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【創作】汝は人狼なりや?【NL】

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アスターに促され、ディルは椅子に腰掛ける。アスターはソファーに沈み込むと、長く大きな溜息をついた。

「・・・・・・明日は、命日なんだ。僕の、幼なじみと、その両親の」
「え?」
「親同士が、学生の頃からの付き合いでね。自然と、家族ぐるみの交際となった。彼女は僕より一つ下で、誰からも愛されて、大切にされていた。僕も、彼女を可愛がっていたよ。親達は、僕らを許嫁にしようと考えていたらしいが、僕にとっては、可愛い妹のような存在だった。学校に行くときは、手を繋いで歩いたものさ」

予想外の話に戸惑いながら、ディルは「気の毒に」と呟く。

「その・・・・・・病気か、事故で?」
「いや、処刑された。狼憑きとして」

ディルは、驚きのあまり息が詰まった。心臓が早鐘のように打ち、血管が波打つのが分かる。

「なっ・・・・・・どう・・・・・・」
「どうして? さあ、僕にも分からない。どうして、彼女だったのだろうね? 僕はそのころ寄宿学校にいて、家からは離れていたんだ。聞いた話では、ボロをまとった男が、彼女に呪いを掛けた。『不幸になれ』と言ってね」

『お前ら全員、地獄に叩き落としてやる!!』

男の声が、鮮明に蘇った。ボロ布を纏い、臭気を放っていた、黄色い歯の男。

どれだけの人間を不幸にすれば気が済むんだ・・・・・・!

沸き上がる怒りを押さえながら、アスターに視線を向ける。

「それで・・・・・・その、男は?」
「死んだ。彼女が処刑されたのと、同じ年に」

さらっと言われて、言葉の意味を理解するのに、少しかかった。

「・・・・・・死んで・・・・・・」
「そう、とっくに死んでる。だからといって、今回の件と無関係かどうか」
「えっ、なっ、その、どうして? 誰が?」

狼狽えるディルに、アスターは冷静な声で、「狼憑きの呪いは禁術なんだ」と説明する。

「使うこと自体、禁止されている。奴は魔道士の掟に背いた。だから、制裁を受けた。魔道絡みの事件は魔道士が捜査し、犯人を捕まえ、処罰を決める。僕が魔道士になったのも、それが理由だ」
「アスター・・・・・・それじゃあ」
「そう、復讐の為だよ。呪いを掛けた男を捜し出して、自分の手で殺す為だ。こんなことを言ったら、君は僕を軽蔑するかな」
「いや、そんなこと」
「いいんだ。僕は最低な理由で魔道士になった。それでも、後悔はしていない。彼女だけでなく、彼女の両親まで処刑された。娘が狼憑きだという理由で。遺体は埋葬すら許されなかったそうだ」

アスターは二度三度と瞬きして、目頭を押さえた。

「許せなかった・・・・・・呪いを掛けたという男を、自分の手で殺すと決めた。だから魔道士となって、行方を探していたんだが、奴はとっくに死んでいた。馬鹿げてるだろう?」

自嘲気味に笑うアスターの手に、ディルは自分の手を重ねる。

「いいや、俺はそう思わない」

アスターは顔を背けて、鼻をすすった。

「ありがとう、君はいつも思いやり深い。自分の手で裁くことは叶わなかったが、奴が犯した罪にふさわしい罰を受け、その魂は永遠に救われないことを知った時は、わずかばかり気が晴れたものさ」
「その・・・・・・被害に遭った人達のことを・・・・・・全部調べたのか?」
「さあ、僕もそこまでは。けれど、徹底的に調べたことは確実だね。何せ、魔道士という輩は、ただ真実のみを尊ぶから」

アスターは呆れたように笑うが、その声は耳を素通りする。
どくどくと血流が波打って、全身を掛け巡るのを感じた。
魔道士達は、自分のことを突き止めたのだろうか。もしや、追っ手はすぐそこまで迫っているのではないか。狼憑きを処刑する為に・・・・・・