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上社(兄)の758革命

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第4章 打破



『先ほどの情報は誤報です』

 取引所から外へ出たとき、先ほどのJアラートは誤報でしたというアナウンスとチャイムが聞こえてきた。気の利く隊員が、人々をさらに混乱させるために、嘘の誤報アナウンスを流したのだった……。これから警視庁へ応援に向かう上社にとっては、ありがたいことであった。
 運がいいことに、東京証券取引所の出入口に突っこませたパトカーがまだ動いたので、それで警視庁へ向かうことにした。元々そう遠くないので、すぐに到着できるだろう。

 しかし、桜田門の警視庁舎までの道路は大混乱に陥っていた……。先ほどの東京駅から東京証券取引所までとは大違いである。
 その大混乱に巻きこまれてしまった上社は、車を停めざるをえなかった。前後左右には、他の車が詰まっている。まるで、自動車運搬船への入船を待っている自動車の群れだ。
 まず、大渋滞が起きている点だ。どの交差点も、名古屋の八事の交差点みたいな感じに陥っている。けたたましいトラクションが次々に上がる。この大渋滞の原因は、758革命による大混乱ということだけでなく、CROSSが東京都内のあちこちで検問をやっているということと、車が乗り捨てされているということなどがあるだろう。
 さらに、尋常ではないほどの大勢の人々が、何が起きているのかもどちらに避難すればいいのかもわからずに、行くあても無く街を徘徊している。そのため、歩道も大渋滞の有り様で、路肩を歩き始める人々も大勢いる。
「まるで東日本大震災だな」
上社は車内でそう呟くと、Iphoneのラジオを聴くことにした。上社が乗っているのはパトカーなので、カーラジオなど無かったのだ。
『ザッーーー』
『ザッーーー』
『ザッーーー』
だが、どのラジオも聴くことができなかった。CROSSがラジオ局を制圧したからか、ラジオ局が閉鎖されたかのどちらかだろう。
 そこで上社は、警察官を装い、警察無線で最新情報を得ようとした。しかし、
『今すぐ応援をよこしてくれ!!!』
『我々だけでは消火できない!!! さっきも言ったが、消防車を早く回せ!!!』
『頭から血を流している少年を保護した!!! 救急車を寄越してくれ!!!』
苦戦している警察官からの泣き言ばかりで、得られた有意義な情報は、758革命がうまくいっているということぐらいだ。

「すみません!!!」

 そのとき車外から、上社を呼ぶ声が、パトカーの窓を叩く音とともに聞こえてきた。
 上社がそちらに視線を移してみると、スーツ姿の20代後半の男がいた。その男は、上社の視線が自分のほうを向くと、窓を叩くのをやめ、
「いったい何が起きているんですか!?」
必死の口調で尋ねてきた。警察官に変装しているわけではないのだから、上社が警察官でないことぐらいはすぐにわかるはずなのだが、よほど慌てているのだろう……。
「悪いけど、ぼくは警官じゃないんだ」
気まずそうに彼がそう言ってから、その男は彼が警察官でないことに気づいたらしい。男は何も言わずに、その場からどこかへ走り去っていった。