参時の冒険譚
五 砂漠に生きる者
29
目を開けると,ライラのテントの中にいた。
「痛い?」
「大丈夫」
起き上がると,テントの外に出た。そこは,いつも通りの集落にもう戻っていた。
「昨日だよね? 闘ったのって」
「すごい回復力でしょ。この集落全体が」
僕は,空を見上げた。
その時,アフマド村長が近づいてきた。
「君はやっぱりスパイだったんだね?」
「え?」
「迷彩服を着て,私の仲間と闘っていた」
「いや,それは…」
違うと言いかけると,村長は首を振った。
「いや,別にいいんだ。君がいることでこの村は楽しかったよ。それに,もう私達は負けたんだ」
「エジプト国軍に全然打撃を与えられなかった。いよいよここは狙われるだろう」
スパイでないことを説明しようと思ったが,それは別に村長のためではないと考えた。
「しかし,抵抗はする。砂漠は渡さない」
目の色を変えて,アフマドは言い切った。
30
その時だった。砂漠の奥の方から銃声と共に大軍がやってきた。マンドゥーハが先頭にいる。エジプト国軍が来たんだ!
「宣戦布告をする!」
マンドゥーハが大きな声でそう言った。しかし,その後すぐにぐらっと揺れたかと思うと,胸を赤くして倒れた。僕は即座に振り返った。
アフマドが撃ったんだ!
アフマドは皺を寄せてニヤッと笑うと国軍の銃弾を何百も浴びて,倒れた。
それを引き金に,双方の撃ち合いが始まった。僕も銃弾を食らった…はずだった。僕の体は,だんだん薄くなりかけている。
31
赤い血が黄土色の砂漠に沈み込んでいく。砂漠はどれだけの血を吸収できるのだろう。
ライラが倒れた。銃弾を浴びたんだ。僕はライラに駆け寄った。
「ライラ! ライラ死なないでくれ! 僕は君が…」
ライラは,微笑んだ。
僕は何かを忘れていたかのように,マンドゥーハのところへ駆け寄った。
「マンドゥーハ! 起き上がってくれよ!」
そして,アフマドのところへ…
「どうしてなんだ! どうして…」
涙が止まらなかった。しかし,僕は薄くなっていく。集落はもう取り押さえられていた。僕はどうしていいかも分からず,現実へ戻った。
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目を開けると,ライラのテントの中にいた。
「痛い?」
「大丈夫」
起き上がると,テントの外に出た。そこは,いつも通りの集落にもう戻っていた。
「昨日だよね? 闘ったのって」
「すごい回復力でしょ。この集落全体が」
僕は,空を見上げた。
その時,アフマド村長が近づいてきた。
「君はやっぱりスパイだったんだね?」
「え?」
「迷彩服を着て,私の仲間と闘っていた」
「いや,それは…」
違うと言いかけると,村長は首を振った。
「いや,別にいいんだ。君がいることでこの村は楽しかったよ。それに,もう私達は負けたんだ」
「エジプト国軍に全然打撃を与えられなかった。いよいよここは狙われるだろう」
スパイでないことを説明しようと思ったが,それは別に村長のためではないと考えた。
「しかし,抵抗はする。砂漠は渡さない」
目の色を変えて,アフマドは言い切った。
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その時だった。砂漠の奥の方から銃声と共に大軍がやってきた。マンドゥーハが先頭にいる。エジプト国軍が来たんだ!
「宣戦布告をする!」
マンドゥーハが大きな声でそう言った。しかし,その後すぐにぐらっと揺れたかと思うと,胸を赤くして倒れた。僕は即座に振り返った。
アフマドが撃ったんだ!
アフマドは皺を寄せてニヤッと笑うと国軍の銃弾を何百も浴びて,倒れた。
それを引き金に,双方の撃ち合いが始まった。僕も銃弾を食らった…はずだった。僕の体は,だんだん薄くなりかけている。
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赤い血が黄土色の砂漠に沈み込んでいく。砂漠はどれだけの血を吸収できるのだろう。
ライラが倒れた。銃弾を浴びたんだ。僕はライラに駆け寄った。
「ライラ! ライラ死なないでくれ! 僕は君が…」
ライラは,微笑んだ。
僕は何かを忘れていたかのように,マンドゥーハのところへ駆け寄った。
「マンドゥーハ! 起き上がってくれよ!」
そして,アフマドのところへ…
「どうしてなんだ! どうして…」
涙が止まらなかった。しかし,僕は薄くなっていく。集落はもう取り押さえられていた。僕はどうしていいかも分からず,現実へ戻った。