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上社(兄)の758革命

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 すぐに東京証券取引所は、バブル崩壊直後のような閑散とした有り様となった……。書類が散らばっており、バブル崩壊直後と違う点は、元人間の粉末があることぐらいだろう……。

 上社たちCROSSが、この東京証券取引所を占拠するのは、自由な株取引をしたいからではなく、経済を「人質」にするからだった。たとえば、ここのコンピューターを使って、めちゃくちゃな取引をしまくれば、日本経済は衰退し、この世界中からの信頼が失せる。少なくとも、笑い話では済まない事態が起こる。ちなみに、上社の分隊が東京駅でしたことは、交通を「人質」にすることだった。
 人質というシステムをうまく利用するには、複数の人質を別々の場所に確保しておくということが重要だ。すべての場所で同時に人質救出作戦を開始したとしても、必ずどこかの場所で、遅れやミスが発生するに決まっている。よほど運が悪い人質が死ぬことになるが、「運が悪かった」という言い訳は、なかなか使うことができないので、人質を救出する側は慎重にならざるをえない。


 それはさておき、上社たちは1人の戦死者も出すことなく、東京証券取引所を占拠することに成功した。円形のガラスで囲まれた取引所にいるのは上社たちだけで、ヒマつぶしに、コンピューターをいじったり、物を破壊したり、鐘を狙い撃ちしたりしていた……。
 復旧にわざと時間がかかるようにしているのだ。いろいろなシステムが混乱している状態になっていたほうが、CROSSの占領統治への移行がスムーズに進むためだ。
『やあ!!!』
『クソッタレ・・・4649円』
『⊂(^∀^)⊃』
『Kiss My Ass!!!』
『取引停止中なう』
オレンジ色のいろいろなデジタル文字が、普段なら銘柄と株価が流れているテロップ画面を流れていく……。そして、その流れていく文字を、うまく狙い撃ちして遊んでいる……。

『こちら、警視庁担当の小隊だ!!! 警備を固められてしまい、手が出せない状況だ!!! もし手が空いているなら、手伝ってくれ!!! 我々は今、法務省に立てこもって、機会をうかがっているところだ!!!』

突然、応援を要請する通信が入った。通信音声には激しい銃声も入っており、彼らが苦戦しているということはすぐにわかった。上社は、ここで遊んでいるのではなく、仲間を助けたくなった。しかし、この連中が、上社が応援に向かう許可を出してくれるかどうかはわからなかった。だが、
「上社、ここは我々だけでいいから、警視庁担当の連中のところに行ってやってくれ」
そんな上社の気持ちを察した分隊長が勧めてくれた。そのセリフに、上社は安堵した。
「ありがとうございます!」
「礼を言うのはこっちのほうだ! 気をつけていけよ!」
分隊長のお礼を聞いた後、上社はその場から走り去っていった。
「さあ、おまえら!!! 遊びはそれぐらいにして、バリケードを築くぞ!!!」
分隊長は上社を見送ると、遊んでいる隊員たちに向かってそう叫んだ。
 隊員たちは、取引所の鐘を乱暴に取り外すと、それをバリケードの1つに加えた……。