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ウエストテンプル
ウエストテンプル
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ナイトメアトゥルー 2

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つまり、仰向けの俺に待瀬が馬乗りになってしまったのだ。

胸の次は尻!!!
ビクン。
またもう1人の俺が勝手に激しく反応する。
スカートとパンツ越しながら、待瀬の柔らかい尻の感触が体全体に駆け巡る。

「伊達君!拒否しているつもりでもここは正直ですよ!」
怒っているのか泣いているのかわからない声調で、固くなった俺の下半身の一部をさする待瀬。

酔っぱらうと人間ここまで大胆になっちゃうの…。
否、大胆どころじゃない、完全に性格が変わってしまっている。
貞操観念の塊だった待瀬がここまで淫乱な言葉を並べてしまっているのだ。
いや、そんなことはどうでもいい。
この状況は完全にアウトだ。
揉んで揉まなくてって状況じゃない。
状況証拠だけでいくと、俺が待瀬に酒を飲ませ、淫らな行為をはたらいた事になってしまう。

どうすればいいんだ。

すると、玄関のドアノブが動く音がした。
あれ?こんな時間に俺を訪ねてくる奴なんているのか?
今日、招いた待瀬以外に俺の家の場所を知っているのは、追浜だけだ。

だが、追浜はゴールデンウィーク後に入部したチアリーディングの大会中だ。
今日の授業が終わると、大会の会場の小倉にまで移動している。

そもそも、玄関の鍵は締まっている。
だから、開けられるはずは無い。
いや、普通、人の家に訪問する時はインターホン押すはずだ。
て事はまともな人間では無い。
ガチャリと鍵が開く音。
まさか泥棒?
ピッキングか?

「んーー。
何で、鍵がかかってたんだろう?」
こ、この声は…!?
「………。

こぉーらー、人の部屋で何いちゃついとるんじゃーー」

待瀬は、今の大声に驚き、仰向けの俺から体を動かした。

そうだ、いた。
こんな時間に俺の部屋に来るやつ。
そう、あいつだ。
隣の迷惑なあいつだ。
でも、今は、この迷惑な女子大生に感謝しなければいけない。

締めていた鍵が開いてしまったのは、どうやら隣と鍵穴が一緒のためらしい。
だから、女子大生 行橋 莉璃がこうして俺の部屋に間違って入ってきてしまったのだ。

とりあえず、このもう1人の酔っ払いを落ち着かせないと…。
すでにもう自由となった身で、行橋 莉璃が仁王立ちしている所まで歩み寄る。

「あー、落ち着け、落ち着け、ここはどう見たって俺の部屋だろ。
どうやら俺達はドアの鍵穴が同じらしい。」
「あ…。そう言われるとそうねぇ…。私の玄関、こんなに殺風景じゃないし」
「悪かったな、俺は余計な物は置かない主義なんだ。」

良かった、こっちの酔っぱらいは落ち着いた。
やっとこさ、ここに至るまでの経緯を説明できる。





「そ、そういう事だったの。
あぁ〜あ。完璧にあんたって、セックスの時、シチュエーションとか大事にしないタイプね。
それにあんたって、無駄に童貞を大事にしそうだし。
そんなあんたが女の子を押し倒す勇気なんてあるわけないか。」

かいつまんだ説明をあっけらかんと笑う行橋 莉璃。
もっとも、押し倒されたのは俺なんだけど。
でもともかく変な誤解はされずに済みそうだ。

「うるせぇよ。
鍵穴が同じだったことについては何もないのかよ。」

「え、別に。
あんたは人の物盗るほど、度胸ないし、
私は、これで46時中、あんたをこき使えるんだから、
むしろ朗報よ。」

……。
新しい憂鬱が増えた瞬間だった。
でも、今はそれを先送りにしたい。
女の子には女性だ。
この隣人に待瀬の介抱を頼む。
待瀬は、今までの疲れとアルコールが上手い具合に回ったこともあり、すやすやと寝息を立てている。

そんな待瀬の寝顔を行橋 莉璃はまじまじと見つめる。
「へぇ、こんなに可愛い子が…あんたも隅に置けないわねぇ。
おっと邪魔しちゃ悪いわね。
さぁ、続きをどうぞ。」

諧謔をたっぷりに込めた声調と表情である。

「待ってくれ。
何か、勘違いしているとおもうが、そんなんじゃない。
言わば、こいつは俺みたいな庶民にとっては高嶺の花さ。」

俺とは同じ世界にいない人間。
そういった意図は行橋 莉璃にも伝わる。
しかし、一瞬の間がここで生じた。

「へぇ…そうなんだ。」

笑っていた行橋 莉璃の目が急に冷たくなったような感じがした。
それは俺に対しての態度。
そのまま行橋 莉璃は寝顔の待瀬の頭を撫でる。
裏表のない優しい表情である。
俺に向けた表情と180度違う。
そして、耳元で
「頑張るのよ」
と、つぶやいた。

その後、行橋 莉璃の言動は業務じみていた。

「酒が完全に抜けるまで私の部屋で休ませておくから。
この子の家わかる?
アッシーはあいつでいいか。
送らせておくよ。」

アッシーっていつの言葉だよ。
この女子大生に良いように車出しをさせられている哀れな人間を不憫に思う。
外見だけは良いこの女に貢がされている男については、酒盛りの中での一方的な話で聞いている。

「あれ?でも、ゴールデンウィークに車出してもらった、あの女の人はどうなんですか?」

ゴールデンウィーク中のちょっとしたエピソードで知り合った、行橋 莉璃と同じゼミの女子大生。
その人の方が待瀬を送るのに適任だと思うのだが。

「どアホ。
こんな時間に急にお願いしたら迷惑でしょ。」

ん!?
アッシー君として使う男性には気を使わないのに、こちらには気を使うのですか?
男性として反感は覚えざるを得ないが、でも、今回だけは、この迷惑な女子大生に感謝しなければいけない。

待瀬の介抱をお願いしているので、俺の部屋であるにも関わらずどうしても居たたまれず、部屋の外へと出る。
もう月は天球の中心に位置していた。
月は水がたっぷり入ったコップのように膨張している。
忘れてた…。
今日は旧暦の14日で、明日が満月の日だ。

「あー、そうそう。追浜部長には黙っておくから。」
背後から声がした。
行橋 莉璃は待瀬を抱き抱えている。
その声調はいつもの諧謔じみたものでは無く、どこか他人行儀のようだった。







ようやく朝が来た。
今日は、旧暦の15日で満月の日、月に一度の憂欝の日がやってきた。
それだけで心の重さの限界の九割九分を占めているのに、昨日のこともあってか憂鬱のレベルがより一層に深い。

起きた時間はいつもより遅く、つい始業ギリギリの時間に登校してしまった。
教室に入るなりいの一番に待瀬の席に目がいく。
昨夜、あれだけの事があっても待瀬は欠席していなかった。
待瀬は優等生そのもので、いつもと同じく朝早くに登校していたらしい。

今日の月の満ち欠けが満月であること以外は、何ら変わりの無い1日だった。
ただ1つ、大事な事を忘れていた事を除いて。
うっかりしてた。
昼飯、買い忘れてた。
それに、今日は追浜が部活の大会に出場しているため、追浜は学校を欠席している。

でも、元より食欲の無い日だ。
こういう日に追浜に弁当作ってもらって残すのも失礼だ。
いい事と悪い事は簡単にひとくくりにはできない。

あの悪夢のことが頭を支配していることもあり、振り返ることさえ散文的になってしまうが、静かな一日が終わろうとしていた。
帰りのホームルームが終わると、待瀬が話しかけてきた。

待瀬は恐縮しきった様子だ。