勇者の憂鬱 勇者の裁判
「勇者の裁判」
「グハハハハ!よく――」
「あー違う違う。今回は違う。別にお前を倒しに来たわけじゃないよ。てゆうか1人の俺でもお前瞬殺できるし」
笑いをこらえ、腹を抱える勇者。それに大魔王は気が抜けたように「な~んだ」と後ろに倒れこんで、ムクリと上半身だけ起き上がる。
「では今回は何の用だ?ま、まさか仲間に俺が何回も倒されたこと知られてしまったか!?」
その隣に横たわる勇者。そして大魔王のなにもない綺麗な黒い空を見ながら両手を頭の後ろに組む。
「あぁ、まぁね。てか俺から言ってやった。何回も大魔王倒してるしってね。なんか仲間はさぁ、大魔王倒す気満々だったけどさぁ、俺らって実際ただの勇者として。大魔王として生まれてきただけじゃん?だからそれは勇者として差別は許されないなぁって思うわけよ?」
「まぁその気持ちは分からんでもないが、仕方ないよ。吾輩は好きで生まれてきたわけじゃないけどそうしないと報酬貰えないもん。俺にも家族居るしさ。まぁもう離婚しちまったけどな」
2人とも愚痴を言い合ってる間、大魔王の手下が勇者の存在に気付き、襲いかかってくる。
「貴様ぁぁあああ!!!なぜ勇者がここにぃいいいい!!!!八つ裂きにしてやるわぁあああ!!!」
その間に大魔王が慌てた顔で手下を止める。
「あーまてまてお前ら。今回はただの・・・ただの・・・」
「大魔王様?」
「そう!ただの生贄だ!だから吾輩の生贄だからお前らが襲う番はないぞ?」
それを聞いて手下たちが慌てて土下座した。
「も、申し訳ありませんでしたー!!!」
「まぁ分かればいいよ。あ、それと今日はもうあがっていいよ。他の手下たちにも言っといてちょー」
手下達は右足をそのまま、左足だけ片足立ちして左腕を腿の上に置き、「おおせのままに」と帰って行った。そして大魔王の隣にいた勇者が笑いながら叫ぶ。
「ギャハハハハ!!今回の言い訳は生贄か!!てことは俺逃げないとな!きゃーこわいよー!ギャハハハ!!」
「おいおい、笑いすぎだろ。―――てまだいたの?もうあがっていいって」
それはさっきいた手下ではなかったが、慌てた顔で膝まづき、「報告します!」と急いだ声で言った。
作品名:勇者の憂鬱 勇者の裁判 作家名:DG4