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ブリュンヒルデの自己犠牲

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 世界の全てが俺の目に映る――! 我に勝機ありーーーー!
「今だ――! ここだああーーーー!」
 俺はウォーカーで左脚を蹴り右斜めに飛んだ!
同時に左手で剣を横に振り上げる!
ウォーカーが自身が疾走することで、盾を捨て全身で剣を振ることで、剣の切っ先のスピードが加速度的に倍加する!
うおおおおぉぉぉーーーー!
俺は跳んだまま、左手で思い切り剣を敵に叩き付けた!
ガシャアアアァァーーーン!
俺の剣が敵の盾を吹き飛ばす!
だが、これだけじゃ敵は倒せない! ウォーカーは仕留められない!
まだまだああーーーーっ!
俺は腕に、肩に、身体に力を込める! 俺の剣が弾き飛ばされないようにだ!
そして剣で相手を叩き潰すために、身体ごと浴びせる様に剣を一気に振り抜く!
ガキイイィィーーーーン!
スピードの乗った剣はカウンターとなり、ウォーカーの機体を喰らい尽くすかの様に鋼鉄の装甲を抉り取る!
手応えはあった!
鋼鉄の剣とウォーカーが激しくぶつかり、俺の腕が吹き飛ばされる程の衝撃が――、そして剣を振り抜き拳が疾る感触がまだ俺の手が残っている――。
俺の勝ちだ――!
ズシン! ドスウゥーーン!
そのまま敵のウォーカーが“くの字”に折れ曲がり、その場に崩れ落ちた――。
コックピットのある胸と肩の装甲が潰れ、駆動系モーターとその関節を完全に破壊する程の衝撃だ。パイロットも無事では済むまい。もはや立つことなど出来ないだろう――。
勝負は決まった――。とどめを刺す必要もない――。
 それよりも、明日香だ! 明日香と千鶴さんの目の前でこれだけ派手に敵のウォーカーを叩きのめしたのだ! 何かの巻き添えになっていたとしても不思議じゃない!
「明日香、無事か? 返事をしてくれ――?」
俺は夢中で叫ぶと、すぐに落ち着いた明日香の声が聞こえてきた。
『……火鷹、心配はいらない。わたしも姉さまも無事だよ……』
俺はウォーカーのモニターをズームさせ明日香を見た。千鶴さんに抱きかかえられているが、確かに明日香に何の怪我もない――。
『ありがとう、火鷹――。君のおかげで救われたよ。、どんなに言葉を尽くしても足りない位だ……。本当にありがとう……』
「本当に助かったのか……? 俺達……?」
『ああ、もう敵が来ることはないだろう。心配することは何もないよ――』
「しかし明日香、あれだけの奴等だ。また敵が来てもおかしくない!」
『フフフ……、今度こそ本当に助かったのだよ。火鷹、携帯の通信回線をオープンにしてごらん――』
 携帯を……? 一体、何だ……? 俺は明日香の指示に戸惑いながらも、携帯の通信モードを切り替えると、俺の耳に思いもしなかった声が聞こえて来た!
『もしもしーー!。火鷹っちだね? 全部聞こえていたよ! すごいよおお、敵を全部やっつけちゃうなんてえーー!』
「そ、その声は春菜か? どうしてここに?」
「もちろん助けに来たんだよおーー! わたし達が来たからにはもう安心だよ! もうちょっとだけ待っててね!』
 春菜が助けに来た? それに、わたし達って――?
 俺は急ぎモニター切り替え、明日香が指差す先、東京湾のレインボーブリッジを見ると、マシン・ウォーカーの姿が見えた! 2機、3機――、いやもっと来る!
 そのウォーカーに輝く白い鳳の紋章は間違いない! 白鳳学院のウォーカーだ!
『おーーい、火鷹! 聞こえるか?」
「一馬もか!」
『いやああーー、本当に心配したぜ! でもやったな! 後は俺達に任せておけ!』
「何が任せておけだよ……? 今頃、のこのこ来やがって――」
『悪りい、悪りい。俺らも連絡を聞いてすっ飛んで来たんだ! でも俺達もさっきまでどうなるかと思ってマジでビビってたんだよ! 春菜も泣きそうだったんだぜ!」
「カズマン、それは言っちゃダメ! わたしはもう泣かないのっ! 明日香っちを助けてあげるんだっからね!」
『おっと、そうだったな! でも春菜が一番にに飛び出して行ったのは本当だ! 明日香ちゃんとお前のことを心配してな――。だから本当にお前らが無事で良かったよ――』
 そうか……。ありがとうな、春菜、一馬――。
『火鷹くん、遅くなってごめんなさい』
 匂宮!、お前まで――!
『ごめんなさい、わたしじゃ足手まといにしかならないけど、じっとしていられなくて――』
「そんなことはねえさ……。来てくれてありがとう。本当に嬉しいよ……」
『お礼はわたしよりも、クラスのみんなに言って! みんな助けに来てくれたのよ!』
「えっ、あの連中がか?」
 俺はあまりの意外さに思わず声を上げると、通信回線に突然怒鳴り声が入ってきた。
『おい、葛城! 『あの連中』とは言ってくれるじゃねえか!』 
 その声は委員長の千早じゃないか! お前まで来てくれたのか!
『ふん、明日香が襲われてるんだ。助けに行くのは当然だろう。そもそもお前らよりも俺達の方が明日香とは付き合いが長いんだからな――』
「そうかあ……。でも俺からも礼を言わせてくれ。ありがとうな――』
『……まあ、明日香が無事なら良いさ……。しかしお前のことも見直したぜ。まさか推薦組のお前がってな――。クラスのみんなが驚いてるよ』
『おい、葛城! 見直したぜ!』『そうよ、葛城くん! 明日香をありがとう!』
『本当、たいしたモンだよ!』『葛城くん、わたしもお礼を言わせて!』
 そうか……、クラスのみんなも来てくれたんだ。ケンカもしたけど、悪口も言われてきたけど、俺達のために――。
「明日香、千鶴さん……、本当に俺達助かったんだな……」
『ああ、みんなが来てくれたのだ。もう大丈夫だよ――』 
『うっ……ううっ……、本当に良かったわ……』
 緊張の糸が切れたのだろう。千鶴さんは明日香に支えられ、肩を振わせ泣き出したのだった。
『姉さま、泣かないで下さい……。もう心配することはないのですから……』
『そうね、ごめんなさいね。でも、ほっとしたら涙が出てきて――。もう心配することはないのに……、こんなのおかしいわよね……』
 俺はそんな千鶴さんと明日香を見て、どうしてだろう……。俺も目から涙が溢れてきた……。
 助かったのに――。もう敵は来ないのに――。もう何も怖れる必要はないのに――。
 俺は――、俺は――、

 涙が止まらない――――――。

『何だい、火鷹……? もしかして、泣いているのかい……?』
 俺は明日香の問いに何も答えられなかった……。泣き声なんて出せやしない……。でも……、でも……、俺は――――。
『火鷹……、君は優しいよ……。ありがとう……。
 さあ、みんなの居る処へ帰ろう……』
「ああ、帰ろうな……。みんなの処へ……」
 明日香……、今行くよ……。
 俺は言葉にならない返事をして、ウォーカーを降りた……。
命を賭けた実戦での緊張感。そして明日香を助けなくてはならないという重圧から初めて解放された……。泣いたせいもあるのだろう。腕にも脚にも、もう力が入らない――。
「火鷹……。おかえり……」
「ああ……、ただいま……」
 だが、その時だった!