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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 薄暗い部屋の中、拓海は膝を抱えて籠もっていた。
 ___僕の所為だ。僕は、清雅さまを追いつめてしまったんだ…!
 「拓海さま」
 入ってきた尚武が、マグカップを差し出す。
 「尚武さま」
 「その“__さま”というのはやめましょう。云ったでしょう?温まりますよ」
 「僕の…」
 「?」
 「僕の所為です…」
 「貴方の所為では、ありませんよ。拓海さまは操られていたんですから」
 「それでも僕は…っ。僕は…清雅さまの剣をこの手で渡してしまったんです!」
 「清雅さまは、怒っていませんよ。責めてもいません」
 そう、清雅は拓海に何も云わなかった。
 リョウ・オンを怒鳴ったように、怒られればまだマシだったのかも知れない。
 「…っ」
 涙が溢れてくる。
 自分が情けなくて悔しくて、何もできず、唯いつも彼に助けられてばかり。
 「拓海さま、何故清雅さまが貴方を一緒に連れてきたか理解りますか?吾は、理解る気がします。以前、星宿さまが貴方が羨ましいと云っていた意味を」
 「僕が___、羨ましい?」
 「ええ。貴方が清雅さまの従弟と云う事ではなく」
 「そんな事、星宿さまは僕なんかより剣も精神も強いじゃありませんか?焔さまだって、ちょっと性格に問題ありますが」
 「安心するんでしょうね」
 「え…」
 「貴方といると、清雅さまは自由になれる。王でもなく四獣聖・蒼龍でもなく、一人の人間に戻れる。それが僅かな時間でも。10歳の頃から戦場に置かれ以来毎日が戦いです。王となり、蒼剣に選ばれ、今度は黒抄、白碧から命を狙われる。あの方はいつも緊張状態にあったんです。吾などは、とても耐えられず逃げ出してますよ。ですが、清雅さまには許されない。四獣聖であり、蒼国の王であり、そして蒼剣の主だから。みなが期待し、膝をつく。そんな中で、貴方の存在は清雅さまが唯一、唯の人間に戻れるんですよ。あの方が、そう意識しているかは理解りませんが」
 「…う…」
 涙が止まらない。
 「貴方は、貴方のできる事をすればいいんですよ。無理なく、精一杯の事を。クヨクヨしている時間はありませんよ、拓海さま。清雅さまには、貴方が必要なんです」
 これで、泣くのは最期にしよう。
 尚武の胸に顔を埋め、拓海はその夜声を上げて思いっきり泣いた。