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ウエストテンプル
ウエストテンプル
novelistID. 49383
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ナイトメアトゥルー 3

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「わからない!とりあえずここは危険だ。一旦、乳管まで引き上げるぞ。」
「わかった。」
返事をしている間にもミリアは俺との距離を詰めていた。

俺が苦労した距離を難なく短い時間でクリアしている。
これがヒトとイヌの埋まらない身体能力の差であろうか。

「速く。」
ミリアが叫びながら手を伸ばしてくる。
しかし、俊敏なミリアに対し足下を取られ思うように動けない。

「駄目だ…、少ししか動けない。」
手を必死に伸ばすがミリアがいる場所にはまだ距離がある。

その内にもどんどんと乳腺葉の中は四方から湧き出てくる母乳で満たされていく。
それは累乗式に増えていった。
母乳はあっという間に乳腺葉の半分の辺りまでの水かさになっていた。
乳腺葉の半分の辺りは俺の肩の位置。
そこが水位となっていて、加えて不安定な足場である。
ついには足を取られてしまい全身が埋もれてしまう。
あまりにもの量に溺れそうになる。

何とか立ち泳ぎの容量で顔だけを水面に達する事ができた。
「うわっぷ…。」
だいぶ液体を飲んでしまったようだ。

水かさがあれば泳いでミリアの場所まで行けるのでは、と思ったが認識が甘かった。
この液体の中では泳ぐことも難しい。

そして、ミリアの姿が見当たらない。
そうか…あいつは犬だ。
訓練した犬では無い限り、水は苦手なはずだ。

もうすでに下の地面には足がついていない。
そして、体がどんどんと白濁色の液体の中に沈んでいく。
この液体の密度と今の俺の体のサイズでは、俺に浮力は働かないのか。
もがけばもがくほど顔が沈んでいく。
もうすでに鼻の先まで沈んでしまっていた。

しかもこれは幻覚では無い。
見た目処女女子高生の初乳が今度は鼻や耳にも侵入してきた。
こんなところで溺れ死ぬのか?
これじゃあ、また10年寿命が縮まるじゃねぇか…。

「私に考えがある!!」

急にミリアの声が聞こえた。
すぐさま声のする方に顔を向ける。

ミリアは宙に浮いていた。
(お前…飛べたの?)
― もう口は液体の中だから喋れない ―
だが、こいつの存在自体が非常識な存在だから今さらそこに突っ込む必要は無い。
とにかくここはこいつにまかせるしかないのだ。
ミリアは来た道を戻るかのように飛んでいった。
あいつの考えが何にせよ、それが実行されるまで待つしかない。

もうすでに乳腺葉の中の白い液体は、乳管へと溢れんばかりに満ち満ちている。
鼻はもうすでに甘い匂いの母乳に塞がれその機能が期待できない。
呼吸をするのであれば、かろうじて水面から出すことができている口で息をするしかない。
しかし、それも満足に呼吸器としての性能を制限されてしまっている、
水面が揺れるたびに口の中に母乳が流れ込んでくるからだ。
それも時に大量に流れてくるのでその度にむせてしまい、満足な呼吸をさせてもらえないでいる。
ミリアが乳腺葉の中から去っていってどのくらいの時間が経ったのか…。
おそらく、あまり時間が経っていないだろう。
生と死の瀬戸際に立たされている俺の体感時間は、刹那の時間さえ悠久の時のようにも感じてしまっているのだ。
このまま溺れ死ぬのか、苦しさのピークはもう過ぎている。
が、ここで突然、乳腺葉の中が大きく揺れた。

その揺れに伴って乳腺葉に満たされている母乳が乳管に向かって吸い上がっていっている。
ミリアが考えていた策を今実行しているのか?

もしかして、あいつが考えていた策って。
あいつが工藤の乳首をしゃぶることでその中の母乳を飲み干すってことなのか?
乳腺葉の中の白濁色の母乳は大きな渦をまくようにして乳管へと激しく流れていく。
当然にその流れの中心に身を置かざるを得なくなる。

「ぐっぼ!!苦し…。」

瞬間的に水面にでる間を利用し空気を吸いたいが巨大な吸引力は、それを中々許してくれない。

「げっふ。」

流れる水を激しく飲んでしまった。
もちろん、これは水ではない。
工藤 ユキの母乳である。
16歳の女子高生の母乳である。
(俺と追浜の誕生日は一緒で、こいつは2日後だった。)

現実とは多少かけ離れた{ナイトメア}の世界だけあって、無呼吸には多少の融通が効くことがわかってきた。
おかげで味がしっかりと舌の上に残っている。
甘い…、なんて甘いんだ…。
だが、状況は依然として変わっていない。
竜巻に巻き込まれた小魚のように渦巻く母乳に身を委ねるしかない。

徐々に、竜巻の直径がだんだんと狭くなる。
おそらく乳頭に近づいてきたのであろう、直径が狭まると回転数も増えていく。
これはさすがにリミットオーバーだ…耐えられない。
目がまわって気持ちが悪くなる。
このままバターになってしまいそうな感じだ。
吐く、吐きそうだ。

だが、そこで竜巻の流れが止まってくれた。
流れが止まると今度は重力で地面の方角へと落ちる。
今、ハッキリと言えるのは俺をひたしていた母乳が消滅していることだ。
て、ことは乳腺から脱出したのか?
ミリアが工藤 ユキの母乳を飲むために工藤 ユキの乳首に吸いついていたのであれば、俺の存在はそう簡単には気がつかないはず。

それにこのサイズだ。
そのまま犬耳美少女の胃液の海にダイブすることになるのでは無いか。

ここはミリアの口の中か…?
またがミリアの胃の中か…?

極限的なサイズの小ささの為、どこにいるかさえも見当がつかない。
いちかばちかで体のサイズを18センチまで戻してみよう、
そうすればミリア口内に付着していたのであればそのまま吐き出してもらえるであろう。
だが、胃の中だったら最悪だ。
それに今、食道を落ちている最中かもしれない。
だが、ここはすぐに実行すべきだ。
目を閉じ元の大きさに戻るよう念じる。


さて、俺は今どこにいるのか?







「…、工藤!」

目を開けるとベッドの上だった。
それは、{ナイトメア}の世界に入る前と同じ状況だった。
同じベッドの上に工藤 ユキが静かに寝息を立てて眠っている。

その背の高さは俺よりも50センチ近く低い。
そこで自分の体のサイズが元に戻っていると実感し、18センチが上限のあの世界ではなくここが元の世界だと確信が持てた。

ミリアの口の中がおそらく転移装置の役割をしたのであろう。
あの世界でのミリアは、縮んだりでかくなったり浮いたりできるのだからそれぐらいのことは容易であるに違いない。
現にこうして俺は元の世界に戻ってこられている。
だからこそ、その仮説は正しい、結果論だけど。
もう少し、ミリアと喋りたかったな…。
工藤 ユキは横向きになりながらひじとひざがつくぐらいにまでうずくまっている。

キャミソールの肩ひもは両肩とも外れている。

その姿を見て、少し笑ってしまった。
「あんな大人ぶって振舞ってはいても、この寝顔が本当のこの子の姿なんだろうなぁ…。」

けれど、この実年齢から離れたこの小学生のような小さな体にはしっかりとした原因があった。

外れていた肩ひもを直してやる。

「でも、これでもこの子は真の睡眠を得れていないってわけか…。」

工藤 ユキは、俺とは違い毎夜{ナイトメア}に苦しめられている。
月一の満月の日の俺に比べてこいつは毎日だ。