ナイトメアトゥルー 2
カバンの中を探す音が止んだと同時に止まっていた待瀬の尻が動きだした。
こちらに向かってくる。
待瀬が完全に着席するまでのわずかな時間が一劫の長さに感じる。
されど、どうすることもできない。
どうすることもできないまま待瀬の着席は完了した。
待瀬のデリケート部分を包む柔らかい布地、その布地の感触はすぐに重さに変わる。
このまま潰されて待瀬のパンツのシミになるのか…。
こうして意識が遠のいていって……。
……。
…。
!
いや、遠のかない!
何故だ!?
ここは待瀬のお尻の下だから、今の状況では何も抵抗が出来ないまま潰されるはずだ。
なのに、生きている!
何故だ、どうしてだ!?
あ…、ここは…、そうか、この場所はあの場所にあたるのか。
ここの位置は丁度運がよくお尻の割れ目の場所だったんだ。
視界は白い布だけだが、ここだけ南北に連なる長い窪みであるのを感じる。
だからこそ即死を免れた。
よし、これでここをやり過ごせれば、今回は死なずに済むかもしれない。
待瀬が椅子を引いた力学に翻弄され中央部にまで来てしまったことは何もマイナスには働かなかった。
災い転じて福となす、か。
だが、身動きはとれないのはキツイ。
それに、臭いも気になってきた、汗と垢が混じったような臭いだ。
これが待瀬みたいな美人な女の子が発しているものだとわからなければ吐き気を催している。
でも、あれ?少し体が動くぞ?
体の自由がきくってことは、待瀬が腰を浮かせたのか?
しかしそれは、何かの前触れであると気がつけばよかった。
急な出来事だった。
ぷすぅ。
白い布の向こう側からの音は通常のサイズであれば微かな音かもしれない。
だけど、今の俺にとってはとてつもない爆音。
同時に半端のない悪臭も襲ってくる。
おならだ、女子高生のおならだ。
清楚系委員長の属性付きのおならだ。
待瀬にとってはすかしたつもりでも、小さな存在にとっては突風が吹きつけてきたと同じ。
突風の要素は大腸菌が発酵させた待瀬の大腸の中の空気そのもので、そんな臭いをダイレクトに受けてしまった。
あの待瀬がこんな臭いを放つなんて…。
あいつがブラジャーを見せてきた時は、ほのかな石鹸の匂いだったのに…。
上と下での差がありすぎる。
だが、誰もいない教室でも音をたてないようにするのは待瀬らしさが垣間見えている。
おかげで壊滅的な臭いを被ることになったのだが…。
するとまた体全体にかかる重みが増す。
またしっかりと座りなおしたようだ。
尻の動きが止まる。
そのせいで再び身動きがとれなくなる。
今回の{夢}は持久戦か。
時間にして5分が経っただろうか、また周囲の布が浮かび上がる。
ぐぎゅるるるうるるるるる。
今度は爆風と悪臭は襲ってこなかったが、大きな音は待瀬の下腹部から。
「今回は出るかな?」
この音は待瀬の独り言の誘因となったようだ。
出るって何が?
まさか、あれか?
こうきてあれと言えば………。
待瀬ってあれをするの?
当然、人間だからその行為は当然だが、待瀬だけはそういった事をやらないんじゃないかと勝手にイメージしていたのも事実。
しかし、お尻から発せられた空気は確かに臭かった。
待てよ、て事は……トイレに行くのか?
光が見えてきた。
このままトイレに行くために待瀬が立ちあがってくれれば、あの圧迫から逃れることができる。
今回の{夢}はキツイ臭いに苦しめられ、汚いモノはしないとイメージしていた女の子の意外な一面を見てしまったが、生還の望みはありそうだ。
中学までのこの{夢}のケース、一旦、女の子が退場すればそのまま朝が来ることになっていた場合も多々ある。
待瀬が立ち上がったようだ、これで白い布ともおさらば、
そして、今月の{悪夢}ともおさらば。
ならば、こうして遠ざかる清楚系委員長お嬢様の白いパンツを目に焼き付けておこう。
でも…、あれ?遠ざかるのは白では無い、白の代わりに目に飛び込んだのは四角い茶色だ。
座るためのスペースが確保されている四角に茶色の木目。
あれはイスだ。
しかも足場が不安定、空を浮いているような感覚であって加えてイスの木目がどんどんと遠ざかっていく。
て、ことは…これが意味することは?
最悪だ…。
絡まってしまったようだ、待瀬のパンツに。
だから俺が立っているはずだったイスが遠ざかっていくのだ。
こうなったのは待瀬のパンツの繊維に捕らわれてしまった事もあるが、待瀬のパンツが喰い込んでいるのも関係している。
今はその喰い込みの中に半ば固定されているような状況である。
て、ことは、俺を挟んでいるこの両壁は…。
待瀬のお尻!?
でも今は興奮できない。
教室の床がはるか下に見えてしまっており落下の恐怖が常につきまとっている。
でも、待瀬が歩く度にパンツの喰い込みへと体が埋もれていく。
それはそれでこの場は助かるのだが……………、
まさか、このまま女子トイレの中にまで連れていかれるのか?
待瀬のパンツの繊維に絡まっている俺の眼下には、細く優美な曲線の両足が広がっている。
脚線美。
女の子のスカートの中から外を見るとこういった風に見えるのか。
待瀬のスカートは膝上5センチってあたりか。
そこから膝の辺りまで露出している。
その肌色のなめらかな丘陵の膝まで、自由の女神のようなデザインをワンポイントにあしらった紺色の靴下が足元から伸びている。
靴は高校指定の内履きだ。
全く汚れが見当たらず真っ白である。
さらにその下に目を移す。
廊下が見える。
廊下の移動はそのままクラスとトイレまでの距離。
必然として次に見えてきたのは薄い赤色のタイル。
日本では女子トイレを表現する色でもある。
とうとう来てしまった、女性の秘密の花園へ。
それでも待瀬の歩は止まらない。
ドアが開く音がした。
開く音の次は閉じる音。
金属がこすれる音と衝撃音である。
和式便器が視界に飛び込んでくる。
女の子は和式で用を足す事が多いが、俺の勝手なイメージでは待瀬は洋式かつ温水洗浄付きでしかお尻を洗えないと思っているが、この先どうなるのだろうか?
和式便器の中は静かに水面を湛えている。
ここから落ちたら間違いなく死ぬ。
糸無しのバンジージャンプだ。
言うまでも無くその死体は汚物まみれになるだろう。
内鍵をしめる音がした。
いよいよ時間が差し迫ってきているようだ。
待瀬がそわそわしているのが足の動きから察せられる。
大便が彼女の直腸を激しく刺激しているのだろう。
待瀬の便意はそれだけに止まらず俺に襲いかかる。
蠢く待瀬の肛門の動きはパンツ越しであっても俺を波のように翻弄する。
対照的なのは便器内である。
白い陶器はただその時の為に悠然と佇んでいる。
そこは待瀬にとっては静かな水面。
だが今の俺はあそこに落ちただけで死は免れない。
絶対にここから落ちてはならない。
金科玉条の目的のために待瀬のパンツによりいっそうしがみつく。
待瀬が和式便器に跨る。
いよいよだ。
待瀬はパンツに手を当てそれを膝まで下ろす。
これにて待瀬の肉壁地獄から脱出できたわけだが、
膝まで脱がされた彼女の下着から落ちてはならない事に変わりは無い。
作品名:ナイトメアトゥルー 2 作家名:ウエストテンプル