覇王伝__蒼剣の舞い1
「___さん、拓海さまっ」
目を開けると、心配そうに覗き込むリョウ・オンがいた。
「リョウ・オン…さん」
「よかった。驚きましたよ。水蔵で倒れているんですから」
「__…っ」
鋭い頭痛に、拓海は顔を顰めた。
記憶が、曖昧になっている。誰かと一緒にいて、それからどうしたのか。
よく知っている人間の気がするのだが。
「こちらにおいてでしたか?拓海さま」
「瑠邑さま?」
「陛下が探していましたよ。街へお出でるのでは?」
「___あっ!!」
昨日、街へいくから付き合えと云われたのだ。
遅れたお陰で、清雅は機嫌が悪い。
レオの指導で、拓海も馬に乗れるようになり、焔が羨ましそうに云う。
「いいなぁ、タクちゃんだけ」
「お前は、尻が痛いだ何だのってやめただろうが」
「でも、我々がいくよりはいいでしょう。王都に潜む白い影の目的を探るには、我々は顔が知られてますし、剣を振るえぬとなると」
「でも四本揃わないと駄目なんじゃ…」
「___拓海、それを誰から?」
「え…」
誰から、聞いたのだろう。
「どうでもいいじゃねぇか。相手は数人、龍王剣一本ありゃ充分だぜ」
手綱を引いて、清雅は馬首を街に向けた。
そんな様子を鏡を通して見つめる、白王・聖連。
「ふふ、さぁ来るがいい。死ぬ前に、役に立って貰おうか」
聖連の美しい顔から、不適な笑みが零れる。その白い手には一匹の蜘蛛。
罠の巣に掛かる獲物を待つ悦びに、金色の眸が細めらていく。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍