上社(兄)の758革命
人ゴミを乱暴にどかしながら、東京駅から出てみると、車の乗り入れ所のところに、パトカー2台と救急車1台が到着してきたところだった。救急隊員たちは気づかなかったが、パトカーから降りた警官たちは、CROSSの制服を着た上社の存在に気づいた。
「武器を捨てろ!!!」
伸縮式の警棒を構えている警官が、上社に近づきながら言った。
……もちろん、上社は、すぐにその警官をレーザー弾で粉末にしてやった。持ち主を失った警棒が地面に落ちた次の瞬間、他の警官3人は警棒を捨て、拳銃を素早く構える。
パンパーン!!!
警官の1人が空に向けて威嚇射撃した。しかし、上社はそれにひるむことなく、その警官を粉末にし、空へ舞い上がらせてやった。残りの2人は、飛び込むようにパトカーの陰に隠れた。
すると上社は、コートの内ポケットから、野球ボールのような物を取り出し、それを少し操作をした後、パトカーに放り投げた……。弧を描いて飛んでいき、パトカーの車体の下を転がるそれは、CROSSが異次元から調達した『ウラングレネード』であった……。簡単に言うと、手投げ式の携帯核兵器だ……。
ドカーーーン!!!
ありきたりな爆発音とともにパトカーは、爆風によって10メートルぐらい浮き上がり、近くで客待ちしていたタクシーの上に落ちて爆発した。車内で仮眠中だった運ちゃんは、かわいそうなことに、仮眠から永眠へとなった……。
パトカーの陰に隠れていた2人の警官はというと、強烈な爆風により、手足がちぎれ飛び、グチャグチャになった臓器があちこちに飛び散っていく……。臓器の一部が顔面にクリーンヒットしたOLは、けたたましい悲鳴を発しながら、どこかに走り去る……。
元々パニック状態だったが、その爆発がきっかけで、東京駅の駅前はさらなるパニックに陥った……。ある人は、焦って道路に飛び出し、同じく焦っているミニバンに反対側車線までブッ飛ばされた……。またある人は、逃げ惑う人々に何度も踏まれて複雑骨折をし、その場でもう動かなくなった……。タクシーやバスの乗り場には、逃げようとする人々が殺到しており、罵声をあげながら先を争っていた……。運ちゃんのほうも焦っているので、ドアを開けたまま、何人か引きずって走行していた……。
そんな大パニックなど放置しておくことにした上社は、ガラスが割れるだけですんでいるもう1台のパトカーに乗りこんだ。そして、東京駅から東京証券取引所に、サイレンを鳴らしながら猛スピードで向かう。
彼の両親は、愛知名物の交通事故で死亡しているので、猛スピードで市街地を走るなんてことは、本当はしたくなかった……。
しかし、もしこの革命が失敗に終われば、自分も死刑だ。また、仲間を助けたいという強い気持ちがあった。不安と優しさが、彼を奮闘させていたのだ……。
『東京都庁にテロリストが侵入した模様! 付近にいる者は急行せよ!』
『こちらは防衛省だ!!! 今すぐ応援をよこしてくれ!!! ゲートを爆破されて、このままでは、建物内への侵入を食い止められない!!!』
『地下鉄の電車数本と連絡が取れなくなっているんだが、そちらに情報は入ってないか!?』
警察無線も、さっきの駅前と同じくパニック状態だった……。上社は、あくびしながら、愉快な無線通信をラジオのように聞き流していたが、
『東京証券取引所から110番通報がありました! 付近にいる者はいますか?』
それを聞いた上社は、素早く反応し、無線機のマイクを手に取った。そして、自分のパトカーの割当番号を確認し、
「こちら1467号車です。ただちに東京証券取引所へ急行します」
そう返事をした。できるだけ、他の警察官がやって来ないようにするためである。
『了解しました』
難なくうまくいったようで、上社はニヤリとした……。その後も警察無線では、他にも応援を求める声が上がり続けていたが、応援に向かう余裕のある者はいないようであった……。
作品名:上社(兄)の758革命 作家名:やまさん