Bhikkhugatika
唯我独尊我を笑う
憧れのルンビニー園にやって来た。辺りは水田と灌木の繁った野原があるばかり。牛たちが畦道を散歩していて、少女が牛を撫でながら共に歩いていった。マガダの昔そのまま、のどかなものだ。
溜め池のほとりに石柱が立っている。昔は吼える獅子が乗っていたことだろうが、今は失われている。アショーカ王が立てたものだが、埋まっていたのを、フューラーが玄奘の大唐西域記を頼りに掘り返して見つけ、立て直したのだ。碑文には、ブッダ・シャカムニがここで生まれたと書かれている。
神話では彼は生まれてすぐに、自分は宇宙でただひとり尊い、と言ったという。のちの覚者とはいえ、赤ん坊であってみれば、こんな月並みなことしか言えなかったに相違ない。聖仙が言おうが言うまいが、誰もが唯一無二である。過去の人々の行為と意思を受け継いで尊いこと果てしがない。
遊学に旅立つ私を見送ってくれた君の姿を、私は今思い出している。昔君と法隆寺に行ったことがあったが、共に聖徳太子の徳風を偲んだものだったね。皆々の為に役立って、男子の本懐を遂げようと互いに誓ったのは、あのときであったね。
君は優しいから笑ってくれるだろう、もう打ち明けよう。私は少年の頃、自らの才能と、将来成し遂げるであろう偉業を、アショーカ王と聖徳太子とに比していたのだ。それが未だに世間から離れてうだつの上がらぬ一書生なのだから、我を笑うことしばしばだ。
いつか君は、私が虚飾やこけおどしを嫌うために、世渡りが下手だと、非難するでも誉めるでもなく言ったものだね。今では君のあの言葉が私の矜持となっているのを、君は知るまい。
ここでの調査を終えたら帰るから、互いの探究の成果を共有しよう。唯我独尊の私と君のこと、力を合わせれば、この情熱を形にすることも、必ずできるのだからね。
作品名:Bhikkhugatika 作家名:RamaneyyaAsu