覇王伝__蒼剣の舞い1
その夜、こっそりとそれは行われた。
「___持ってきたか?」
白い頭巾の男が、問い掛ける先に拓海がいた。
頷き差し出すそれは___龍王剣。
「ふふ…」
男の手が、ぼんやりと立つ拓海の喉元に触れる瞬間。
「拓海さまっ」
「ちっ…」
男が消えると同時に、拓海の躯が地に崩れかける。
「拓海さま!」
「…尚武…さま…?僕…どうして…」
「白い頭巾の男に殺されそうになっていたんです。様子がおかしいので、つけてきたのですがよかった。間に合って」
「白い…頭巾?」
何だろう?とても大事な事を忘れている。
誰かに、何かを云われた。
「拓海さま…?」
ガタガタと震える拓海に、背後の気配。
「僕は__…、とんでもない事を…っ」
思い出した。何もかも。
白い衣を纏った男に捕まり、暗示を掛けられた。
龍王剣を奪え。お前なら、蒼王は油断する___と。
「フン、そう云うことか」
「清雅さま…」
真っ青になる拓海と、厳しい顔の清雅。
そして、遠く離れた地で龍王剣を前に唇を綻ばせる白頭巾の男。
それぞれの思惑が、今一つの地でぶつかり合おうとしていた。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍