげちゃいましたぁ! お・も・て・な・し ですぅ!」
と、遥が、どこかで見たことがあるような台詞とポーズを取りながら言った。

「おかしいと、思ってたのよ。偶然を装ってわざわざ私達の前に現れた上に、
自ら袋小路に誘導するような逃げ方するなんて。
そんなことされたら、罠が仕掛けてあると思うのが普通でしょ?」

「……お、おのれ……だ、だが、あの爆発の中で、どうやって……」

「俺の足を舐めんなよ、紀純。罠を仕掛けるタイミングは、
置いてある鉄骨の位置から、大体予想が付いてたんだよ。爆発する直前で、
倉庫と倉庫の間にある隙間に飛び込んだ。ただ、それだけだ」

「私は秋本の後ろを走っていたし、同じく隠れるのは簡単だったわ。
後は、炎で視界が塞がれている間に、制服の上着を投げ入れてカムフラージュしてから、
念の為、遥にはあんたの気を引いてもらうように演技してもらってたって訳」
私は言いながら、携帯電話を見せた。

「そういうこと。めーちゃんから、メールで状況は全部聞いてたから、
後は簡単だったのよ。紀・純・クン」

「く、くそ……」

「さあ、悟の居場所を教えてもらうぞ、紀純」
秋本が紀純を無理矢理立たせると、腕を後ろに締め上げた。すると、

「……どうするつもりなんだ?」
紀純が小さく呟いた。

「ん? なんだ?」
聞き取れずに、秋本が尋ねると、

「お前達は、宮間くんに会って、それで、どうするつもりかと聞いている」
今度は、はっきりと聞こえるように紀純は言った。

「……どうするって……それは……」

「お前達の中に、宮間くんの思いに応えられる人間がいるのか?
秋本隆。お前はもう、知っているんだろ? 彼がお前に好意を寄せているということを……
そして、それは決して、友情などでは無いということを」

「…………」

「答えてみろ! お前は、宮間くんの気持ちを受け止めることが出来るのか!
その覚悟があるのか! まさか、これからも、お友達として仲良くしよう等と、
虫の良いことを考えているんじゃあるまいな??」

「……お、俺は……」

「いいか。宮間くんが、お前達の前から姿を消したのは、
僕にさらわれたせい等では無い。秋本隆を始め、
お前達の中に、宮間悟という人間を受け入れるだけの居場所が
……器が無かったからだ! だから……」

 この、紀純の真に迫る問いに、誰も答えることが出来なかった。
 皆、さとくんのことを心から大切に思っているのに、
恋という感情、その一点だけには、どうしても触れることが出来ないのだ。

                      *

「……だから、それが出来るのは……断じて、お前達なんかじゃない……
それが出来るのは……この――僕だけだ!!」

 あまりに痛いところを突かれ、半ば呆然となりかけた私達の
その隙を突いて、突然、紀純が強引に秋本の腕を振りほどいた。そして、
懐から何かを取り出すと同時に、一気に振り下ろした。

「――っ?! あ、秋本?!」

 ナイフだった。しかもそれは、フォールディングナイフという、
カッターナイフ等よりも、遙かに危険な代物だった。

「……う、ぐぐ……」
秋本が手の甲を抑えながら、肩膝を突く。
見ると、指の間からポタポタと血が滴っている。

「秋本!!」
私が急いで秋本の傍に駆け寄ると、

「……だ、大丈夫だ……そんなに深い傷じゃない。……そ、それより……」
と、前方を見た。

「も、もう、引き返せない。そういう所まで来てしまったんだよ! 僕も、お前らもな!!」
作品名:僕達の関係 作家名:maro