覇王伝__蒼剣の舞い1
黒抄・王城___、黒王・黒狼の苛立ちは募るばかりだ。
相手は弱小国・蒼国。その蒼国に未だ打撃も与えられずにいる。
覇王家嫡男の自分が。
自尊心の塊のような男は、玉座にてぎりっと歯ぎしりをしていた。
___気に入らぬ、何もかも…!
「随分と御機嫌がお悪いようですね」
何処かとなく、白い鳥がやってきて黒狼の前に舞い降りた。
「___フン、さすがよの。異能の血とやらは。鳥に化けて、吾が黒抄王城に難なく入ってこれるとは」
「本体は、ここにはありませんよ。御理解でしょう?この吾が、危険を自ら冒す男ではないと、義兄上。黒抄と白碧は一応対立している関係にあるんですから」
「何のようだ、聖蓮」
「蒼剣を手に入れる方法があります」
「なに…」
「清雅の首と同時に。ふふ…」
「聖蓮、どうしようというのだ?」
「吾の考えに間違いなければ、蒼剣は自ら現れます。お任せ頂けますか?義兄上」
「信じよ…と」
「吾は、義兄上を差し置いて四国は望みません。もう一度取り戻すのです。四国を覇王家が。その長である貴方が」
「…吾は、よい義弟を持ったな」
黒狼が満足げに笑むその一方で、鳥の目を通し聖蓮は冷たい眼差しを向けていた。
___単純な男だ。
聖蓮が、何をしようとしているのか黒狼には理解らない。
側近の闇己や義勝が、信用するのは危険と云うが黒狼は軽くあしらう程度だ。この事が後に重大な事になるとは知る由もなく。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い1 作家名:斑鳩青藍