小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

僕達の関係

INDEX|28ページ/44ページ|

次のページ前のページ
 

と、白々しく言ったので、

「誤魔化しても無駄よ。5時限目に、その娘とその娘の友達が保健室へ行ったでしょ。
その時間に体育の授業で席を外していた遥のカメラから、SDカードが抜き取られたのよ。
状況からして、あんた達が一番怪しいわ!」
と、追求した。すると、

「はあ……そんなことで疑いを掛けられるなんて、心外だな。
確かにこの娘は付き添いで、体調不良の友達と保健室へ行ったよ。
だけど、それだけで盗人呼ばわりするには、目撃者も居なければ物証も無いじゃないか」
と、ため息混じりに紀純は答えた。

「な、何言ってるの? それを今から受け渡しする所だったんでしょ? いいから荷物を見せなさいよ!」
私は二人が持っているカバンを指しながら言った。

「仕方ないなあ」
紀純はそう言うと、あっさり鞄を開いて私達に中を調べさせた。
横の女子も、同じくそれに習うようにして続いた。しかし、

「……どこに隠したのよ。早退したあの娘に渡したの?」
鞄の中には何も無かった。

「だから、僕達は何もしていないんだよ。濡れ衣なんだ」

「ふざけないで! そんな訳ないでしょう!
じゃあどうして、友達でもないあんた達がこんな場所でコソコソと二人きりで話してるのよ!」

「それは……僕達がこういう関係だからだ!」
紀純はそう言うと、突然横の女子を抱き寄せて、いきなり"くちづけ"を交わした。

「――っ?!」

絶句した私達の前で、二人は暫らくの間お互いの身体と唇を重ね合わせ続けた。

「あ、ああ、あ、あんた達!! 人前でいつまでそんなことしてるのよ!」
堪り兼ねた私が二人へ向かって叫ぶと、ようやく二人はゆっくりとお互いの身体を離し、

「分かったかい?」
紀純は、まるで何事も無かったかのように、平静な顔でそう言った。

「わ、分かるわけないでしょ?! な、なんなのよ、突然!!
第一、あんたはそういう人じゃないじゃないの! あんたは、さ、さとくんのことが……」
と、狼狽した私が言いかけると、紀純は、

「僕が、女の子のことを好きじゃないなんて言ったことあったかな?
愛に性別は関係無いと思うんだがね」
と、またしても白々しく言った。

「う、嘘よ! あんた女子を見る時、いつも怖い目つきで威嚇してるじゃない!」

「ああ。それはアレだよ。最近流行のツンデレってやつさ。
僕は、女の子のことなんて好きじゃないんだからねって感じ?」
そう言うと紀純は、私達に向かってウインクした。

「き、気持ち悪いことしないで!!」
私は全身に怖気が走り、全力でその視線を拒絶した。

「分かって貰えないなら仕方ないがね。
だが、確かに君の言う通り、僕は宮間くんのことだって愛している。
ただ愛が大きすぎて、一人の相手では溢れ返ってしまうだけなのさ」

「こ、この、変態……!!」

「どう言われても、これが僕だからね。そして、彼女もそんな僕のことを理解してくれている」
そう言うと、紀純は再び彼女にくちづけをした。

 その気味の悪い光景に、私が思わず目を背けると、遥が私のスカートの端を引っ張った。
そして、これ以上何かを追求しても無駄と言うかの様に、苦しげな表情で首を左右に振ったので、
仕方なく私は、この二人を後にしてその場を離れることにした。

 校舎の角を曲がる際、一旦後ろを振り返ると、二人は未だ先程と同じようにくちづけを交わしている。
 その姿を見て思わず吐き気を催した私は、再び目を背けて、足早に校門へ向かい歩き始めた。

                      *

 校舎の裏で、二人の男女が唇を重ねている。しかし、次の瞬間、

「ぶはあっ!!」
男が声と共に、いきなり相手を突き飛ばした。
その勢いで女子は足を縺れさせて、地面にへたり込んでしまった。

 突然のことに、女子は声を上げることも出来ない。

「忌々しい! 桐野彩芽め!
あいつのせいで、こんなにもおぞましいことをしなくてはならなくなった!!
は、早く口を濯がなくては! 気持ちが悪い!!」

「き、紀純くん……酷い……」
突き飛ばされた女子が、やっとの思いで口を開いた。

「酷い? 酷いだと? 一体誰のせいでこんなことになったと思っている?
君が桐野彩芽に後を着けられるようなことをしたからだろうが!!
あれほど人目に付くなと言っておいたのに!!」

「ご、ごめんなさい……で、でも……私……ファーストキスだったの……」

「は?? 何を言っている、それなら僕もだ、馬鹿!!
このキスは、宮間くんに捧げるはずの物だったんだ! それを、そ、それを君ごときに……!!」

 紀純は頭を掻き毟りながら、地団駄を踏み、しかし、

「……だ、だが……何とか奴らの疑いを誤魔化すことは出来た。
この後のことを考えれば、この屈辱にも耐えられる……」
自らを納得させるかのように、何度も頷きながら、呟いた。

「SDカードは粉々に破壊した上に、焼却炉で燃やした。証拠は無い。
データはすでに匿名で、例のアドレスに送信済みだ。
ネット上に拡散しても良かったが、無関係の人間に広めても意味は無いからな」

「あ、あの……紀純くん。と、ところで、私達の写真は……」

「ああ。そうだったな。返してやるよ」
そう言うと紀純は、ズボンのポケットから数枚の写真を取り出して、
しゃがんでいる女子に向かってバラバラと放り投げ、

「まだ全部じゃない。残りは、終わってからだ。
分かってるとは思うが、今日のことは他の誰かに話したりはするなよ。
そんなことをしたら、僕だけじゃなく君達自身の首を絞めることになるということを忘れるな」
と、念を押した。

「わ、分かったわ。で、でも……あの……」

「なんだ? まだ何かあるのか。これからやることがあるんだ。
くだらない話に付き合っている暇は無い」
何かを言おうとした女子に、紀純は冷たく告げた。すると、

「わ、私……まだ他にも何か、紀純くんの為に出来ること無いのかなって……思って……」
女子はおずおずと、上目遣いに紀純の様子を伺うようにして言った。

「……?」
紀純は何を言われているのか分からずに、怪訝な表情で女子を睨んだ。

「あ、あの……だ、だから、その……わ、私、実は結構前から、き、紀純くんのことが……」
と、目線をあちこち動かしつつ、頬を赤らめながら女子が言った。その瞬間、

「お、おい……お前、何を言っている?! 冗談じゃないぞ!!
勘違いしているようだから言っておくが、僕が好きなのは、世界で唯一、宮間くんだけなんだ!!
さ、さっきのキスだって、桐野彩芽の疑いの目を誤魔化す為の演技なんだよ!!
はっ?! そ、そうだ!! 忘れていた!! く、口を濯ぎに行かなくては!!」

 紀純は、まるで渋柿を口にしてしまった人のような、心底苦々しい表情を浮かべると、
早足でその場を去って行った。すると、

「あっ!! ま、待って、紀純くん!!」
その後を追うようにして、女子も小走りで駆け出した。

                      *

「ごめんね。めーちゃん」
帰り道。駅に着いた所で、遥が謝った。

「なんで、遥が謝るのよ?」

「だって、私のせいで色々迷惑かけちゃってるし……」
作品名:僕達の関係 作家名:maro