【創作】汝は人狼なりや?【NL】
「だから、奴への恨みは、呪いを無効化する方法を見つけることで晴らそうと決めた。いつかまた、悪用する奴が現れないとも限らないからね」
「み、見つけた、のか?」
ディルは勢い込んで聞くが、アスターは無情にも首を振る。
「いいや、まだ。何せ手探りだからね。術を使うことは禁止されているし、呪いを掛けられた者達は処刑されてしまっている。運良く生き残っていても、自分から名乗り出てくれたりはしないからね。こちらからも聞けないよ、『あなたは狼憑きですか?』なんて。ただでさえ、魔道士は胡散臭い目で見られるのに」
「見つけたら・・・・・・処刑するんだろう? それが掟だから」
「え?」
何故かアスターは驚いたようにディルを見て、それから納得したのか笑顔を浮かべた。
「ああ、君もあの場にいたんだっけ。いやいや、あれは村人を落ち着かせるための方便だよ。本当はね」
ここでアスターは声を潜め、身を乗り出す。
「呪いを掛けられた者は、手厚く保護される手筈になっている。けれど、それを知られたら、騒ぎがさらに大きくなってしまうからね。秘密だよ。誰にも言わないでくれ」
「あ、ああ・・・・・・分かった」
ディルもつられて小声になった。
「実際に保護された人は、いるのか?」
「まだいない。何せ、呪いを掛けた奴も魔道士だからね。彼らにとっては、加害者に保護を求めるようなものだ。かと言って、おおっぴらに『保護します』なんて宣伝したら、無知な人々に襲われかねない。こちらとしては、本人が名乗り出てくれるのを待つしかないんだ。僕らのことを、真の友人として、信用してくれるまで」
アスターが、じっと見つめてくるのに気づいて、ディルは反射的に目を伏せる。
アスターのことは信用している。彼に打ち明ければ、これ以上、怯えて暮らすこともないだろう。
けれど。
それは、家族を見捨てることだ・・・・・・
身代わりで犠牲になった両親と姉に約束したのだ。一生孤独のままでいると。だから、
「そうか・・・・・・きちんと保護されるといいな。その、呪いを掛けられた人達が」
ふと、目の前の友人が笑ったような気がした。「全くしょうがないな」とでもいうように。
アスターは身を起こし、いつもの声量に戻って、
「そうだね。さ、僕もそろそろ寝室に引っ込むとしよう。君も少し休みたまえ。ローズは昼抜きにするようだし、僕も夜まで目を覚まさないだろうから。そうだ、ローズに眠り薬を渡したんだが、君も飲むかい? どこに入れたかな?」
アスターが、服のポケットをあちこち探るのを見て、ディルは笑いながら、必要ないと断る。
「夕飯の支度をすっぽかす訳にいかないからな」
「確かに。ローズが先に目を覚ましたら大変だ」
二人して笑った後、おやすみと言い合って、お互いの寝室に戻った。
作品名:【創作】汝は人狼なりや?【NL】 作家名:シャオ