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覇王伝__蒼剣の舞い1

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 白王・聖蓮の企みなど露知らず、蒼国は今のところは何事もなかった。
 一カ所を除いて。
 「リョウ・オン、凄いじゃないか。王城の衛士に全勝だなんて」
 「いいのかなぁ」
 いつしかリョウ・オンの見方になる見習い剣士も増えて、一躍人気者になったリョウ・オンである。
 広場で始まった三本勝負は、リョウ・オンの圧勝だった。
 「清雅さま、王城の戦力補強本気で考えた方がいいと思います」
 「後できっちり、平和ぼけを叩き直してやるよ」
 拓海は助言したものの、恐ろしい想像をしてこめかみを揉んだ。
 清雅の云う叩き直すと云う言葉は、その逆もなす事を。
 これまで何人、怪我人がいたか。戦力補強どころか、怪我人の山を築く清雅を見かねて、衛士の稽古は星宿になっていたのだ。
 それでも、衛士をはじめ衛士隊希望の見習いたちは主である蒼王の顔を知らない。
 どれだけ、外や王城内を歩こうが彼らの目に、清雅は王としても四獣聖・蒼龍としては映らず気づかず、星宿たちの友人と思っている。
 別に素性を隠したつもりはないのだが、彼らが勝手に判断し思いこんでしまった為に、清雅は放っておいたのだ。
 「___陛下」
 「瑠邑」
 すっと背後に立った男に、清雅は怪訝そうに振り返った。
 瑠邑は、清雅が蒼王となって間もなく宰相となった男だ。
 昔顔に酷い傷を負ったと、銀色の仮面で口から上を隠し、白銀の髪が更に覆い、その異様さに拓海は未だに慣れない。
 「先ほど、王都内で白い影を見かけたと報せが」
 「清雅さま」
 「どうやら、のんびりとしていられなくなったぜ」
 広場を見つめる清雅の目が、厳しくなった。