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【創作】汝は人狼なりや?【NL】

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ディルが洗い物を終えてホールに出てきたら、アスターの話し声が聞こえてくる。そちらを見れば、電話で誰かと話しているようだった。
アスターもディルに気がつき、身振りでそのまま待つよう伝える。

「そう、大したことがなくて良かった。僕の友達が、大変気にしていたからね。宜しく伝えてくれたまえ。今度から、魔道士の忠告は聞くようにと」

にやにや笑っていたアスターが、ふと真顔になって首を傾げた。

「はて、そんな芸当が出来るものだろうか。さあ、どうだろう・・・・・・僕は別人だと思うね。ああ、分かった。犯人は魔道士だよ。魔術で姿を消して、君達の鼻先に」

アスターはそこまで言って、急に受話器を離す。ディルのほうを向いて苦笑すると、

「切れた。全く、せっかちな奴らだね」
「どうかしたのか?」
「うん。ああ、今朝の警察官は、擦り傷程度で済んだらしい。それで、彼が庭に不法侵入したのは、新たな嫌がらせが起きたからさ。村は、蜂の巣をつついたような大騒ぎらしいよ」
「嫌がらせ? 村人の誰かが、何かしたのか?」
「どうだろうね・・・・・・なんせ、野犬の腹に石を詰めて皮を剥ぎ、縄で木から吊したらしい。それも、警察が検問を敷いてる街道に」

内容の残虐さに、ディルはぎょっとして立ち尽くした。アスターは肩を竦めて、「狼憑きの処刑方法だ」と言う。

「村の子供達が歌っているだろう。あれは、狼憑きの処刑の様子を表している。この村には、過去に狼憑きが現れたそうだからね。何とも、趣味の悪いことだ」

アスターは、ふーっと息を吐いて呟いた。

「呪いを掛けられたほうだって、被害者なのにね」

ディルが口を開く前に、アスターは慌てて手を振る。

「いやいやいや、なんでもないなんでもない。忘れてくれ。今回の犯人は、人を殺してる。危険な相手だ。どんな理由であれ、人殺しは許されるものじゃないよ」
「アスター」
「ローズは、少し横になるそうだ。明るく振る舞ってはいるが、やはり堪えているのだろうね。僕のほうの準備は、殆ど終わっているから、僕も少し横になろうかな。何せ、僕にはまだ真夜中と言ってもいい時間だ」
「いいから、こっちに来いよ」

ディルはアスターの腕を取ると、無理矢理客間に押し込んだ。




「どうしたんだい、ディル? 僕がこんな時間に起きてて、君達と朝食をともにしたことが、そんなに不自然かい?」

おどけた調子で聞かれるが、ディルはにこりともせず、

「俺は、魔術や呪いのことはよく分からない。けれど、狼憑きの呪いを掛けられたほうも被害者だと思ってる。それは、そんなにおかしいことか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「呪いを掛けられた者も、処刑されなければいけないのか? 本当に? 災難が降り懸かってきたら、それが罪になるのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「アスター、俺の言っていることはおかしいか? 人殺しは許されることじゃない。それは分かってる。けれど、それと呪いを掛けられたことは、別じゃないのか? 好き好んで狼憑きになった訳じゃないのに、問答無用で処刑されなければならないのか?」
「・・・・・・座ってくれ」