小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

覇王伝__蒼剣の舞い1

INDEX|83ページ/92ページ|

次のページ前のページ
 
         
 星宿、狼靖は未だ寝付けぬ夜を過ごしていた。
 いつも賑やかな焔も卓で頬杖を付き、窓の外を眺めたままだ。
 何も起こらなければ動きようがない。こんなに、嫌な感じがするのに。
 「父上っ!!」
 「…拓海」
 勢いよく飛び込んできた息子に、狼靖が驚きの顔をする。
 「父上、僕は…とんでもない事をしました」
 「何があった?清雅さまはご一緒ではないのか?」
 嫌な不安は、更に増していく。
 「…僕の所為で…」
 「拓海っ、詳しく話せっ!!」
 「玄武さま、そう責め口調では可哀想です」
 「僕は、白い影に操られて、龍王剣を…」
 「___要するに、彼らに渡してセイちゃん大ピンチって事でしょ」
 「…っ」
 「この大馬鹿者っ!!」
 滅多に声を張り上げぬ狼靖が、拓海を怒鳴った。
 「玄武さま、拓海は自分の意志でやったのではありません。彼らは、清雅さまが油断する相手をよく知っていたんです。玄武さまでも吾でも焔でもなく、この騒ぎに誰を連れ出すかも」
 「___まさか、例のスパイか?」
 「ええ、考えれる人物はそれでしょう。王都を選んだも手の一つ。四獣聖の力が一つに集まれば多少なりとも周囲に影響します。彼らはそれを利用したんです。清雅さま一人を誘い出す為に。そしてその共に、拓海を選ぶ事も計算して」
 「…急いでくださいっ。清雅さまを…早くっ」
 彼らは、王都に急いだ。
 謎のスパイの、巧妙な手だった。
 清雅の性格を熟知し行動を読み、罠を仕掛ける。
 しかし、そこにはもう白い影の姿も清雅もいなかった。
 「…そんな…」
 座り込む拓海。
 「清雅さまは生きているよ、拓海」
 「星宿さま」
 「僅かな血痕しかない。致命傷というほどではない」
 未だ乾ききっていない血を指で触れながら、星宿は判断した。
 その一方で、狼靖は何かを見つける。
 尚武邸の外壁に食い込んだ一本の矢、そこに結ばれる文を。
 「___赤の谷?」
 文には、その一言のみ。
 これも、罠だろうか。彼らの狙いが理解らない。
 「行くっきゃないでしょ。多分、セイちゃんそこだよ」
 「僕も行きます!連れて行ってください」
 「行こう、拓海。吾たちの王の元へ!」
 彼らは、一路赤の谷を目指した。