小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ブリュンヒルデの自己犠牲

INDEX|25ページ/59ページ|

次のページ前のページ
 

一馬、テメエ! お前だって何にもねえこと知ってるだろ! それに何がぎこちないだよ、具体的に言って見ろ! 童貞野郎のキサマに何が分かるんだ! 小一時間問い詰めてやる!
「しかし一馬レポーター、相手はあの“エースの明日香”ですよ? 若さだけで許されるものではないのでしょうか?」
「ですが火鷹くんは我々の友人でもあります。ここは彼を信じて生温かく見守るべきではないでしょうかーー?」
「しかし、しかしですよ、一馬レポーター! この学院ではパートナー同士のデキ婚もある位ですよっ! 二人の若さに任せたままで良いのでしょうか!?」
「うーん、それは心配です。火鷹くんの保健体育の成績は残念なものです。もしかすると二次元で覚えたことをリアルでプレイしてしまうかも――」
 バシンッ! バシンッ! 「いい加減にしろ! お前ら!」
 俺も流石に二人の言いたい放題に我慢できず、二人の頭を引っ叩いた。半ばツッコミの様になってしまったが、女の春菜を拳で殴る訳にはいかないので仕方ない。だが一馬、テメエは後で覚えてろよ!
「お前ら人のこと好き勝手に言いやがって! 大体そんなことねえのはお前らが一番知ってんだろ! 明日香から聞いているぞ! お前らいつも部屋の外で聞き耳立ててんだってな?」
「何を言う? 明日香ちゃんの守護精霊として当然のことだ」
「あはははーー、一応、明日香っちのことが心配だからねーー」
「だったら、人をからかうのもいい加減にしやがれ! こっちはいつも半病人で寝込んでるんだ!」
「まあ、そんな怒らないでよっ! 声もゴニョゴニョってぐらいにしか聞こえてないからさっ。それにマジメ話、女の子が男の部屋に一人はマズイし誤解されちゃうよ。特に明日香っちに変な噂が立っちゃ可愛そうでしょ? だからわたしやカオルンが付いて来てるんだよおーー」
「まあ、確かにそうだけどさ……。それはお前らに迷惑かけてすまないと思っているよ……」
「アハハハーー、だったらちょっと教えてよーー。火鷹っちってっさ、明日香っちのことどう思ってるの? 明日香っちって、美人だしスタイルも良いしさあーー、火鷹っちズギューンってしちゃうんじゃない? 正直に言っちゃいなよーー」
「そうだ、火鷹、正直に言え! 明日香ちゃんからすれば、道端に捨てられてた子犬を世話している様なものだろう。万に一つもお前に傾くなどありえん――。だがお前の気持ちは知っておきたい。そうすればお前をオモチャにするのが百倍楽しい。他人の不幸は何より飯が旨い。ましてやそれが親友なら尚更だ――」
 駄目だ、こいつら……。もう諦めて、さっさと訓練場に行こう――。明日香がいる処じゃ、流石にこいつらも変なことは言えんだろう。
「ほらほら、お前ら訓練場に行くぞ。遅れたら明日香がまた怒る」
「分かってるってーー。カズマン、行くよ!」
「おう! 今日こそ、明日香ちゃんに良いとこ見せるぜ」
 ふう、意外と簡単に話が切り替わったな……。こいつらも最近真面目に訓練する様になったのは助かるぜ。まあ今日は久々のウォーカーの実機訓練だしな。また相当のショックを身体に喰らうだろうけど、こいつらも実機訓練は何だかんだ言って楽しみなんだな。
 俺達はこれからの訓練のことを話しつつウォーカーの格納庫へ行くと――、あれ? 珍しいこともあるもんだ。明日香が誰かと揉めてる――。この学院で明日香に口ごたえするヤツなんかいないと思ってたのにな――。しかも相手は同じクラスのエリート連中じゃねえか? あいつら明日香に頭が上がらないって思ってたんだが、一体どうしたんだ?
「あっ、火鷹くん――?」 俺達に気付いた匂宮が気まずそうな顔をしてこっちへ来た。何だ? 喧嘩でもしてんのか?
「あの……、火鷹くん……。一馬くんも春菜もちょっとこっちへ来て――」
 そう言って匂宮は俺達を格納庫の隅へ押しやった。
「匂宮? こっちへって何だよ? 明日香が揉めてるけど、どうした? ケンカか――?」
「ごめんなさい、ケンカじゃないんだけど――。ちょっとの間みんなはこっちで待ってて――」
「ああーーん? 待ってって、薫ちゃん、どうゆうことだよ? あいつ委員長の千早じゃねえか? あいつらそろいも揃って明日香ちゃんに何をしようってんだよーー?」
 匂宮の腑に落ちない説明に不穏な空気を嗅ぎ取ったのか、一馬は少々ドスの利きかせた声で聞いたのだった。いつも冗談ばかりの一馬とは違う険しい顔だ。だけど匂宮もどうしたんだ? 明日香が何人もの男達に囲まれている状況で、ただ待ってろなんて――?
「ねえ、ねえ、カオルン? 明日香っちを助けなくて良いの――?」
「それがちょっと……。とにかくケンカじゃないから、みんなはお願いだからここで――」
 そんな匂宮の声を遮る様に、委員長、千早の声が格納庫の中で大きく響いた。
「明日香っ! どうして俺達の頼みを聞いてくれないっ! 俺達は本気なんだっ!」
「……すまないが前から言っているはずだ。わたしが他人の指南をすることは出来ないとな――」
「だったら、どうして落ちこぼれの奴等なんか教えている! 俺達の頼みは断っておいて?」
 何言ってるんだ、千早のヤツ? 落ちこぼれって俺達のことか? それに指南て何のことだ?
「その事とお前達の指南を断ったことは別の問題だ。すまないと思うが、諦めて欲しい」
「聞いてくれ、明日香! この頼みはここにいる俺達だけじゃない! クラス全員の頼みでもある。同い年で近衛隊に入ったお前の事を、クラスの連中誰もが尊敬もしているし誇りにも思っている! それに今まで一緒に厳しい訓練を耐えてきた仲間だと思っている――。なのに何で、俺達の頼み一つ聞いてくれないんだ!」
「わたしもお前の気持ちはよく分かっているつもりだ――。中等部から共にこの学院で過ごしてきた仲間だ。今まで互いに助け、そして助けてもらい今のわたしがある――。わたしが近衛に入れたのも中等部時代の実績があったからこそだ。その事は決して忘れてはいない」
「だったら、どうしてだ? 単にウォーカーの指導をしてくれってだけじゃないか? 俺達だって目標があって、夢があって一緒に頑張ってきたんだ! そんな俺達の頼みをなぜ断る?」
「――無論、引き受けられるなら引き受けている。だが今のわたしは近衛隊の隊員だ。近衛の者がその技術を容易に見せられるものはでないことは分かって貰えると思っていたが――?」
「ああ、分かっていたさ! 俺達だってガキじゃない! お前が近衛隊に入れたのがその神眼の能力だってことも、その能力が軍の機密になるってくらいな! だから俺達だって、こんなことは言うつもりはなかった。――お前があの落ちこぼれの連中の指導を始めるまではな――! 昨日今日ウォーカーに乗り始めたばかりのあいつらに俺達の技術が劣るとは思えない! どうして俺達を差し置いて、あんな連中を教える?」
 ……何だよ、これ……? 明日香が責められているのは俺達のせいだってのか――?
 今まで俺達を制していた匂宮は何も言えず、俺達から目を逸らしていた。匂宮が隠れていろって言っていたのは、こんな話を俺達に聞かせたくなかったに違いない――。