怪物狩り 第2章(1)
我がチームは、雑な仕事、型にはまった仕事をしない。
確かに、ターゲットを社会的に抹殺するだけであれば、女を使って痴漢事件でもでっち上げるだけで十分だ。その場合、張り込み等をしてターゲットの情報を得る必要などほとんどない。実際、そんなことをマニュアル化して繰り返し、荒稼ぎしているチームもある。
我がチームが、雑な仕事をしない理由、それにはリスクという面がある。雑な仕事は、足が付きやすい。例えば、痴漢でっち上げの場合、被害者役の女という自分達に繋がり得る足掛かりを警察に差し出す必要が出る。これは、冤罪が立証されてしまった場合、非常に危険である。同じ女を毎回利用すれば女と自分達の繋がりが強くなるし、また、警察に不審に思われるリスクが高くなる。だからといって、毎回別の女を調達して利用するとすれば、大量の手掛かりを撒き散らすことになり、この場合もリスクが高くなる。さらに言えば、一定の型にはまったやり方を繰り返す場合、成功がその型に対する自信を生み、それは過信となり、またこだわりを形成する。そうなれば、必ず不測の事態への反応が遅れる。「狩り」において、不測の事態への反応の遅れは命取りだ。
もっとも、雑な仕事をしない理由はそれだけではない。
我がチームのメンバーは、それぞれ異なる思想を持つが、「狩り」を単なる金もうけの手段とは考えていないのである。
異なる「狩り」観を持つメンバーが集まっているため、衝突が起きることもあるが、アイデアは広がる。
作品名:怪物狩り 第2章(1) 作家名:宇都 治