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【創作】汝は人狼なりや?【NL】

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川沿いの小さな小屋に戻ったディルは、道具をしまうと、ベッドに腰掛ける。
眠る気にはなれなかった。いつもの夢を見るだけだから。
代わりに、アスターとローズのことを考える。

アスターはいい奴だ。少し強引なところもあるが、踏み込んではいけない領域を心得ている。
正直、彼が魔道士で呪術に関して研究していると聞き、こちらから近づいた面もある。そんな下心が恥ずかしくなるくらい、親切で、思いやりがあった。
いずれローズと結婚するのかもしれない。そうなればいいと思う。
二人が幸せになるのを見届けたら、この村を出よう。そう決めていた。
一つところに長居してはいけない。いつ正体がバレるかもしれないから。

俺は、不幸でなければならないから。



ディルは、いつの間にか眠っていた。
浅い眠りの中、あの時の魔道士が、黄色い歯を剥き出して叫んでいる。

『お前ら全員、地獄に叩き落としてやる!!』

彼の足下には、アスターとローズが倒れていた。体が徐々に歪み、口が裂け、鋭い牙が覗き、剛毛に覆われた、四つ足の獣へと・・・・・・


「やめろ!!」

自分の叫び声で、ディルは飛び起きた。目から止めどなく涙が溢れ、頬を濡らしていく。

「やめろ・・・・・・やめてくれ・・・・・・俺が不幸になるから・・・・・・俺が・・・・・・不幸に・・・・・・皆の分まで・・・・・・」

掠れた声で繰り返し、両手で顔を覆った。




午後、ディルは研ぐ為に預かっていた品を籠に入れ、客先へ届けに行く。
籠を背負い、背を丸めて道の端を歩いた。目立たぬよう、見つからぬよう。
ふと視線を向ければ、通りの向こうにアスターとローズが連れ立って歩いている。ディルは慌てて路地に隠れると、二人の姿が見えなくなるまで息を潜めていた。

あの二人は、いずれ結婚するのだろう。

その考えは、胸に微かな痛みを覚えさせたが、ディルはすぐに振り払う。
あの二人は、幸せにならなければいけない。俺の分まで。


なじみの客を回り、研ぎ終わった品を渡して、新たに研ぐ品を渡される。新参者のディルにそこそこの客がついたのは、ひとえにローズが口を利いてくれたからだ。
領主の娘から紹介されれば、皆、無碍には扱わない。一度引き受ければ、腕の良さが評判となり、食うに困らない程度の稼ぎになった。
ローズが自分を気に掛けてくれるのは、アスターの友人だからかなと、ディルは考える。ローズと引き合わせてくれたのはアスターだし、市場のことを教えてくれたのもアスターだ。自分はアスターに頼りっぱなしだなと、ディルは申し訳なく思う。

二人の結婚祝いは、何がいいかな。

気の早いことを考えながら、ディルはのそのそと客先を回っていった。