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スーパーカミオ患者様

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のちに「国民総生活保護状態」と呼ばれた労働人口の激減である。勤労世代の多くが、「働いても働かなくても収入は一緒だし、働けば働くほど訴訟のリスクが高くなるだけだから」と労働意欲をなくし、一日中ゴロゴロする事態が発生したのである。

その一方で、多くの優良企業は法人税と人件費の安い東南アジアに完全に拠点を移し、海外移転のできない中小企業は次々と倒産した。「ノアの箱舟」には乗り損ねたものの、優秀な医師や看護師の多くは中国語を必死に勉強して海を渡り、中国で富裕層向けのブランド病院に就職した。その結果、法人税も所得税も消費税も社会保険料も激減し、全国各地で優秀な医療従事者も激減し、対照的に街中には失業者や生活保護者があふれた。出稼ぎ外国人や移民や難民もそれに加わった。さらには高額な医療費が必要な高齢者が激増したため、社会保障費は青天井で増え続けた。

これに対して、共民党は赤字国債を乱発することで社会保障費を捻出し続け、日銀に詰め寄って紙幣を大量に刷るように圧力をかけた。結果的に日本円の価値はどんどん低下し、未曽有のハイパーインフレと円安が進んだ。いまや、国の借金は9900兆円(ほぼ1京円)、ガソリン1Lが600円前後で、1ドルは500円を超えた。

世の常でがあるが、時が経つにつれて共民党の目指した国民皆平等社会は足元から崩壊していった。いつのまにか高級官僚や国会議員には特権階級としての利権が集中するようになり、「秘密保護法」を強化した「スーパー秘密保護法」によってプライバシーを守られながら、推定年収5億円以上(といっても、20年前の1億円程度)ともいわれる超富裕層として、高い城壁に囲まれた赤坂や麹町の居住エリアの中で豪奢な生活を送るようになった。城塞都市とも呼ばれるその広大な居住エリアの中には、学校や高級スーパーはもちろん、世界トップレベルの医師と最新の医療機器をそろえた病院も存在するらしい。「らしい」というのは、高級官僚や国会議員が城壁の中でどんな生活をしているのか、私たち一般人はほとんど何も知らないからである。選挙結果ですらもスーパー秘密保護法で公表されなくなった現在、国会議員や高級官僚が公正な選挙や試験で選ばれているのかさえも疑わしい。

自分たちは利権を貪る一方、国民総生活保護状態で労働意欲を失った国民を働かせるため、無理やり荒れた農地や放射線汚染地域に連行し、そこで強制労働させる国家事業が、「勤労ワクワク楽しいな、働く歓びキャンペーン」とか何とかいうプロジェクトで始まっているらしいが、徹底した秘密主義の下では本当のことはわからない。

為政者の意のままにならない民衆が、奴隷の扱いで強制労働をさせられ、リンチ死や過労死を迎えている。政党内部での「総括」や「粛清」と称した内ゲバ事件やリンチ事件も繰り返されている。サヨクのすることはレーニン時代から何ら変わっていないのだろう。そしてこの現象は、人間がまだサルであった時代に、ボス猿とその取り巻き連中だけがおいしい思いをして、他のサルたちはその余りものを平等に分け合っていた頃と何も変わらないのだろう。ウヨクもサヨクも、結局サル山から来てサル山に帰るのだ。

それにしても、どうして世の中には右と左しかないのだ。どうして人は極端に走りたがるのだ。

もっとも、一言で「右」と言っても、劣等感から群れを形成し、集団心理によって排他的で侵略的な抗争や戦争を繰り返すヤンキー系の「右」もいれば、単に自国の文化を大切にしたい友好的な「右」もいて、一言で「左」と言っても、自分たちエリートが愚民どもを救済するのだという使命感に燃えて、上から目線で共産主義や社会主義を押し付ける「左」もいれば、「大人はわかってくれない」「とにかく束縛されたくない」「何でもいいから世の中を変えることで自己主張したい」という自由原理主義者や無政府主義者の「左」もいる。そして、社会主義者の「所得は再分配して平等に分けるべきだ」という考え方と、自由原理主義者の「他人に迷惑さえかけないのであれば、自分で稼いだカネは自分で自由に使うべきだ」という考え方は、同じ左翼でありながらも対極に位置する。移民や難民政策にしても、受け入れた移民や難民を低賃金で強制労働させる共民党政権のやり方は、自由原理主義者から見れば奴隷制度や植民地政策と何ら変わりなく、「ウヨク」と評されることになる。

それに加えて、右か左かの世間の評価も極端だ。これは私が若い頃から変わっていない。「日米安保には、隣国からの攻撃を抑止する効果がそれなりにある」と発言すれば「ウヨク」となじられ、「いくらなんでも少しくらいは、隣国と仲良くした方が良い」と発言すれば「サヨク」となじられたものだ。評価する人の立ち位置によるところも大きいが、古典的な右翼と左翼の定義が通用しなくなっている証拠でもある。

面倒くさいので、私はこう考えることにしている。右翼も左翼も「他人に束縛されたくないので、自分の価値観で他人を束縛する」という基本理念において同じ人種である。違いがあるとすれば、右翼は共同体の外部に共通の敵を作り上げるために群れを形成しやすく、左翼は共同体内部の権力者を見境なしに敵視するため仲間割れをしやすいということだ。隣国人、異教徒、移民や難民が右翼の敵であり、両親、国や自治体のリーダー、企業の経営者が左翼の敵である。そういう意味において、教員は右からも左からも敵視される存在だ。

いずれにせよ、「現代日本はネトウヨとカメサヨが動かしている」と言われて久しい。あえて解説するまでもないが、ネトウヨとは右寄りの意見でネット社会を塗り潰そうとする「ネット右翼」のことであり、カメサヨとは、善良な一般市民や社会的弱者の仮面をかぶって、「市民の声」や「弱者の声」で世論を操作する「仮面左翼」のことである。

先日の報道番組でも、自分の意志で無人島に移住した家族が、「私たち家族は、買い物難民で教育難民で医療難民で介護難民なのに、この国は何にもしてくれない」と泣き叫ぶ様子が報道されていたが、これもカメサヨの政治活動の一環なのかもしれない。

どうして、みんなもっと真ん中で暮らせないのだろうか。ウヨクもサヨクも、理屈はどうあれ、自分たちの価値観や文化を無理やり他人に押し付けていることに変わりはないのだから。

閑話休題。

当然のことながら、この国民報酬平等法は、地方の医療現場を完全に崩壊させた。人権派弁護士の努力によって、平成39年当時ですでに医療訴訟の相場は死亡事故になると最低でも10億円という時代になっており、医師個人が医療訴訟に備えて加入する医師損害賠償責任保険の保険料が年間1000万円を超えていたのだ。この金額は、国民報酬平等法が規定する医師の年収をはるかに上回るものであった。

このため、廃業して自宅に引きこもる医師が激増した。生活保護を受けた方が、はるかに収入が多かったからである。もっとも、ある程度評判の高い医者の場合は、能力に応じて前述の会員制高級クリニックやブランド病院に引き抜かれ、「ノアの箱舟」で富裕層の上品な客層をターゲットに裕福な生活を送ったり、中国に渡ったり、闇社会でブラックビジネスに手を染めたりした。
作品名:スーパーカミオ患者様 作家名:真田信玄