参時の冒険譚
車に揺られながら,僕は影について考えた。
あの〝影〟は,意志を持っている。銃の使い方を教えてもらったり,自分から闘いに参加したいと言っていたり…。自分なのに,何者なのか分からず,僕にとっては少し怖い存在になった。
車窓から,全国でも有名な子供専門病院が見えてきた。
車内に流れているJポップのリズムに眠くなり,視界が白くなっていった。
23
僕は,どの世界の人間なんだろう? あの,学校に行く日々は,僕の中ではつまらない一つの世界へと化していた。
「コージ,いよいよだね」
「文化のために闘おう」
その集落の幼児と世話役を除いたほぼ全員が,今日カイロへ闘いに向かう。僕は,身支度をしていた。
「今何時だ?」
アフマドの質問に誰かが答える。
「そろそろ十九時になります」
「よし,皆! 出発しよう」
カーンカーンカーン
礼拝ではなく鐘が鳴らされた。自分達の勝利というものを信じて。