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ウエストテンプル
ウエストテンプル
novelistID. 49383
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ナイトメアトゥルー 3

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「この姿が現れている時、本体は寝ているわ。
でも犬はずっと寝ていても誰も疑問には思わないわよね。」

「あぁ、そうですね。」

犬って羨ましいなぁ。

「じゃあ、そろそろ本題に入るわよ。
まず、私はユキちゃんの上司にあたる人物よ。」

そう言い終えるなりじっと俺の目を見る三波 ハルカさん。
どう俺が出るかをじっくりと見極めようとしている風にも見える。
さて、俺は試されているようだ…。
ここは怒鳴るべきか?
いや、驚く素振りを見せるべきか?
それとも、冷静な言葉を選んで返事をするべきか?

もちろん答えは出ている。

「…………………………。」

それはむしろ質問だった。
無言の質問である。

おそらく俺の考えが正しければこれが正解だ。
俺もまた三波 ハルカさんの目をじっと見る。

「るぅーーるぅーーーるぅーーーるるるるぅーーー。」
膝の上ではミリアが上機嫌そうにリズムを奏でている。

「ふふ。」
三波 ハルカさんは口元を緩め微笑みだした。
「流石ね。私と出会ってすぐの時間で私の特異体質に気がつくなんてね。
いいわ。話しましょ。
私は君の事をよく知っている。
けれど、君は私の事をよく知らないなんて不公平だもんね。」

完璧な大人の女性だ。
隣人の迷惑な女子大生にこの人の爪の垢を煎じて飲ませたいところだ。
おおっと、このような人にはそもそも爪に垢なんて溜まらないだろう。

「まぁ、そう思ってくれるなら嬉しいわ。
でもそれより本題に入りましょ。
そう、あなたが考えているように私は人の心を読む{能力}があるの。」

「それは好都合です。」

短く答えたがこの人にはこれで十分だろう。
頭の中に浮かんでは消えるような一連のわからないことだらけの今までの事を拾いとってくれるのだから。

{裏の行政組織}の人間は非常識な{能力}たるものを使えるというのは工藤 ユキからの情報。

それに不思議なもので、あれほど殴りたいほど憎かった工藤 ユキを操っている人物を今は全く憎く思えない。
それはその正体が三波 ハルカさんだとわかりその美貌に免じて許したわけではない。

ただ、どんなに憎く思えた人も実際に会って話をしてしまったら、憎しみの感情が薄れてしまう物に近かった。

「ふー。」
三波 ハルカさんは短く息をついた。
どうやら今考えていたこともしっかりと読み取っていたようだ。

そこから、少し嬉しそうに話を進めた。
「私の{能力}を聞いて畏れを抱かなかった人はほんのわずかだったの。
ある人は全く嘘をつかない人、またある人は私のこの{能力}さえ無意識に無効化する空間を作り出してしまう人、そして、どんなやましいことがあってもそれを包み隠さない正直な人、そういった人達だったわ。」

なるほど、この人は周囲の人物に恵まれていたのか。

「えへへ、そうね、それは私の宝物でもある。
あ、まだ私の自己紹介が完璧に終わっていなかったわね。
私は工藤 ユキちゃんの従妹にあたるの。」

美人DNAか。

三波 ハルカさんは言葉を続ける。
「私は中学・高校と大学は聖山女子に通っていたわ、そして、卒業後、検察に入りこの{能力}をもって特異体質の人達を専門とした部署に配属されたのよ。」

聖山女子出身か、それはすごい。
学校法人聖山女子は超有名なお嬢様学園だ。
難解な入学試験に加え、まことしやかに噂されている顔面審査がある学校だ。
だからその聖山女子には才色兼備な女の子しか入学できないこととなっている。
それに最近じゃ、日本人初の女性メジャーリーガー平井あおいを輩出したことでも話題になっている。

でも、この人だったら当然か。

「もう、そんなこと無いわよ。それに君の通う秀桜高校もトップクラスの偏差値でしょ。
そして女の子もみんなかわいいじゃない。」

まぁそれに関して異論は無いな、入るの苦労したんだから…。

先程から三波 ハルカさんだけが受け応えをする異様な光景が続いている。
しかし、このやりとりのおかげで三波 ハルカさんと少しだけ仲良くなれた気がする。
でもなんか、話がずれてきているような…。

「あぁ、ごめんなさい。
そう、検察に入ってからの話ね。
繰り返すけど、私はそこで特異体質の人絡みの犯罪を担当していたわ、そしてある事件をきっかけに特異体質の人が引き起こす事件を担当する組織が作られたの。
ユキちゃんから聞いたと思うけど、それが{裏の行政組織}よ。
その組織に私は昨年度の始めに配属されたわ。」

昨年度か…。
まだ俺が中学生だった時期か…。

「うん、実は、異動して最初に担当したのは君だったわ。
だから去年はずっと仙台にいたのよ、いい街だったわ。
そして、あなたの{ナイトメア}の様相とか見させてもらった。」

令状無しでかよ。

「ごめんなさいね、こればかりは表ざたに出来ないことだから。」

まぁ、でも、こういうケースは表の法律の物差しで測れる物じゃないけどね。

「ありがとう、感謝するわ。
じゃあ、君の寿命についてね。
あの子が言った通り、君の{ナイトメア}は寿命短縮型よ。
君の{ナイトメア}は第二次性徴が見え始めた頃に現れていたけど、寿命を縮めるタイプでは無かった、しかし、高校入学後にそれが急に寿命短縮型に変貌した。」

何を言っていいのかわからないばかりか、何て思考をもっていけばいいかわからない。

「ここまでは、あの子から聞いたわよね。
この型になってしまった場合、私達は特別の対策チームを作るの。
私はそれまでの単独での仕事から任意に助手を選ぶことができるようになったわ。」

三波 ハルカさんは続ける。

「だから、実はあなたが寿命短縮型にならなければあの子を{観測者}として置くことにはならなかったのよ。
本当だったらあの子には、{ナイトメア}を抱えてしまっている以外では、普通の高校生活を送って欲しかったのだけど…。」

三波 ハルカさんは不本意そうな表情になる。
この表情に嘘が無いことは心を読める能力が無くてもわかる。

「正直なところ、あなたが寿命短縮型に変わった時、私達は慌てたわ…。
でも、偶然にもあの子があなたと同じ高校に入学した。
だから、私の従妹であるあの子を急きょ私達の組織に編入させたのよ。
あの子の{ナイトメア}の能力を使って、君の{ナイトメア}に介入して君を保護する予定だったの。
でも、4月・5月の{ナイトメア}では…。」

追浜 叶絵に佐藤 麻里、待瀬 清麗。

「ええ。この女の子達の登場は計算外だったわ…。
いえ、歳頃の女の子の数値じゃ測れないパワーとも言うべきかしら……。
ともかく、表の社会に生きる子達が寿命短縮型の{ナイトメア}に引き込まれるには…。」

工藤 ユキ同様、三波ハルカさんもこの件については歯切れが悪そうになった。
今までのように言葉に余裕が無い。

何か重大なことを口止めされているようにも見える。

「………………。」
「………………。」
互いの沈黙が場を支配する
いく秒かをもって三波 ハルカさんは逸らしていた目を再度俺に向け直した。
「それは、君自身が見つけ出し答えを出すこと。」

…、え?藪から棒になんだ?
訳がわからない。