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僕達の関係

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 恐怖と焦りで、相手の手から逃れようとして、必死で自分の手足をバタバタと激しく動かすと、

「み、宮間くん。お、落ち着いて。僕だよ。クラスメートの、紀純だよ。」
と、口を塞いだ手を緩めながら言われたので、

「――え……? ……き、紀純……くん……?」
と、僕は、若干身体から力を抜いた。すると、

「そうだよ、宮間くん。だから、怖がらないで」
と、相手が完全に僕から手を離したので、

 自由になった体で相手の方へ向き直ると、
言われた通りに、クラスメートの紀純涼(きすみりょう)くんがそこにいた。

 彼は二年になってから、初めてクラスメートになった人だ。
普段、あまり会話をすることは無いけれど、体育の時間に球技の授業でチームを組む際や、
何かしらグループで作業をするという時になると、何故だか、僕と隆のすぐ傍にいることが多い人だった。

 彼は、勉強もスポーツも出来るし、端正な顔立ちでモテそうな男子だったけど、
何故だか女子に対しては、距離を置いているようなところがあって、
近寄ると、あからさまに迷惑そうな顔で言葉数も少なくなる為に、
その態度のせいで、かなり近寄りがたい雰囲気を持っていた。

 僕も普段からそうなれたら、女子があまり近づいて来なくなるだろうとは思ったけれど、
やっぱり彼のようには、とても出来そうになかった。

 しかし……その彼が、どうして今ここにいるのだろうか。
しかも、普段は人が来ないようなこんな場所に。……と思った瞬間、

「久しぶりに、外でお昼を食べようと思って校舎の外へ出たら、
たまたま宮間くんの姿を見かけてね。声をかけようと思ったら、旧校舎の方へ歩いて行ったから、
あんな人気の無い場所へ行くなんて、もしかして悪い奴にでも呼び出されたのかと思って、心配になってさ。
申し訳ないと思ったけど、後を着けさせてもらったんだよ」
と、僕の疑問を見透かしたかのように言った。

「……そうだったんだ。な、なんか、ごめん。心配かけてしまって……」
と、僕が謝ると、

「とんでもない。僕が勝手にしたことなんだから。宮間くんが謝る必要なんてないんだよ。
それより……あのベンチにいる女子達に何か用でもあるのかい?
見たところあれは、同じクラスの桐野さんと、C組の水谷さんのようだけど」
と、尋ねられたので、

「い、いや! 別に用だなんて……ぼ、僕も、あのベンチでご飯を食べようと思って来てみたら、
二人が先にいて。……そ、それで、どうしようかと思っていただけで……」
と、僕はしどろもどろになって弁解した。すると、

「そうか。なら良かった。――あっ、そうだ宮間くん。それなら折角だし、僕と一緒にお昼ご飯を食べないかい?
こんな場所よりも、もっと明るくて、しかも人気が少ない場所を知っているんだ」
と、彼は、僕の不自然な態度を気にする様子もなく、不意にそんな提案をしてきた。

 正直、あまり気は進まなかったものの、断る理由の無かった僕は、めーちゃんと遥さんのことが気になりつつも、
その誘いを受けて、後ろ髪を引かれる思いで、彼と共にその場から離れてしまった。

                      *

 ――時間は少し遡る。

「――遥。ここでいいかな?」

 お昼休みに私達が二人で過ごすのは、いつの間にかお約束のようになっていた。

「うん、めーちゃん。誰もいないみたいだし、今日はここにしよっか」
 
 他人に聞かれたくない話しもあるので、私達は、いつも人気の無い場所を探す。
 会話の内容は勿論、さとくんと秋本のことだ。
 
「教室でのさとくんは、一見するといつも通りだけど、やっぱり時々、辛そうな顔してる。
秋本からは、結構話しかけているみたいだけど、さとくんの方は、どう話していいのか戸惑っているみたい」
 私は教室での二人の様子を報告した。すると、

「そっか。……やっぱり、気にしてるんだね。宮間くん……」
と、遥が悲しそうな顔で俯いたので、

「あ、別に責めてる訳じゃないよ。
ちなみに遥の方は、何か気づいたことや、今後のアイデアとかあったりしない?」
 私は空気を変えるように、明るい声で聞いた。すると、

「うん。実はちょっと気になる噂があるんだけど。……でも、少し言いづらいことで」
と、遥が少し言葉を詰まらせた。

「え? 何で? 教えて! 教えて!」

「実は今、秋本くんと陸上部の一年生マネージャーが、かなり親密な関係になっているらしいの。
練習中、いつも一緒にいるらしくて、最近では朝早くから一緒に登校してるみたい。
で、でも、めーちゃんは、こんな話聞きたくないよね……?」

「ううん、そんなことないよ。むしろ、秋本に好きな人が出来たってことなら、
私的には良かったって思うし。けど……それよりも、そうなると……さとくんが……」

「うん。そ、そうだよね。宮間くんがこれを知ったら、きっと傷つくかも。……どうしよう……」

 只でさえ、どうしたらいいかと悩んでいたところに、予想外の事態が重なって、
私達は途方に暮れた。すると、

「興味深い話だね。僕も聞きたいな」
と、突然近くから声をかけられた。

「――っ?!」
 驚いた私達が、声のした方へ向くと、

「ああ、ダメダメ。あまりこっちを向くと不自然に見えるだろう?
ま、向こうからは死角になっているから、大丈夫だとは思うけど」
と、焼却炉の影から声の主が半身を現した。

「……あ、あなたは……き、紀純くん?」

 そこにいたのは、私と同じクラスの”紀純涼”だった。
 彼はいつでも、どこか冷たい気配を放っていて、特に女子に対しては、その傾向が顕著だった為、
 端正な顔立ちにも関わらず、クラスメートの女の子達からは、かなり敬遠されていた。
 正直、私も彼のことは苦手だった。

「ど、どうしてここにいるのよ。私達の話を盗み聞きしてたの?」
と、私が眉間にシワを寄せながら言うと、

「そんな、人聞きの悪いこと言わないでほしいね。……と、言いたいところだけど、
まぁ、間違ってはいないよ。それよりも、君達のことだ。
どうやら、さっきから、宮間くんと秋本くんのことについて話しているようだけど、何を企んでいる?」
と、彼はいつも女子に向かってしているように、私達へ突き刺すような視線を向けてきた。すると、

「それは、こっちのセリフですよぉ!!
あなたの方こそ突然現れたくせに、こっちを向くと不自然に見えるって、どういうことですかぁ??
ぶっちゃけ、あなたの方がよっぽど不自然に見えるんですけどぉ??」
と、それに対し、遥が不思議ちゃんモードで反論した。

                      *

「C組の水谷さんか。……君は普段、不思議ちゃんで通しているみたいだけど、
元々はそうじゃなかったらしいじゃないか。病気の彼氏が海外で治療中に亡くなって、
それで自暴自棄になったのかい? そんなんじゃ、彼氏も浮かばれないだろう」

「――っ?! どうして……?! な、なんで、あなたが、そのこと……」
 そう言われた遥が、顔を青くしながら呻いた。すると、

「僕はね。宮間くんに近づいた人間のことは、徹底的に調べることにしているんだ。
作品名:僕達の関係 作家名:maro