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スーパーカミオ患者様

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これによって生まれたのが、九州地方を中心とした「スーパー患者様」、関西を中心とした「お患者様」、関東以北を中心とした「神患者様」などであった。厚労省がこの言葉の統一を求めたため、全国の医学部教授や有識者と呼ばれる人種が招集されて検討会を重ね、ついに完成した言葉が「スーバーカミオ患者様」であった。カンカミ法では患者さんを「スーパーカミオ患者様」と呼ぶことが義務付けられた。

これに対して国文学者の金田一之介(かねだいちのすけ・東大教授)は、「患者という言葉は相手に対する呼称ではなく、さらに患者というのは音読みであり、それに『お』とつけるのは文法的にも誤っている。いずれにせよ、こんなことでは落語の『じゅげむじゅげむ』になってしまう」と警鐘を鳴らしたが、患者様不敬罪で東大教授を解任され、禁錮3年の実刑判決を受けた。

ちなみにその後のオカマダ氏は、ぼったくりバーのような「セカンドオピニオン外来」で荒稼ぎをしていたが、待ち時間はやたら長いし、説明はやたら短いし、テレビに出演しているときとは打って変わって診療態度は悪いし、とにかく誤診が多いということで患者の恨みを買い、ついには患者に日本刀で切り付けられ、額に3針縫うカスリ傷を負った。ところがこのときに彼が発した「オカマダ死すとも患者様は死せず」というセリフがネット上で拡散されると彼の人気はさらに高まり、「患者様は神様で、オカマダ様は神様の神様です」と超神扱いされた。

さらにカンカミ法では、患者取り違えを防ぐため待合室では通名をつけて呼ぶことが定められた。もちろん、診察室に入ったらさらにIDチップと声紋や指紋などからで本人であることを確認し、そこから初めて診察に移るのである。

つまりこんな感じである。「スーパーカミオ患者様の小林キャサリン珠理奈様、たいへんご足労でございますが、第3診察室までご降臨賜りますよう、なにとぞ宜しくお願い申し上げます」とコンシェルジュが診察室に呼び入れ、診察室では医師と看護師がドアを開けて差し上げ、最低10秒間深々と礼をしたのち、「わざわざ診察室までお越しくださり本当にありがとうございます」と笑顔で診察室にお招きし、IDチップで本人確認をするために体に触れても構わないという書類にサインしてもらい、指紋や声紋も照合しながら全国統一の電子カルテで本人であることを確認し、「スーパーカミオ患者様の小林キャサリン珠理奈様こと、本名CTY478290様でよろしかったでしょうか」と再度確認し、さらに診察をしても構わないという書類にサインしてもらい、恭しく土下座をして最敬礼の座礼をした後に、ようやく診察が始まるのである。

実はこれでもマシになった方なのだ。カンカミ法が施行された当初は、スーパーカミオ患者様を待合室では受付番号でお呼びし、診察室の手前にある中待合室で通名を確認し、さらに診察室で本名確認を行うことが定められていた。しかしながら、全国各地で「自分より受付番号が後の患者が自分より先に呼ばれた」と腹を立てて医師・看護師や受付の事務職員に暴行を加える事件が多発するに至り、この受付番号制度は廃止された。診察後に玄関先までスタッフ全員でお見送りすることも、当初は医療従事者の義務とされていたが、「診察時間がかかりすぎる」という患者人権擁護団体からの指摘を受け、2年後に廃止された。

その一方で、医師や看護師を多発する暴行から保護しようという動きも起こった。ベッド数が300床以上のすべての病院で、院内に警察官が24時間常駐する派出所が設けられ、各診察室の様子はモニターで派出所に中継されるようになった。医師にはヘルメットとゴーグルとマスク(もしくは手ぬぐい)を装着することが義務付けられ、診察室には護身用の竹槍(もしくは刺又)とジュラルミン製の盾の設置が義務付けられた。まるで全共闘の闘志が診察している感じだ。ちなみに某国ライフル協会会長と同国の外務大臣が、「日本の医師や看護師には拳銃と防弾チョッキを装着させないと非常に危険である」という緊急提言をしているというニュースが、先日もテレビで報道されていた。

診療スタッフの様子も、この数年で大きく変わったので紹介したい。まずは看護師。国籍が非常に多彩になった。現在わが国の看護師で一番多いのは中国人だ。特に朝鮮半島が中国領土になった際に難民として移住してきた旧朝鮮系中国人。全国的にも看護師全体の5割くらいが中国人だと聞いている。当院でも半数近くが中国人看護師だ。次に多いのがベトナム人・タイ人・フィリピン人だ。日本人看護師は残りの1割くらいであり、基本的には富裕層向けの医療機関以外で日本人看護師を見かけることはほとんどない。

さらには、「男性看護師はキモイし怖いので、看護師は女性だけの職業にして欲しい」という若い女性たちの声というか圧力に応えて、いまでは看護師は全員女性の格好をしている。元男性のような看護師もいるし、女装しているだけのように見える看護師もいるが、とりあえず全員が女性の格好をして仕事をしている。個人情報の侵害に当たるので、私から彼らに性別を訊くことはできない。

次は医者だ。何度も述べているように、現在では日本人医師のほとんどがブランド病院か高級クリニックで働いている。私のように一般病院で働く日本人医師は全体の1割くらいだ。ちなみに当院の日本人医師は、院長と副院長の私を含めても4名だけになった。そのうちの1名はうつ病を発症して長期療養中である。もう1名は患者の飛び膝蹴りで骨折して自宅療養中であるが、先日見舞いに行ったら「ニーハオ、謝謝」と言われたので、おそらくこの病院に戻ってくることはあるまい。

一番多いのは、医師もやはり中国人だ。その他はベトナム人やインド人が多い。イギリスなど医療費(医師の人件費)が抑制されているヨーロッパ諸国と同じような構成比らしい。

基本的に中国人医師は根性というか、生命力が違うと思う。大阪人を100倍くらいガメつくした感じだ。とにかく必死に勉強するので、現在は日本人よりも中国人の方が医師国家試験の合格者数ははるかに多い。だが、あくまでビジネスとして割り切っているのか、単なる国民性なのか、日本人がとことん嫌いなのか、私から見ると患者に対してかなり冷たい印象がある。ちなみに彼ら外国人はカンカミ法の適応対象外とされているので、彼らが患者に対して高圧的な態度やぞんざいな言葉づかいをすることは許されている。

「日本の文化を十分理解しておらず、言葉が不自由であるから、仕方がない」というのが表向きの理由であるが、人件費の安い外国人を登用することで医療費を抑制したいという財務省の意向と、敬愛する祖国・中国との摩擦は避けたいという共民党の意向であるらしい。
作品名:スーパーカミオ患者様 作家名:真田信玄