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【創作】汝は人狼なりや?【NL】

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翌朝。
朝食もそこそこに、三人は村の広場にやってくる。
既に村人達は集められ、制服姿の警官達がそこかしこに配置されていた。
ディルは、両手を体の前で縛られたローズを支えつつ、周囲を見回す。人々の悪意ある視線から守るように、さりげなく体をずらした。

・・・・・・余計なことは考えるな。

朝からローズの顔が見れない。昨日の真意を確かめたかったけれど、からかっただけだと言われるのが怖かった。

・・・・・・気が高ぶって、心にもないことを言ったのかもしれない。不安に耐えきれなくて、誰かに縋りたかっただけなのかも。

そっと縛られた両手に目をやる。白い肌に荒縄が痛々しかったが、何もせずに現れたら村人がどういう行動に出るか分からないというアスターの指示だった。すぐ解けるようにはしてあるが、痕が残ったりしないだろうかと心配になる。
アスターは、今日もローブを着込んで、沢山のアクセサリーを身につけていた。「はったりも重要だ」と笑う友人に任せておけばいいのだと、ディルは自分に言い聞かせる。

余計な手出しはしないで、事態を見守っていればいい。

地面に何やら模様を描いていたアスターが、やっと体を起こした。ざわつく人々に一礼し、領主夫婦の姿を見つけて、力づけるように頷く。
アスターは、体ごと周囲を見回してから、さっと腕を上げた。
静まり返った広場に、凛とした声が響く。

「皆さん、おはようございます。そして、さようなら」

にやりと笑って腕を振りおろした瞬間、地面に描かれた文様が青白い輝きを放ち、得体の知れない無数の黒い固まりが吹き出した。
事態を飲み込めない村人達に、固まりの一つが飛びかかりる。声を上げる間もなく五体を引き裂かれ、血飛沫が周囲の人々を真紅に染め上げた。

「き・・・・・・きゃああああああああああああああ!!!」

誰かの悲鳴を皮切りに、場は騒然となる。我先に逃げ出す人々に、黒い固まり達が素早く襲いかかっていった。
あちこちで上がる悲鳴、巻き散らされる鮮血、警官が発砲する音、更なる混乱。

「あははははははは!! あはははははははははは!!」

逃げ惑う人々の姿に、アスターの笑い声が降り注いだ。

「命日なんですよ皆さん!! 今日は彼女の命日なんだ!! あなた方が手に掛けた、呪われた少女の!!」

ディルは、周囲の惨劇を呆然と眺めていたが、ローズの悲鳴で我に返る。

「きゃああああ!!」
「ローズ!!」

飛びかかる固まりを蹴り飛ばし、ローズの体を抱き寄せた。地面で蠢く異形から目を離さずに、彼女の戒めを解く。

「逃げて! 早く!」
「ディル、貴方も!」

だが、周囲は既に黒い影が立ち塞がっており、じりじりと距離を詰められていた。

・・・・・・駄目だ! 彼女だけでも!

ディルはローズを抱き締め、耳元に口を寄せる。

「俺が逃げ道を作るから、君は逃げろ」
「でも!」
「今度は、俺が守る番だ」

ローズを背中に隠すと、ディルは深く息を吸ってから、自分の中に巣くう呪いへと意識を集中させた。

・・・・・・出てこい! お前の好きにさせてやる!

自分の体が変質する痛みに耐えながら、ディルはあらん限りの声で叫んだ。

「逃げろ、ローズ!」