ナイトメアトゥルー 2
衣擦れの音が止むと、スカートをまくしあげ屈む。
待瀬のお尻は和式便器に向けて突き出された形となった。
待瀬にとっての何気ない行為。
生理現象を滞りなく処理する為の日常的な行動。
それでも小さな体のサイズの俺にとっては衝撃でしかない。
彼女のデリケートゾーンがダイレクトに飛び込んできてしまうのだ。
そもそも位置が悪かった。
待瀬のお尻に挟まれていた俺は、つまり、彼女のパンツの後ろ側の繊維に絡まっていたのだ。
言い換えるなら、俺は内側にいる、四方を囲まれた形で。
頭の後方は白い布。
視界の左右は待瀬のふともも。
そして、前方は……、待瀬の大事な場所だ。
膝のあたりまでパンツがずり下げられ止まった事が災いした。
こうなると、自然、待瀬のアソコは俺からの位置からだとちょうど真正面にあたる。
あまりにもの迫力に声が出ない。
「ふぅ。」
声を出したのは待瀬。
彼女が言葉と同時に一息つくと大量の黄金水が勢いよく噴出された。
俺の聴力を麻痺させんばかりの大音量を伴わせた尿は、これまで澄んでいた便器内の水をアンモニア臭漂う黄色へと変色させる。
とてつもない勢いの射出は本流の他に大量の飛沫を飛び散らせているわけだが、今のこのサイズではその飛沫は散弾銃と同等の殺傷能力があるとみてもいいだろう。
ゴクリ、と息を呑む。
ん、あれ?身動きがとれる?
そうか、待瀬がパンツをずり下げてくれたおかげで、パンツが横に伸ばされた分繊維の幅が広がったのか。
自由を獲得できたのであれば善は急げだ。
水への落水を避けるため、一旦、パンツの内側へと移動することにする。
だが、すぐにそのまた次の行動に移さないといけない。
用を足し終えた待瀬にこのまま穿かれてしまったら、今度こそ確実に死ぬ。
先程までは外側だったからなんとか事無きことを得ていたが、内側では待瀬の大きなクレパスにすり潰されるおそれがある。
それに、この悪夢を終わらせる条件が、女の子が{夢}の中から退場することであるからだ。
パンツの中では、その状況は絶対に訪れない。
よって、この間に彼女の足を伝って地面の上に降りなければならないのだ。
番組編成期によくやる特殊アスレチックに挑戦する番組みたく難易度が高く、かつ失敗は許されない。
待瀬の小さい方の便は終了したみたいだ。
尿道から滴がポタポタと落ちている。
だが、同時に尿道口よりも後ろにある穴からは太くて長いこげ茶色の物体がぶら下がっていた。
大便の排泄だ。
待瀬の生理現象の本命が始まった。
不幸中の幸いか待瀬は排便に苦しんでいるようで、中々全体が出てこずに途中まで出てきては止まりを繰り返している。
待瀬の大便が固ければそれだけ時間がかかるので好都合だ。
パンツの上を歩くが、巨大なハンモックの上を渡っているようでかなり足場が悪い。
しかし、落ちてしまっては全てが水の泡なので、慎重に歩みを進める。
「うっ…うーん…。」
待瀬の吐息が響いてくる。
かなり苦戦しているようだ。
大便のかなりの面積が待瀬の直腸内から空気中に出てきた所で、ようやくパンツの中のデリケートゾーンにあたる位置を通過した。
さて次はパンツの足の通り道だ。
今いるのは左足の膝の内側の辺り。
パンツの足を通す穴は、待瀬が用を足す為にずり下げられた影響で絞られていることもあり、膝の反対側までしがみ付きながらつたっていかなければならない。
ここでも下に落ちないように細心の注意を払う。
まだ制限時間に余裕がありそうだ。
待瀬の大便から発せられる臭いに耐えながらも細くなった待瀬のパンツをロープのようにつたっていく。
膝周りに到着する。
この間に待瀬の排便は完了したようで、和式便器内には排泄された大便が据えられていた。
しかし、信じられない。
あの待瀬 清麗があんなに太いのを排泄するなんて。
第一、彼女が気張って排泄する姿もまず想像できない。
俺の位置から顔が見えなかったのは残念だ…。
ん、あれ?大便の中に黄色の粒が…。
あれはコーンか。
確か…昨日、コーンスープ出したよな。
あいつ、よく噛まなかったな…。
いや…。
ここは夢の中であって…、そんな事は有り得ない。
昨日の夜食べた物がこの夢の中で排泄されるだなんて有り得ない。
いや、でも…、とはあっても、ここは現実に即した{夢}の世界だからその可能性も無きにしも非ずでは…ないか。
あれこれと考え込んでしまうのは俺の悪癖。
加えて命がけのアスレチックを半ばまで踏破したので、少し休憩したい気分もある。
でも、そんなに悠長には構えていられない。
まだ、待瀬の肛門には、尻から千切れなかった便がくっついていた。
あれが落ちる前に撤収しないと…。
後は膝から内履きに向かって降りるだけだ。
膝と靴下の間の生足の部分を慎重に降りる。
カラカラ。
トイレットペーパーを回す音だ。
終わったのか、こっちも急がないと。
タイムリミットが縮まったようだ。
待瀬は肛門を拭いている。
いや、肛門にこびりついた便だけではなく、千切れなかった便ごと拭いてしまっている…。
おかげで待瀬の尻周りは茶色くなってしまった。
そうなると何度も拭く羽目になる。
やっぱりこいつ、洗浄機能付トイレじゃないと大きいのが出来ないんじゃないか?
何度も拭いたおかげで紙はかなり汚れてしまっているが、その紙をすぐに便器の中に放り込まなかった。
代わりにその汚れた個所を畳む。
おかげで、まだ使える白い箇所が現れる。
その放りこまなかったまだ利用価値のあるトイレットペーパーを膝の辺りにまで持ってきた。
待瀬が手を伸ばしているのは俺がいる場所だ。
ヤバい…!
俺が膝をすべり降りる感触を汗が垂れたのだと思って拭き取ろうとしているんだ。
「うわっつっつーーー!!!!」
大声を上げたところで待瀬の手は止まらない。
今の俺は待瀬に生物として認識されていないのだ。
待瀬は造作も無く俺を拭きとった。
結果、待瀬に拭きとられた俺は水に浸かっている大便の上に落されることとなる。
自分が排泄した物を隠そうとするのはお嬢様の本能からだろうか。
きっちりと大便を覆い隠そうとしている。
不運に不運は重なる。
俺はトイレットペーパーの外側にいる形なので待瀬の肛門がバッチリと見えてしまっている。
トイレットペーパーが便器内の湿気でしなったせいで、足場全体が大便に埋まっていく。
便器の内側が見えている今からでも遅くない。
どこかに避難する場所とかないのか…?
視線をぐるぐると回す。
しかし、新しい絶望が判明した。
この場所は待瀬の肛門のちょうど真下だったのだ。
ヒクヒクしている待瀬の肛門。
待瀬の排泄行為はまだ終わっていないようだ。
ぎゅるるるうるるるるるるる。
激しい音が頭の上から聞こえてきた。
待瀬の腹部がそうした音を出したのであれば引き起こされる事態はわかっている。
今度はバケツをひっくり返したような水っぽい便が降り注いだ。
下痢便だ。
その下痢便の中で意識を失った。
大量の大便の中で俺は死んだ。
意識を失う中で聞こえてきたのはトイレを流す音だった。
※
旧暦での16日の朝がやってきた。
今回も死んでしまった。
作品名:ナイトメアトゥルー 2 作家名:ウエストテンプル