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覇王伝__蒼剣の舞い1

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第5話:奪われた龍王剣


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 コツコツと、誰かの靴音が近づいてくる。
 白い衣を纏い、金髪の男。
 「気分は?拓海」
 「あなた…は…」
 「吾が理解るようだな。さすがは玄武の息子だ」
 顔半分を金髪に隠し、片側の顔は美しく整っている。髪の同じ色の眸は冷たく、それでも声は聞き覚えがあった。
 「どうして…」
 「どうして?決まっている。吾はあの方の命令を遂行する。お前はその餌。彼を無力にする為の」
 「そんな事させるもんか」
 「できないと言いたげだな。吾はお前より彼を知っている。彼の性格を。彼は自分の愚かさを身を以て知る事になる。覇王になるのは、吾が主___白王・聖連さまなのだ」
 聖連___、蒼国に来る前に父・狼靖から聞いた事がある。
 前覇王の次男にして、母方は異能の名家、四国分国後は白碧の王となった清雅の二番目の異母兄。
 「兄弟なのに…なぜ…」
 「聖連さまも、蒼王も兄弟とは思っていない。当然、黒王さまも。そもそも、蒼剣が蒼王を選ぶなど、覇王家には屈辱なのだ。覇王家で生まれも育ちもしない男が、次期覇王?あり得ん。あってはならぬ。蒼剣は覇王家のものだ。元の場所へ帰るべきなのだ」
 見下した物言いに、拓海は唇をかみ締めた。
 自分たちは特別だと思っている覇王家の人間、蒼剣を手に入れ再び覇王家を復活させて四国を支配しようとする彼ら。そんな彼らに、唯為す術もなく捉えられている自分。
 「白王も黒王も間違っている。蒼剣は決してあなた達を認めない…!」
 「どうかな?蒼王が死ねば、蒼剣は主を再度選ばなければならない」
 クククと嗤いながら、男は拓海の額に触れた。