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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 厳しい視線を向けてくる男に、リョウ・オンは引き下がらなかった。
 「一度も稽古もしないで剣士気取りの貴方に言われたくないですね!」
 「そんなものする暇がなかったんでな」
 スッと向けられる剣に、リョウ・オンはゴクリと唾を呑んだ。
 練習用の剣ではなく、龍の細工が見事な剣。
 「あ、危ないじゃないですか!」
 「危ない?だろうな。こんなので一振りされたら間違いなく終わりだ。よかったな?星宿が自分の剣じゃなく、練習用で。じゃなかったら」
 「打撲は慣れてますから」
 「ふさけんじゃねぇっ!!」
 清雅の怒りは、ついに爆発した。
 リョウ・オンには、何故怒っているのか理解らなかった。
 「星宿は、間違いなくお前を斬ってたぜ。あいつが手を抜く事はない。事実、打撲だろうと相当堪えている筈だ。鍛えてなきゃ骨折もんだ。それは褒めてやるよ。だがな、その前にお前は信じてるんだよ。“未だ”は、ねぇんだよ!」
 「ひっ…」
 頭上すれすれで振り下ろされ止まった刀身に、リョウ・オンの顔からはもう自信は消えていた。
 「これが戦場だったら、お前は生きちゃいねぇ。寸止めしてくれるヤツなんていねぇからな。命の危険に絶えず置かれ、身を以て護るべきものを護る。お前に、命と引き替えにそれがあるのか?剣ができるからって図に乗るんじゃねぇ!戦場は、そんなに甘くねぇんだっ!!」
 ___そうだ。
 拓海は、知っている。
 四獣聖は剣士最高の存在だが、主の為に恒に戦いの先頭にいる。自ら盾となり、血と土埃の中、彼らは平和を願う人の為に剣を振るう。
 清雅は、僅か10歳にして否応なしに戦場にいた。敵は子供だろうと、剣をもった以上容赦はしない。戦わねば殺される、彼が育った戦場はそういう場所だった。
 剣が強くても、四獣聖にはなれない。強い精神力と命と引き替えに背負う使命の重さの覚悟がなければ。
 「…まさか…あなたは…」
 リョウ・オンが、漸く気付く。
 「云っておくが、俺は未だ蒼龍の座、手放す気はないぜ」
 怒気を鎮めた清雅は、龍王剣を腰の鞘に戻し、踵を返した。