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僕達の関係

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宮間くんに変な虫がつかないように常に監視しているのさ。
だから、君のことは、僕がどうにかしようと思っていたんだが
……その前に、宮間くん自身で上手に君を取り込んでしまったようだね。さすがだよ。さすが宮間くんだ」
と、顔面蒼白になった遥を見ながら、恍惚とした表情で彼は答えた。それを見た私は、

「あんた、ちょっといい加減にしなさいよ! 他人のプライバシーにズカズカ土足で入り込んで、
しかも、その傷をえぐるような真似をして! 謝りなさいよ! 遥に謝りなさい!!」 
と、激昂して彼に迫ろうとした。すると、

「ちょっと、待った。言ったじゃないか。あまり、こっちを向くと不自然に見えるって。
君達、全然気づいていないようだけど、さっきから、あの校舎の壁の向こう側で、
宮間くんがこちらを覗いているんだよ」

「――っ?!」
 彼にそう言われ、驚いた私達がそちらの方へ向こうとすると、

「おおっと! そっちにも向いちゃダメだ。
そうだな。……じゃあ、そのベンチでお弁当でも広げて、
食べているフリをしながら、目線だけ動かして見てみるといい」
と、言われ、私達が仕方なく言われたとおりにしつつ、横目で見てみると、

「ほら、いるだろ? さっきからチラチラと顔を出し入れしながら、こっちを見ているよ。
あんなんでバレないと思っているんだから。本当に可愛いね。宮間くんは」
と、彼が目を細めながら言った。

 確かに、遠目ではあるけれど、それがさとくんだと言うことは、私も一目で分かった。
 遥にも分かったらしく、さっきの彼の言動の影響も重なったせいか、
動揺を隠せないように、手が小刻みに振るえている。

「水谷さん、さっきは悪かったよ。あそこまで言うつもりは無かった。売り言葉に買い言葉というやつだ。
許して欲しい。宮間くんの敵じゃ無いとはっきり分かった相手に、攻撃する意図は無いんだ」
 彼はそう言いながら、遥に向かって頭を下げた。

「先程の会話の内容から察するに、どうやら君達は、宮間くんと秋本くんをくっつけたいようだね。
しかし……その秋本くんが、マネージャーの女の子と親密な仲になっているというのは本当なのかい?
彼自身は、宮間くんにとって害が無いと判断していたから、このことは、正直盲点だったが
……もし、それが本当のことなら、僕にとっては僥倖だ。決定的なチャンスだと言える」

「ど、どういう意味よ?」
 目を輝かせながら話す彼に、私が訝しりながら聞くと、

「だから、この話を聞いて、もしも宮間くんから秋本くんへの気持ちが離れるようなことになれば、
この僕にも……いや! 僕こそが! 宮間くんと運命の赤い糸で結ばれるという、
最高の幸運を手にすることが出来るということなんだよ!」
と、彼は興奮を隠せないかのように、頬を上気させながら言った。

「――なんですって?? ち、ちょっと待って! ……じ、じゃあ……あんたって……ま、まさか……」

「そうだ。僕は、宮間くんのことを――愛している」

 彼がそう言った瞬間、私は思わずベンチからズリ落ちそうになった。
 しかし、それを見た遥が、慌てて私の身体を支えてくれたので、なんとか姿勢を持ち直した。

「そ、それじゃ……あなた、これから、宮間くんと秋本くんの仲を邪魔するって言うこと?」
と、放心状態になった私の代わりに、遥が聞いた。すると、

「違う。そうじゃない。これはあくまでも、自然の成り行きとして成されなければならない。
何故なら、愛に強制は無いからだ。僕は宮間くんが、自然と僕のことを好きになるように、その橋渡しをするだけだ。
そう。正に、僕達の真実の気持ちが重なりあう、その神々しい瞬間まで」

 最後の方は、一体何を言っているのか、全く意味が分からなかったが、
 とにかくこれは、そう言うことだった。
 要するに彼……紀純涼は、さとくんと同じように――”男の子”のことが好きな”男の子”だったのだ。

                      *

「と言うことで、僕はそろそろ、宮間くんの元へ行くよ」
 と、彼はクルッと私達の方へ背を向けて、歩き出そうとした。すると、

「……え?! ち、ちょっと待ってよ! さとくんの元へ行くって……どういう?!」
 それを見て、放心状態から抜けだした私が、慌てて声をかけた。

「君達も、彼に聞かれては困る相談をしていたんだろう?
このまま、あの壁の向こうで宮間くんが見ていて平気なのかい?」
と、彼は私の質問に、後ろ向きのままで答えた。

「そ、それは……」

「だから、僕が彼をあそこから連れ出してあげると言っているんだ。
勿論、ここで君達と話したことは伏せたままでね」
と、言うが早いか、彼は今度こそ、そのままスタスタと歩き出して、
さとくんがいる場所とは、反対側の校舎の壁の裏へと消えてしまった。

 しばらくそれを、呆然と眺めていた私達だったが、ふと、さとくんのいる方へ目線を向けると、
いつのまにか、さっきまでこちらを覗いていたさとくんの姿が、消えてしまっていた。

「つ、連れ出したのかな……」
と、私が呟くと、

「分からない。……でも、私……あの人は嫌い……」
と、遥が言った。

 さっき彼は、強制は無いみたいなことを言っていたが、とても信用できる雰囲気では無かった。
 私は少し考えると、ガバっと勢い良く席を立った。

「め、めーちゃん?」
 それを見て、遥が驚いたように私を見上げると、

「こうなったら……こっちも動くしか無いわね。
このまま、あいつにいいようにされてたまるもんですか。……急ぐわよ。遥」
 そう言うと、私はそのままの勢いで再びベンチへ座り、開いたままのお弁当箱の中身を一気に食べ始めた。

「め、めーちゃん。凄い……」

「いいから、遥も食べちゃって!」

 私は、目を丸くする遥を促しながら、あの、さとくんを愛していると言った男の子
――”紀純涼”と対決することを、密かに心に誓った。

                      *

「あ、あの……紀純くん……」

 ――彼に連れられて、僕は新校舎の方へと戻ってきた。
 そして今度は、校舎横にある、運動部の部室が乱立している建屋のすぐ近くまでやって来た。

「あの辺りは穴場さ――」
 そう言うと、紀純くんはその建屋と校舎の間の中庭付近を指さした。
 そこは日当たりも良く、花壇に綺麗な花が植えられている。
 
「でも、今日は……どうやら先客がいたらしい」
 彼が言うまでもなく、僕の目は花壇を通り越して、
その横のベンチに座っている人影に釘付けとなった。

「――た、隆……」
 そこには、隆と……そして、見知らぬ女の子が座っていた。
 二人は仲良さそうに、一緒にお弁当を食べている。

 すると、不意に女の子が隆の唇付近に手を伸ばし、
 そして、そこに付いていたご飯粒をつまんでパクっと食べた。

 ――嫉妬。

 その時の感情を、敢えて言葉に表すのならその二文字だったが、
 しかし、それだけでは到底収まりつかない、あらゆる負の衝撃が激しく渦を巻いて、
 一瞬で心の中を席巻した為、瞬間、僕は気を失いそうになった。
作品名:僕達の関係 作家名:maro