参時の冒険譚
四 ナイル川の闘い
24
瞬きをしたら,僕はエジプト国軍側にいた。
「大尉! どこかの集落が,ここを襲いにくるようです」
一人の兵士がかけてきて,そう言った。
「マンドゥーハ軍曹…」
「ハッ 鎮圧してまいります」
マンドゥーハが,僕に目で合図をした。
「一同,すぐに準備を!」
僕は,自動小銃と腰に挟むペーパーナイフを渡された。
「行こうぜ,戦友」
マンドゥーハはそう言うと,命令を出した。
僕は,視界が白くなっていった。
25
気がつくと,僕は,病院の個室で寝ていた。まるで,死ぬ直前の人間のような扱いだ。僕は旅をしているだけなのに…。
それとも,これは死ぬ前に見る夢なのだろうか? いや,あれは夢では絶対にない。
中学の友達がお見舞いに来ていた。ああ,彼らは可哀想なのかもしれない。あんなに充実したことがあるだろうか。僕は自ら目を閉じた。
26
気がつくと,集落の奇襲メンバーは,高層ビルがすぐに見えるところまで来ていた。ナイル川も目の前に見える。
「伏せろ!」
急にアフマドが叫んだ。続けて,銃声が連続して聞こえた。周りの仲間が何人か倒れる。
「クソっ バレてたか」
それは,二〇時にナイル川を挟んで始まった。西側に奇襲軍,東側に国軍と分かれて。
小銃を構えた状態で,僕は伏せた。隣にはライラがいる。レバーをセミオートに合わせると,引き金を慎重に引いていった。
一人,二人…。自分が狙った相手が崩れていく。
―――砂漠に寝そべっていたとき,ライラに肩を揺さぶられたとき,あの時に,僕はライラに恋をした。
銃弾を入れ替える。次の標的に,僕は狙いを合わせた。
27
自動小銃の引き金を引いている。気がついたら,僕は東側で闘っていた。今,レバーはフルオートになっている。
エジプトを変えるための犠牲。隣で銃を撃っているマンドゥーハはそう言った。僕は何かのための犠牲になれるだろうか? 現実の世界では難しいのだろう。
しかし,僕は今闘っている。エジプトを変えるために,エジプトの文化を守るために。
「戦友…」
その響きが,僕は気に入っている。
「動くぞ!」
マンドゥーハがナイル川にかかる橋に向かい始めた。僕たちもついて行く。
ナイル川は,波が少し荒かった。
僕たちは橋を渡った。
28
「待て」
アフマドが指示をした。
「銃声が止まった…」
「・・・」
「どうすれば?」
「相手は西側に渡ってくるだろう。落ち着け。受けてたとう!」
人間同士の醜い闘いが始まった。至近距離では銃を構えても勝ち目がない。
ライラは,国軍と闘っていた。だが日頃から鍛えている国軍にライラが勝てるはずがない! 僕は,助けに行こうとした。しかしその時,誰かが目の前に立ちふさがった。
影だった。
僕は影に殴りかかろうとした。しかし影は,素早く身をかわす。お互いに,攻めようとしては避けられ,を繰り返した。
影には,無駄な動きがなかった。掴みかかってくると,ニヤッと笑いながら投げようとする。しかし,僕は対等に闘い続けた。迷彩服を着たそいつを押し倒したと思えば,一瞬で入れ替わって,僕は迷彩服を着ながら押し倒されていた。その後,押さえつけられたかと思えば,こっちが押さえつけていた。僕は戸惑い,影は僕の腕をまた抜けてくる。
どれくらい過ぎただろうか,二人とも動きが鈍くなってきた頃,近くに転がった手榴弾が爆発し,二人爆風に飛ばされた。
地面に着く前に横を見ると,影は消えていた。ナイル川の流れる音が聞こえた。
僕は,意識を失った。
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瞬きをしたら,僕はエジプト国軍側にいた。
「大尉! どこかの集落が,ここを襲いにくるようです」
一人の兵士がかけてきて,そう言った。
「マンドゥーハ軍曹…」
「ハッ 鎮圧してまいります」
マンドゥーハが,僕に目で合図をした。
「一同,すぐに準備を!」
僕は,自動小銃と腰に挟むペーパーナイフを渡された。
「行こうぜ,戦友」
マンドゥーハはそう言うと,命令を出した。
僕は,視界が白くなっていった。
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気がつくと,僕は,病院の個室で寝ていた。まるで,死ぬ直前の人間のような扱いだ。僕は旅をしているだけなのに…。
それとも,これは死ぬ前に見る夢なのだろうか? いや,あれは夢では絶対にない。
中学の友達がお見舞いに来ていた。ああ,彼らは可哀想なのかもしれない。あんなに充実したことがあるだろうか。僕は自ら目を閉じた。
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気がつくと,集落の奇襲メンバーは,高層ビルがすぐに見えるところまで来ていた。ナイル川も目の前に見える。
「伏せろ!」
急にアフマドが叫んだ。続けて,銃声が連続して聞こえた。周りの仲間が何人か倒れる。
「クソっ バレてたか」
それは,二〇時にナイル川を挟んで始まった。西側に奇襲軍,東側に国軍と分かれて。
小銃を構えた状態で,僕は伏せた。隣にはライラがいる。レバーをセミオートに合わせると,引き金を慎重に引いていった。
一人,二人…。自分が狙った相手が崩れていく。
―――砂漠に寝そべっていたとき,ライラに肩を揺さぶられたとき,あの時に,僕はライラに恋をした。
銃弾を入れ替える。次の標的に,僕は狙いを合わせた。
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自動小銃の引き金を引いている。気がついたら,僕は東側で闘っていた。今,レバーはフルオートになっている。
エジプトを変えるための犠牲。隣で銃を撃っているマンドゥーハはそう言った。僕は何かのための犠牲になれるだろうか? 現実の世界では難しいのだろう。
しかし,僕は今闘っている。エジプトを変えるために,エジプトの文化を守るために。
「戦友…」
その響きが,僕は気に入っている。
「動くぞ!」
マンドゥーハがナイル川にかかる橋に向かい始めた。僕たちもついて行く。
ナイル川は,波が少し荒かった。
僕たちは橋を渡った。
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「待て」
アフマドが指示をした。
「銃声が止まった…」
「・・・」
「どうすれば?」
「相手は西側に渡ってくるだろう。落ち着け。受けてたとう!」
人間同士の醜い闘いが始まった。至近距離では銃を構えても勝ち目がない。
ライラは,国軍と闘っていた。だが日頃から鍛えている国軍にライラが勝てるはずがない! 僕は,助けに行こうとした。しかしその時,誰かが目の前に立ちふさがった。
影だった。
僕は影に殴りかかろうとした。しかし影は,素早く身をかわす。お互いに,攻めようとしては避けられ,を繰り返した。
影には,無駄な動きがなかった。掴みかかってくると,ニヤッと笑いながら投げようとする。しかし,僕は対等に闘い続けた。迷彩服を着たそいつを押し倒したと思えば,一瞬で入れ替わって,僕は迷彩服を着ながら押し倒されていた。その後,押さえつけられたかと思えば,こっちが押さえつけていた。僕は戸惑い,影は僕の腕をまた抜けてくる。
どれくらい過ぎただろうか,二人とも動きが鈍くなってきた頃,近くに転がった手榴弾が爆発し,二人爆風に飛ばされた。
地面に着く前に横を見ると,影は消えていた。ナイル川の流れる音が聞こえた。
僕は,意識を失った。