ナイトメアトゥルー 3
「そうか…、うん、じゃあ、話を戻そう。
こいつ…、あー、このミリアを助手と言っていたのは?」
工藤 ユキは頷くと視線をミリアに転じる。
「ミリア。」
その一言でミリアは命令を全て理解したかのように頷く。
ミリアはそのまますぅと目を閉じる。
すると、ミリアの体のサイズがみるみる内に縮まり俺と同じサイズまで小さくなった。
「ミリアは巨大化もできるし縮小化もできる。」
縮小が完了したミリアは、俺が乗せられている工藤 ユキの手の平の上にやってくるなり、
にわかに抱きついてきた。
「い!」
突然の出来事に声をあげてしまった。
ミリアはあごを俺の肩に乗せ深く俺を抱きしめている。
胸の感触が半端無く柔らかい。
そして鼻に広がる快香。
こいつ犬なのになんていい匂いなんだ。
頭の上の犬耳が動く度に俺の頭を撫でるようにくすぐる。
犬娘に抱かれた奴なぞおそらく世界で俺1人だろう。
だが、ミリアは急に俺を突き離した。
あまりにもの強さによろめきそうになる。
「な、何すんだよ!」
「何って…、そちのニオイを記憶しておっただけじゃが…。」
ミリアは当然の事を否定されたかのように不思議な表情を浮かべる。
…。
あぁ、そうか…、そうですよね…。
そうだったんですよね…。
これから工藤 ユキの乳腺の中に入るって事でこいつが助手として呼ばれた。
つまり、犬の嗅覚を利用して工藤 ユキのおっぱいの中で干からびている俺の抜け殻を見つけるって事だ。
だから、こいつは好意で俺に抱きついてきたわけでは無い。
ミリアに抱きつかれ柔らかさに興奮したことが恥ずかしくなってくる。
気恥かしさで穴があったら入りたいと思っている最中、工藤 ユキの声が響き渡る。
「次にこの中に入って。」
工藤 ユキがもう片手に用意していたのは注射器である。
「それ、注射器だろ、それでどうやって?」
「今は乳ガン検診の時はマンモグラフィーが一般的であるけど、ひと昔前は注射針ほどの細さの管にカメラをとりつけ乳頭からそれを入れる事で中の様子を見ていた。
それと同様にこれを乳首に突きさして押し出す力であなたを私の乳腺の中に入れる。」
「それお前自身が痛くないのか?」
「あなたの寿命を奪ったのは私の不注意。これぐらいのことは当然にして負うべき。」
「そうか、でも、これだけは言わしてくれ。」
「何。」
「迷惑をかけたとか、それでその責任とかってもう無しにしてくれ。
そういったことを互いに気にしないのが友達ってやつだろ?」
工藤 ユキは、少しびっくりした表情の後、少し困ったような顔をして、それから少し笑ってみせた。
こちらの世界で見た初めての素の彼女の表情にも見えた。
だが、1秒も経たないうちに組織としての工藤 ユキの表情に戻る。
「そうか。
それは、私としてもとても喜ばしいことだ。」
素っ気ない声調だった。
工藤 ユキは続ける。
「さぁ、入って。」
芯が強い言葉に押され体のサイズを縮ませながら注射器の中へと入る。
そして、俺とミリアは注射針の中で乳腺を通れる程度のサイズまでさらに縮小した。
針の方ではない試験管のような空間はスペースコロニーのようにだだっ広い。
遥か先の前方の円の中心には大きな穴が開いていた。
「あそこが針の位置か…」
18センチのサイズの時でさえも細く感じた個所が、今のサイズでは地下雨水道のような巨大な直径となって存在している。
これで改めて自分が果てしなく小さくなっていることを実感した。
このサイズにまで縮まるように指示したのは案内犬のミリアである。
ミリアは人の形をとっているが犬耳と尻尾だけはそのままの柴犬の時と一緒だった。
そこだけを除けば完全なルックスと完璧なプロポーションの美少女である。
だが、人間であることを否定する頭の上の耳はピンと張り曲がっていた尻尾も伸びる。
体全体で緊張を表現しているようだ。
「いよいよ来るぜよ。」
相変わらず方言とイントネーションが一致していない喋り方である。
おかげでこっちはまったく緊張感を得ることができない。
もっとも、これから入る人体の個所が消化器官でなくさらには女の子特有の個所である事が、正直な気持ちとして緊張感よりも冒険心を喚起していた。
女の子の胸部に対する興味と共に、胃の中や腸の中、ましてや女子トイレの和式便器の中に比べれば格段に絶命の可能性が低いといった安心感さえもある。
針の先には、あれほど小さかった工藤 ユキの乳首が巨大なピンクの岩として存在している。
その岩にある小さな穴から洞窟探検である。
注射針は一旦止まった後、前進を始めた。
針の先端が乳首を差し、そして、そのまま奥へと突き刺さったようだ。
試験管内が大きく揺れる。
次の瞬間、背後からものすごく強い風が俺達を巻きあげる。
針を刺してピストンをしたのであろう。
注射器の原理は押し出す力で中の物を針の外へと追い出す。
注射器の内容物となっている俺達は抵抗不可な風に身の行先を支配される事となる。
「うわぁあっっっっっーーーー!!」
激しい風の中でつい大きな声をあげてしまった。
それでも、目を開けミリアの姿を確認する。
ミリアの長い茶色い髪の毛は風のせいで乱れてしまっている、だが、そのおかげで人間と同じ耳も持っていることを確認できた。
じゃあ、頭の上の犬耳は何だ?
飾りか?
でも、感情ごとに動くから飾りではないか…。
ミリアの耳が人間の耳と犬耳とで4つあることに疑問を抱きつつ、突然、風景が変わった。
医療機器の内部から薄ピンク色の背景に変化している。
同時に、今まで俺達を押し出していた風が弱まる。
自然、推進力を失った俺達は洞窟の内部に叩きつけられた。
どうやら成功したようだ。
俺とミリアは注射器が生みだした圧倒的な風力により工藤 ユキの乳腺の中へと押し出されたのだった。
周りを見回すと広大な地底洞窟のような風景が広がっていた。
どうやら突乳(?)には成功したようだった。
あの風圧のおかげで乳首を通り過ぎて乳管の中へと放り込まれた形だ。
突風に飛ばされるようにしてここに辿りついたため尻もちをついている。
体全体にダメージは無さそうだ。
腰の下は柔らかい感覚だった。
すると手からさらにムニムニと柔らかい感触が伝わってきた。
この感触は小学校の頃、膨らみを始めていた追浜の胸を好奇心で触った時と似た感覚だった。
おっぱいって中でも柔らかいの?
そんな疑問を抱きつつ振り向くと、自分がノ―ダメージであったことと感じていた柔らかい感触の答えが目に飛び込んできた。
それは犬耳の美少女だった。
そう、なんと俺はミリアと重なっていたのだ。
柔らかい感触はミリアの体で、手で触っていたのはミリアの豊満なバストだった。
どうやら俺はミリアの上に着地してしまったようだった。
おかげで俺はノーダメージだったが、こいつはかなりのダメージを負っているようだった。
「うううう。」
と、ミリアのうめき声
ミリアが我に帰る前にさっと手を引く。
そして、立ちあがる。
立ち上がり、ミリアの横で中腰になりミリアの頭を起こす。
ミリアの人耳と犬耳の内、人耳へ囁く。
「おい、ミリア大丈夫か…。」
作品名:ナイトメアトゥルー 3 作家名:ウエストテンプル