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僕達の関係

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「あ、甘いひと時って……ぼ、僕はそんなこと、別に……」

「そんなこと、別に興味がないとでも言うのかい? それは嘘だよ。
君はこれまでそうやって、自分の本当の気持ちを押し殺して生きて来たんじゃないのか?」

「…………」

「君はこれからも、一生そうやって生きていくのか?
好きな人に振り向いてもらえずに、理解もされないまま、
そうやって、ずっと同じように、これからも、君は」

「ぼ、僕の気持ちが、き、紀純くんに分かるの?? ぼ、僕は……」
紀純くんの言葉を遮るように、僕は反論しかけた。
 しかし、それ以上言おうとして、そこで言葉に詰まってしまった。

「僕は、何だい? はっきり言ったらどうかな。君は、告白をしたことはあるのかい?
君が本音を言えば、好きな人も振り向いてくれるかもしれないよ」

「――き、紀純くんに、僕の気持ちなんか分からない……!!
ぼ、僕は、僕の好きな人は、そんなんじゃないんだ。僕がどんなに好きだって、
あ、あの人は……」

「あの人は、何だい? 好きになっても無駄だって言うのかい?
君は学校じゃ相当モテる人じゃないか。そんな君に告白されて、
そこまで相手が嫌がるとも思えないけどな。君はちょっと臆病になっているだけじゃないのか?」

「だ……だから……!! そんなことじゃないんだ……!!
ぼ、僕が、僕が好きなのは、じ、女子なんかじゃなくて……き、君には、分かる訳ないんだよ……!!」

 殆ど、本当のことを言ってしまったような物だった。
 彼の言葉に追い詰められて、今までずっと堪えてきた気持ちが堰を切ったように噴出してしまった。
 でも、それでも構わないと思った。明日になれば学校で晒された新聞部の記事で、
 僕のことは嫌でも学校中の生徒に知れ渡ってしまうのだから。

 僕は紀純くんの部屋を出ようと、扉のノブに手を掛けた。すると、

「待つんだ、宮間くん。そうじゃない。君は勘違いをしている」

「か、勘違いって……ま、まだ分からないの?? い、いい加減にし……」
これだけ言っても、まだ理解していないらしい、紀純くんの発言に苛立ちを覚えて、
僕が振り向いたその時、

「――っ……?!」

 一瞬、何が起こったのか理解が出来なかった。
 突然に目の前が暗くなって、次の瞬間、全身が、そして唇が、暖かさに包まれた。
 そして、僕は、その感覚に抗うことが出来なくなってしまった。

 ――寸刻……時間にすれば、それは一分と経っていなかったに違いない。
 しかし、その一分は、僕の中からあらゆる葛藤を弾き飛ばし、
感情の全てを引きずり込んでしまうかのようだった。
 ……そして、ゆっくりと、全身から暖かさが離れていくと、
 僕は、しなしなとその場にへたり込んだ。

「急にこんなことをして、ごめん……宮間くん。
――さっき君は、僕に君の気持ちは分からないと言ったよね。
しかし、そうじゃないんだ。分かるんだよ。僕は……僕だけには、君の気持ちが」

「え……」
彼の言葉に、僕が虚ろな目で見上げると

「僕はね、宮間くん。……初めて君を見た時から、
ずっと……君のことを……宮間くんのことを、愛しているんだ」

 その言葉が耳に入るか入らないかの内に、彼は再び、僕を自らの体温で包み込んだ。

                      *

 ――学校で合流した、私と遥、秋本は、その周辺を隈なく探した。しかし、

「何処にも、居ねえ……」
そう言って、秋本がうなだれている。

 時間は夜の11時を回っていた。
 学校も、桜の木の公園も、商店街周辺にも、さとくんの姿は無く
 道行く人の中に、見かけたという声も無かった。

「な、なあ。ところで、電話で桐野が言ってた、タイミングの悪さって何のことだ?
悟が消えたことと、何か関係があるのか?」

「それは……秋本、驚かないで聞いてよね」

「な、なんだよ。改まって。
悟が居なくなったこと以上に驚くことなんかねーよ。
いいから、教えてくれ」

「新聞部に書かれちゃたのよ。あんたと、さとくんのことが」

「はぁ? 俺と悟のことが、何だって?? 新聞部??」
秋本は、何を言われているのかさっぱり理解出来ないという顔で、聞き返した。

「全部話すと長くなるから、短く言うわよ。前に私が勘違いしたことあったでしょ?
あんたがさとくんを後ろから抱き締めて、
それで二人は恋愛関係にあるんじゃないかって疑っちゃったこと」

「あ、ああ。そういうこともあったな。で、それが一体何なんだ……?」

「それさ……私はその時に、もう分かっちゃったんだけど、実は半分、本当のことなのよ。
で、その時の写真を撮られてて、今日の放課後に新聞にされちゃった訳」

「え? ど、どういうことだ……?
す、すまん、桐野。俺、お前が何を言っているのか、正直よく分からんのだが……」

「……だから!! 要するに、半分は本当なのよ!!
さとくんが居ないとこで勝手に言うのは気が引けるけど、
さとくんは、あんたのことが好きだったってことよ!!」

「お、おいおい。ちょっと待ってくれ、桐野。いくらなんでも、こんな所でふざけるのは、
あまりいいことじゃないと、俺は思うぞ」

「ふ、ふざけてなんか……あ、あんたねえ。あー、もう!! どう言ったら信じるのよ!!」
私が頭を掻き毟りながら言うと、

「めーちゃん、私が話すよ」
と、遥が言った。

「は、遥……でも、それは……」

「いいの、めーちゃん。だって、私が悪いんだもん。
全部言わないと、秋本くんも納得できないと思うし……」

「水谷……どういうことだ?」
遥の真剣な顔つきを見て、秋本も表情を変えた。

                      *

「あのね……秋本くん。私が前に宮間くんと付き合ってるって噂になった時、
本当は勉強を教えて貰っていて、周りが勘違いしちゃってたって言ったでしょ?
でも、実はそれ嘘なの。本当は、秋本くんが宮間くんを後ろから抱き締めた時、
それを私が写真に撮っていて、言うことを聞かないと写真をばら撒くって脅して、
宮間くんに無理矢理、彼氏のフリをさせていたのよ」

「……な、なんだって? お、お前まで、冗談言うつもりかよ?」

「冗談じゃないの。本当に私の身勝手で宮間くんを振り回していたの。
で、でも、宮間くんは、そんな私を許してくれて……。
……なのに、それなのに私……その写真を誰かに盗まれてしまって……
それが、あ、あんな記事に……」

「……その話、本当に嘘じゃないのか……?」

「嘘じゃないわ。……宮間くんは、その記事を見て、皆に知られて……
そ、それで、ショックを受けて、居なくなってしまっ……」
遥がそう言いかけた瞬間、

「み、水谷、お前!! 自分が何したか、分かってて言ってるんだろうな?!
もし、それが本当なら、悟が居なくなったのはお前のせいじゃないか!!」
と、遥の胸倉を掴みながら怒声を上げた。

「あ、秋本!! やめて!!」
私は慌てて二人に駆け寄ると、必死で秋本の手から遥を引き剥がした。

「……桐野、まさか、お前もそれ知ってたのか」

「……知ってた……で、でも、違うのよ、秋本!!」
作品名:僕達の関係 作家名:maro